オークとなった俺はスローライフを送りたい

モト

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ケガをした俺は、血がなくなり魔力がなくなり~……‥‥なんと一夜明けると美少年に変化していました!!!


‥‥なーんてな。



そんなこともなく、寝ても覚めてもオークのまま元気に過ごしています!
どうも、ポークです☆

簡単に説明するとだな。
あの時、モンスター達が魔力を使って俺を蔦で隠してくれてグーグー寝てた。
でも、起きたらさ、他の動物なりモンスターが冒険者にやられていた。これはもう出なくちゃなっと思って、冒険者の前に出たの。
そしたら、動物とモンスター共がズザザッと俺の前に盾のように前に出ちゃうから驚いたよ。
俺より弱い奴らを盾になんか出来る訳がないだろう。


俺は、皆を静めて冒険者の前に出た。
そして…‥‥………捕まった。


俺は、どこかの城の地下牢に捕まっている。
どこかっていうのは、俺は山育ちだから、どこの国のとか知らないから、どこかの…‥だ。
オークの俺が住んでも十分な広さという訳ではないけれど、十分足を伸ばして寝られるし、スクワットや腕立てなんかも出来る程のスペースはある。


「おはよう。主人、今日も元気そうで何よりだよ。」
一人の人間が俺に挨拶をした。

「おう!犬!今は朝か!?太陽見えなかったから分からなかったよ!」


声の主は山で会っていた角の生えた犬だ。
犬は、何と人間に変化出来る力があったのだ。
しかも、なかなかのイケメンだ。褐色の肌に黒い髪の毛、一見チャラそうにも見えるが笑うと目尻が下がって好印象になる。

コイツは、毎日健気に看守に扮して会いに来てくれる。
俺が冒険者達に捕まった時に俺の後をつけてきたのだった。



俺にも人間になれる力が備わっていないか、もしくは訓練でなんとかならないかと頑張っている最中だが、なんとかなった試しがない!!!
そんなわけで、今日も元気なオークという事だっ!


俺がいる牢屋には、犬(人間に化けた)や、鳥や小さいモンスターが会いに来てくれるから別に寂しくなかった。ずっとこんな牢屋の中で過ごせるのは、こいつらのおかげだ。

犬曰く、この牢屋は特別な石で加工された牢屋で魔力探知が出来ないようになっているそうだ。
どうして厳重な場所に投獄されているの?と犬が疑問を感じていたが、俺も想像上でしか言えないから黙っておいた。


「太陽に当たらないと鬱っぽくなるけど、主人は毎日本当に元気だな。」

ん?まぁな。考えていても仕方ないからな。


「犬がこうして毎日看守に化けてきてくれるから嬉しいよ。」
そういうと、犬は人間の姿で「きゃふきゃふ。」と鳴いた。うん。それは犬の姿でやってくれ。イケメンの兄ちゃんにやられても嬉しくないぞ。というか、キモい。




「主人、本当の看守とも仲良くやっているだろ?ここ、皆言ってるもん。ここにずっと住んでもいいって。」

んな。わけあるかよ。オークと一緒だぜ!?まぁ、確かに看守ともこの2年……分からん。2年ちょっと?3年?くらいたったかな。の間にどんどん仲良くなったけども。


「俺は、主人にまた山に帰ってほしいな。」

犬(人間)が俺に朝食を出した。ごついハムやジャムのついたパンが入っている。きっと、コイツなりにいいご飯をと気を使ってくれているんだな。
しかも、犬は甲斐甲斐しく雑誌や楽器など時間の暇つぶし道具も進んで持ってきてくれた。感謝しかない。犬という生き物は本当に健気な生き物だなぁ。


