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アルバイト ①
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翌日、隣で起こった怪現象の事をすっかり忘れていた隼人は、スマホから得たアルバイト情報を手に考え、いや、妄想していた。
仕事内容、時給、通勤距離、そして、一緒に働く女の子を妄想しながら自分との相性診断をする。だが、彼が思い描くようなバイトに出会えない。
「そうだ!」、誰も居ない部屋で思わず声が出てしまった。
隼人の考えは、複数のアパートやビルを持ち居酒屋を運営する大家の源さんに相談する事だった。居酒屋は、可愛いアルバイトの女子学生が多いと噂で聞く。自分の事情をしっかりと説明すれば、状況を理解した上で、良いアルバイトを紹介してもらえるかも知れない。学生で時間制限はあるが、1か月の生活費を稼ぐためには仕事を選らぶ余裕は無い。これで問題の半分以上は解決したと、彼は決めつけた。
しかし、自分の都合の良い進展を期待していた隼人に現実は、そんなに甘くは無かった。意気揚々にアパートを出た彼だったが・・・・・
「すまんな、小坂君。今、私の所で君に紹介できるアルバイトは無いよ」
「そうですか、そうですよね。そんな都合よく、行きませんよね」
「おっと、忘れる所だった、これを渡すように正人君から頼まれていたんだ」
手渡されたメモには、社名と住所が書かれている。
有限会社DIUD
京都市上京区下小川・・・。
「これは?」
「君が、私の所を尋ねてきたら、これを渡すように言われていてね」
「なんだろう?仕事でも紹介してもらえるのでしょうか?」
「分からんが、行ってみる価値はあると、私は思うよ」
「そうですか、今から尋ねてみます。有り難うございました」
住所から考えると、隼人のアパートから自転車で行ける距離だ。仕事の内容も分からないまま何の疑問も抱かず、とりあえず行って見ようと彼は愛車の自転車にまたがり、京都の町を颯爽と駆け抜ける。最近観光客でバスは常に混雑しているから、京都で生活するなら自転車は必需品だ。
自転車にまたがったまま隼人は、ビルを見上げていた。
ビルに掲げられた看板には、『有限会社DIUD』と書かれており、どこか昭和の雰囲気を漂わせる。
住所の場所は、ここだよな?
しかし、ボロいビルだな。
4階建て、築何年だよ。今にも崩れるんじゃないか?
薄汚れた表面のコンクリートの色、長年蓄積されたチリで黒ずんでいる。
入り口は狭いし、あの急な階段は昇り難そうだし。
建物のを見上げながらあれこれ考えていると、隼人に迷いが生じる。勢いでここまで来たが、住所の場所は怪しげな雰囲気のビルの中。意を決っする前にしり込みしてしまう。
4階の有限会社DIUDとステッカーが貼られたドアの向こうでは、サングラスをかけたスーツ姿の鬼塚正人と猫の姿をした猫又の長老と事務員の山本茜の二人と一匹が話をしていた。
「長老の言う通り、彼は来ますかね?」
「必ず、ここに来る。そのために源に言付けを頼んだんじゃろ」
「そうですが、長老が見たその青年は、本当に使えますか?」
「お前は、見ていないからな。あいつは、使えるぞ」
「本当ですかね?」
「儂の勘が信じられないか!平八郎もそうじゃった、忠告してやったのにアイツは、儂の勘を無視して行動したから失敗したのじゃ!」
「何ですか?平八郎って?」と、茜が長老に質問した。
「大塩平八郎だ!天保8年の話じゃ。知らんのか?」
「知りませんよ、生まれていませんし」
「龍馬もそうじゃった、暗殺の気配があるからと、わざわざ近江屋まで行って伝えたのに。逃げもせず、儂の言う事に耳を傾けなかった」
「分かりましたよ、長老の勘を信じます」
