有限会社DIUD 物の怪退治をする会社でアルバイトをする事になりました!

川村直樹

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餓鬼退治 ②

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 黒色のボックスカーの助手席に隼人は座る。窓から街の光を眺めていると、車は高速道路に入って行く。
「隼人君、今日の仕事の内容だが」
「はい、どんな仕事ですか?」
「餓鬼退治だよ。怖くても、決して一人で逃げ出さないでくれ。俺から離れると、安全の保障は出来ないからね」
 隼人は目を見開き、口が半開きになる。何を聞いて良いのか分からず、言葉を失った。餓鬼なんて見たこと無い、そんなに怖いものなのだろうか。
「僕は、何をすれば良いのですか?」
「荷物を持って、俺の後について来てくれれば良いよ」
 仕事内容は正人のサポートだと聞いているが、本当に大丈夫だろうか。それに餓鬼をどうやって退治するのか、隼人には見当もつかない。
「どこで、餓鬼が出たのですか?」
「今朝、地下鉄で飛び込み自殺があってね。自殺したはずの女性の遺体が消えたんだよ」
 不可解な内容に隼人は眉をひそめる、「消える?遺体が無くなった」
「列車や線路に自殺した女性の血痕は残っていたらしいから、状況からすると潜んでいた餓鬼が目覚めて遺体を持ち去ったのかな」
「自殺で餓鬼が出てくるのですか?」
「自殺以外でも良くあるよ。血の匂いに導かれてやって来るから」
「獣みたいですね」

 二人が現場に着くと、22時前だった。
 地下鉄の構内に入るのかな、まだ、電車は動いているけどと隼人が考えていると、正人は、胸ポケットから出した手帳を改札で駅員に見せる。暫くすると地下通路の奥から、駅長が彼らに駆け寄ってきた。
「ご苦労様です。今回もいつも通りの手筈てはずでお願いします」
「分かりました、山下部長。時間になったら戻ってきます」
「正人さん、仕事を始めないのですか?」
「電車が止まるまで、待機する。飯でも食いに行くか」
「了解です。深夜作業になりますね」
「そうだな、帰りは朝になるかな」
「なら、深夜手当は出ますか?」、正人さんの表情が変わったように見えたので、隼人は怒らせてしまったと案じた。
「深夜手当ね」
「厚かましかったですか?」
「いや、良いんだよ。思っていた以上に君がしっかりしていたので感心したんだよ」

 深夜0時20分、最終電車が発車した。
 誰も居ない駅構内、普段の雑踏の中とは異なり、隼人が準備のためバッグをあさる音しかしない。
「良いか、絶対に離れるなよ」と、正人が黒い手袋をはめた。
「もちろんです、でも、このライトは全て身に付けないと駄目ですか?」
 隼人はバッグから出てきた無数のライト、頭、腕、太ももに巻き付け、背中にバッテリーを背負い簡易の投光器を手に持つ。
「電気が全て落ちるから、もう直ぐここは暗闇に包まれる」
「電気を全て切ってしまうんですか?」
「当たり前だろ、線路に降りるんだぞ。感電死したいのか?」
「感電死は、遠慮しておきます」
「もう直ぐ、電気が切れるから、準備しろ」
「了解です」
 ブーン! 独特な音が地下構内に響く。全ての電気が消えると、隼人は身に着ける全てのライトと手に持つ投光器の電源を入れた。
 照らされた光の中で、正人が腹を抱えて大喜びしている姿が映し出された。
「何か、おかしなとこ、ありましたか?」
「何、言っているんだよ。隼人君、君の姿は爆笑ものだよ」
 これから、初めて餓鬼退治をするのに緊張感がなくなるよなと、隼人は不機嫌な感情を隠さない。
「笑わないでくださいよ」
「悪かったな、行こうか」
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