「んー。何度も言ってるけど、山に帰るのは無理だ。」

「なんで?こんな牢屋、すぐにぶち壊してあげるよ。」

犬(人間)がフンっと腕まくりをした。

おいおい。物騒な事言うなよ。それに、犬(人間)にそんな腕力があるとは思えない。



「……俺が帰ったら、なんか逆に危なくなる気がする。山もそしてスミも。」
あの冒険者は初めから、スミを探していた。オークが捕えたスミを。

俺があの山へ戻ったら追手も一緒についてくる。その分、スミに危険が及ぶだろう。
俺がここにいれば、スミはのびのびと過ごしていける。賢い子だ。追手にも見つからないだろう。
山を下りればきっと他に好きな子を見つけて俺の事なんか今頃忘れている。




そーんなわけで、今日も狭い牢屋で寝て、犬(人間)とトランプして、ご飯食べて、小さい動物と遊んで、トレーニングして、本物の看守が持ってきたお酒を交わして愚痴を聞いて、それから、麻雀して一日が過ぎた。

そんな生活を俺は楽しく過ごしていた。

いつ夜なのか朝なのか分からないので、自分の寝たい時に寝ている。俺が寝ている横で、看守たちが魔族の話をしていた。

俺は目をつぶりながら看守たちの話を聞いた。
新しく魔王が誕生したそうだ。

……魔王?

俺は、山暮らしでオークの群れとも生活していないから、そういった情報は犬に聞くくらいしか入手できないのだが、この世界は魔王が長年不在だった。
そうか。誕生したのか。だけど、だから何だというのだろう。
人間は、ホントに噂が好きだなぁ。
そう思って、また眠りについた。


ん?

んー?暑い。なんだこれ。熱帯夜にしては暑すぎないか。

「くそぉ。暑い。」

暑すぎて眠れんだろう。なんだこれ?

蒸し焼きにされそうな暑さだ。




俺は、薄目を開けた。





ボー………。

燃えてる。


「燃えてんじゃぁねぇか!!!!」
めっちゃ、牢屋燃えてんじゃん。


デジャブ。

……仕方ねぇ。逃げよう。

よっと牢屋の柵に力を込めた。

ぐにょっと。


牢屋の柵は力を籠めるとすぐに曲がった。

えー…?モンスターにこの程度の硬化魔力の牢屋で何とかなると思ったの!?
オークも随分甘く見られたもんだな。


魔力封じの石ばかりで出来た牢屋だが、所々石炭のように黒い箇所がある。それが火が燃え移った原因か!?
通路が狭くて焼きオークになってしまう。俺、筋肉ばかりのオークだからきっと食べても美味しくない。
なんて冗談を思ったいる暇でもないっ!
俺はそのまま突っ切った。暑い。焼かれるのは嫌だ。


迷路のような地下牢を何とか出ると、城内も燃えている。
ぐるりを城内を見渡した。

「なんだ!?コレ。」

戦争か何か始まっているのか!?いや…考えた所で分からないだろう。ここは速やかに脱出だ。
しかし、城内が燃えている………。

とりあえず、火、消すか。



俺は、肺に空気を入れて空気の圧で火を消していく。
丁度、身体を隠すのに丁度いいローブがあったから被ってみた。


人間達は皆、外に出たのか?
キョロキョロと逃げ遅れた人間がいないか探していると、城の中心部に皆集まっていた。

「…あれは?」

人間達を囲うように魔族が立っている。

魔族!?なんで!?俺、初めて魔族見た。

大きな羽が背中に生えている人型タイプ。
魔族一人一人が物凄いの力を持っている。
もしかして、新しい魔王が人間と応戦したいタイプの奴なんだろうか。

俺は捕らえられている人間達を見た。逃がすならどうすればよいのか。
勇者っぽい恰好した奴も捕まっている。
あと、アイツらだ。何年か前に俺を捕まえた冒険者たち。アイツらにはいいイメージはない。
でも、俺元人間だし。人間を見捨てることはやっぱり夢見が悪い。


オークの武器!力!

よし。

フンッと鼻息を吐いて、高い壁に高速張り手を打ち付けた。

どどどっどどどっ!!!!




人間も魔族も俺に気が付いた。でも、遅い!先に張り手を打ち込んだ壁が倒れた。




その隙に、イノシシのごとく超突進して、魔族達に張り手を打っていく!!

