有限会社DIUD 物の怪退治をする会社でアルバイトをする事になりました!

川村直樹

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餓鬼退治 ④

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 全ての餓鬼を退治し終わると、正人は鬼神化を解いた。隼人に近づいて来る正人は見慣れた姿、人の姿に戻っていた。しかし、サングラスをしていない彼の眼は、赤いままだ。彼が上着を羽織ると、隼人の手から拳銃を取り上げ自分の胸元のガンホルダーに収めた。サングラスをかけると、尻もちを付いたまま座り込む隼人に手を差し出す。
「後は、駅職員が片付けてくれる。さあ、終わったぞ、帰ろうか」
「はい・・・」と、短い言葉だが、やっと声が出た。
 餓鬼と戦う鬼神化した正人の姿は壮絶だったが、今は人間だ。

 帰りの車内、日が昇って来たのか空は明るんでいた。正人には悪いが、隼人には彼にかける言葉が見つからない。安易な気持ちで核心に触れたく無かったからだ。
黙って車窓を眺める隼人。運転する正人の口が開く。
「隼人君、今日は、驚かせてしまったね。君とこれから仕事をしていくためにも、俺の事を話ておいた方が良い、聞いてくれないか」
 正人の言葉に戸惑いながら、隼人は黙ったまま運転する正人を見る。
「俺は、鬼の血を継ぐものだ。だから鬼神化して人外な力を出せる。鬼神化すると見た目は変化するが、俺の性格や内面も一緒に変化する訳じゃない。今の俺も君が見た鬼の姿の俺も全て俺自身だ」
「さすがにビックリしましたけど、正人さんは怖い人じゃないですよ」
「そう言ってくれると、嬉しいね」
「意外と、話し好きなんですか?」
 正人は笑みを浮かべ、「そうだよ。でもこんな見た目だろ、昔から俺は人から遠ざけられた。好き好んで赤い目の俺に近づいて来る人も少なかったしな」
 心の優しい鬼は、人を守る仕事をする。しかし、人は見た目で判断してしまうので、誤解が生じてしまう。
「正人さん、僕は見た目で人を判断したくないです。それぞれ個性があるし、僕の知らない事を知っている、色んな種類の友人が居た方が絶対に楽しいですよ」
「君の意見に賛成だよ。世界は広いしな、俺も視野は広く持ちたい」

 他人の内面は見えないが、もし、ちゃんとコミュニケーションを取れば、多くの人と分かり合えるのかもしれない。でも、ほとんどの人は初頭効果で好きか嫌いかを無意識に初見で決めてしまう。誰もがステレオタイプに支配され易い、隼人はそんなちっぽけな人間にはなりたくないものだと思った。
 隼人の納得した顔に正人は、彼ならこの仕事を正しく理解し続けられると感じた。
「仕事も上手くいったし、帰ってひと眠りしたら君の歓迎会だな」
「本当ですか!」
「これから、楽しくやって行こうな。相棒よ」
 隼人は、これから仕事を通して見たことも聞いた事も無い存在を相手にするのは、正直不安だったし続けて行く自信も無かった。しかし、せっかく雇ってもらったのだからこれも何かの縁だろうと、正人達との出会いを喜ぶことにした。
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