「正人、分かれば良いんじゃ。そろそろ、来るから。茜、お茶の準備を」
「分かりました、長老」と、茜は自分のデスクから立ち上がり、給湯室に向かった。
仕事内容、時給、通勤距離、そして、一緒に働く女の子を妄想しながら自分との相性診断をする。だが、彼が思い描くようなバイトに出会えない。
「そうだ!」、誰も居ない部屋で思わず声が出てしまった。
隼人の考えは、複数のアパートやビルを持ち居酒屋を運営する大家の源さんに相談する事だった。居酒屋は、可愛いアルバイトの女子学生が多いと噂で聞く。自分の事情をしっかりと説明すれば、状況を理解した上で、良いアルバイトを紹介してもらえるかも知れない。学生で時間制限はあるが、1か月の生活費を稼ぐためには仕事を選らぶ余裕は無い。これで問題の半分以上は解決したと、彼は決めつけた。
しかし、自分の都合の良い進展を期待していた隼人に現実は、そんなに甘くは無かった。意気揚々にアパートを出た彼だったが・・・・・
「すまんな、小坂君。今、私の所で君に紹介できるアルバイトは無いよ」
「そうですか、そうですよね。そんな都合よく、行きませんよね」
「おっと、忘れる所だった、これを渡すように正人君から頼まれていたんだ」
手渡されたメモには、社名と住所が書かれている。
有限会社DIUD
京都市上京区下小川・・・。
「これは?」
「君が、私の所を尋ねてきたら、これを渡すように言われていてね」
「なんだろう?仕事でも紹介してもらえるのでしょうか?」
「分からんが、行ってみる価値はあると、私は思うよ」
「そうですか、今から尋ねてみます。有り難うございました」
住所から考えると、隼人のアパートから自転車で行ける距離だ。仕事の内容も分からないまま何の疑問も抱かず、とりあえず行って見ようと彼は愛車の自転車にまたがり、京都の町を颯爽と駆け抜ける。最近観光客でバスは常に混雑しているから、京都で生活するなら自転車は必需品だ。
自転車にまたがったまま隼人は、ビルを見上げていた。
ビルに掲げられた看板には、『有限会社DIUD』と書かれており、どこか昭和の雰囲気を漂わせる。
住所の場所は、ここだよな?
しかし、ボロいビルだな。
4階建て、築何年だよ。今にも崩れるんじゃないか?
薄汚れた表面のコンクリートの色、長年蓄積されたチリで黒ずんでいる。
入り口は狭いし、あの急な階段は昇り難そうだし。
建物のを見上げながらあれこれ考えていると、隼人に迷いが生じる。勢いでここまで来たが、住所の場所は怪しげな雰囲気のビルの中。意を決っする前にしり込みしてしまう。
4階の有限会社DIUDとステッカーが貼られたドアの向こうでは、サングラスをかけたスーツ姿の鬼塚正人と猫の姿をした猫又の長老と事務員の山本茜の二人と一匹が話をしていた。
「長老の言う通り、彼は来ますかね?」
「必ず、ここに来る。そのために源に言付けを頼んだんじゃろ」
「そうですが、長老が見たその青年は、本当に使えますか?」
「お前は、見ていないからな。あいつは、使えるぞ」
「本当ですかね?」
「儂の勘が信じられないか!平八郎もそうじゃった、忠告してやったのにアイツは、儂の勘を無視して行動したから失敗したのじゃ!」
「何ですか?平八郎って?」と、茜が長老に質問した。
「大塩平八郎だ!天保8年の話じゃ。知らんのか?」
「知りませんよ、生まれていませんし」
「龍馬もそうじゃった、暗殺の気配があるからと、わざわざ近江屋まで行って伝えたのに。逃げもせず、儂の言う事に耳を傾けなかった」
「分かりましたよ、長老の勘を信じます」
「正人、分かれば良いんじゃ。そろそろ、来るから。茜、お茶の準備を」
「分かりました、長老」と、茜は自分のデスクから立ち上がり、給湯室に向かった。
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