オークとなった俺はスローライフを送りたい

モト

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そうして、子供と俺との生活が始まった。


拠点を決めたし、早速家づくりだ。


ドンッドンッ

木を斧で切り倒す。家を建てる為には数十本の木が必要だ。

あっという間に木を切り倒していく俺をみて、子供がパチパチと手を叩いた。

「なんか、ギャラリーいると、やる気になるなぁ。」

木の皮を素手でグワーッと剥いていく。


やる気となった俺の実力は凄いぜ?

切り倒し木をさらに小さくカットしていって、あとはしっかり組み立てる。一日で家を建てちゃうこのスペック。

俺って人間だった時、大工だったのかもしれない。全然覚えていないけど。


「凄いです……!!」


木くずを掃除していた子供が、家を見てふぁあっと歓声をあげた。目をキラキラさせて俺を見る。

「イージーだぜ!明日は、お前のベッド作ってやるからな。」


ぽんぽんと頭を優しくたたくと、真っ赤になった。


「あの、あの、俺は、地面に干し草を敷けば寝れますので。」


あ、遠慮してんのか?


「気にする必要ないぞぉ!」


イージーイージー!ははは。


俺が笑ったら、子供は下を向いてしまった。

ん?俺の笑った顔、まだ怖いのかな?気を付けないとな……。



子供は、俺が昼寝している間、干し草や木の実やキノコなど色々採ってきてくれた。

「おぉ、ありがとう。自分でやれることを探したのか!えらいなぁ!」


がっしがしと撫ぜた。


自分の意志はあまりない子だけど、何かしようと動ける子だな。

そうすると、今度は、子供が胸を押さえて下を向いだ。

怖がらせたかな?痛くないように加減したんだけどなぁ。


子供は、とても俺に気を使っている様子だ。オークにそんなに気を使う必要ないのにな。この顔のせいで脅されているように感じるのだろうか???


その日の夜。作りたての家で干し草を敷いて横になった。


明日は、何を作ろうかと考えたのまでは覚えている。でも睡眠欲が凄すぎて、すぐに眠りについた。


くあーくあーっと寝ていると、

叫び声が聞こえた。


思わず、俺のいびきかと思った……。


「うぅ、あっ!あっあああ…!」


子供がうなされていた。

うう。うう。と額に汗をかいている。

嫌な夢を見ているのだろう。火事になったことか。それとも別の事だろうか。


「かわいそうになぁ。」


こんな小さい子が、怖い目に合うなんて。

子供の背中を起こさないように優しく撫ぜた。

「よく眠れますように。」


すると、なんでか、俺がよく眠れてしまった。クア――……。




「あっ……え!?え!?どうして、こんな所でお休みに!?」


次の日の朝、子供の驚いた声で起きた。


「……あぁ?」


俺は薄目を開けて、ボーっと寝ぼけた頭で子供を見た。そういえば、子供がうなされていて添い寝したんだっけ。

あー、うん。これは悪い事した。朝起きたら、オークが横で寝ていました☆恐怖映画か。


「ごめんごめん。驚かせたな。」


俺が、子供の添い寝してやったら、うなされていたのが嘘みたいに止んだんだんだ。そのまま寝るつもりはなかった。すまん。

「い…いえ、オーク様でしたら。」

子供が照れながら何か言いよどむ。

ん?ちょっと待て。


「オーク様って何?様いらなくね?オークだもん。」


オークだもん。雑魚キャラよ?様なんて柄じゃないでしょう。勇者にバッサーって切りつけられちゃうキャラよ?!


そういえば、俺は、子供の名前すら聞いてねぇ


「子供の名前聞いてなかったな!なんて名なの?」


ずっと、子供呼びしていたな。

子供は、小さく自分の名を スミ だと名乗った。


「スミね!スミ!スミ!うん。スミだな。」

俺は、スミスミとアホの子のように読んだ。

もう、忘れねぇ。

「スミ……青色の澄んだ目をしているからか。澄。キレイな名前だな。」


「……キレイな?」


そうだろ?


俺は、スミの前髪をサッと寄せる。

「このキレイな目と同じでいい名前だな。」

「……あ、あぅぅ。」


スミは、また、下を向いて胸をぎゅうっと掴んだ。

どうした?心臓痛いのか?大丈夫か?と声をかけようとしたとき、真っ赤な顔してスミが顔を上げた。


「オーク様のお名前は?」


あ、様要らねぇってば。聞いてないなぁ。


「名前?」

名前。俺の名は……。


ない!


呼ぶ奴もいなかったしなぁ。


「オーク同士じゃ、お前とかって言い合っていたな。筋肉のお前とかイケメンのお前とか?……あぁ、こんな豚顔だけど、俺、オークの中ではイケメンだったのよ。」

人間じゃ、最下位だけどな―…。ははは。

「いえ、オーク様はこの世の言葉では言い表せない程、素敵だと思います。」


「あんれま……。」

結構持ち上げんのね。

あれ?この世の言葉で表せないって誉め言葉なのだろうか…?


「でも、オーク様はいかんな。ちゃんと名前を考えよう。んー。オークって豚顔だから、豚?それはダメか。ポーク?だめだー。ネーミングセンスねぇ。」


考えていたら眠いし。

何も考えらんねぇよぉ。


「……もう、ポークでいいかぁ。」


そういうと、隣でスミがクスクス笑う。

はは。オークがポークっておかしいか。

初めて笑ってくれた。笑ってくれて嬉しい。


もう、ポークでいいな。


「では、ポー様とお呼びします。」

だから、様はいらねぇんだって。

いくらそういっても、スミは様を付けたし、敬語を崩さなかった。




スミは、その夜もうなされていたから、俺は添い寝してやった。

俺が添い寝をするとよく眠れるそうだ。よかった。


でも、俺的には、ずっと添い寝するつもりはなかったんだ。


「ポー様と眠らないと、よく眠れないのです……。」


なんでか、スミは添い寝を気に入り、ずっと続くことになった。




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