不意打ちに魔族が飛び上がった。




「オ、オーク!?」

魔族達は驚いた。

なんで、オークが人間の味方するのかって!?元人間だからだよっ!

一番強そうな魔族に張り手を打とうとしたところ、ビッと身体が動かなくなった。


「ぐっ!ぎ・ぎ・ぎ・ぎ・ぎっ!」


この羽の生えた魔族強い。指一本の魔力で俺の身体を封じ込めた。
力を込めて動かそうとしているのに手が動かせない。それでも、どうにか動かそうともがいていると、目の前の強い魔族が笑った。

「凄い。私の魔力を力で壊そうとしている。ただのオークじゃないな。進化系か?」


強い。レベルが違い過ぎる。
すると、他の魔族が俺を見た。


「キャタ様。魔王が探しているのは、このオークではないかと。」

キャタと呼ばれた強い魔族は、ふむっと頷いた。

すると、すぅっと俺を押さえていた魔力を解いた。

はぁ、はぁ。

「おい。人間を放してやれよ。」

何故、魔力を解除されたのか分からないが、このキャタという魔族は知性がある。凶暴性はあまり感じられない。




「嫌だ。この人間達は、何も関係のない無力な魔物や魔族の殺戮を繰り返した。目に余る行為だ。許すことはできない。」

俺は、すぐ後ろで下を向いている冒険者たちを見た。
こいつら、あの山みたいな殺戮を外でも?

あの行為が続いていたというのなら恨みもあるだろう。益々人間を逃がす事が難しくなるな。

どうしようかと汗が伝う。




キャタも俺の様子を見て何事か考えている様子だ。

「だが、オークに免じて、ここは去ってやろう。我が主、魔王様の探していた方に違いないっ!」

魔王?俺は、魔王とは会った事ないぞ。

「それは違う。オーク違いだ。俺はずっと牢屋暮らしだったし。」

すると、魔族たちがざわざわっと騒いだ。キャタが人間をぎろりと冷めた目で睨んだ。

「やはり。この人間達は殺すべきだな。魔王様の探していた方を牢屋に閉じ込めていたなんて。そのように全身焼かれてしまって。」




やけどは、お前らが火をつけるからだろう。

「ちゃんと聞けよ。だから俺じゃないって!あと弱い人間を抑えようとするな。」




俺は人間の前に両手を広げた。




キャタは、その様子にふむと頷いた。よく見ると、ビジュアルバンド系の整った顔をしている。

唇、紫なのはリップクリームか?それとも自然体な色味なのだろうか。

その間、キャタは周りの魔族と何か話し合っていて、何か決めていた。




「いいだろう。オークに免じてこの場は許してやる。オーク、お前には後日使者送らせよう。」

キャタが下手くそな愛想笑いをこちらに向けた。

「いや、俺じゃねぇよ!?」




魔族たちは俺の話を聞かず去っていった。




魔族が去った後、しんっと静まり返った中、冒険者がボソッと話した。


「え?」

あ、コイツ、あの時の冒険者だ。あんまり強くない奴。今日はあの気配なく透明になれる強い冒険者は一緒じゃなかったのか……。

「お前のせいだっ!この疫病神!!あの時、素直に白状していたら、こんな事にはならなかった!!!」

いきなり罵声を浴びせられて驚く。

へ?

「予言の書にも書いてあった!それをコイツがっ!!!」

「そうよっ!このクソ豚!」

「お前のせいだ!!!」

人間達が訳の分からない事で、俺に石をぶつけてきた。なんで、そんな風に異常な敵意を持つんだ!?

あ、やめろ。石投げつけるなっ!痛くはないが……心が痛いだろ。




「次、魔族がやってきたとき、このオークを人質にするんだっ!」




一人がそういうと、大勢が俺に刃を向けた。







その時、看守と目があった。看守は何か言いかけた。よせよ。

看守が何か言いかける前に、俺は、ダッシュで走った。







何が何だか何も分からなかったけど、長い牢屋生活は終わった。




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