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フォーエバーラブ
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花言葉の意味を知って、項垂れた。
自分で言うのもあれだが、俺は平々凡々の見た目と中身だ。
例えば、見た目が普通でも、向上心が高くキラッと光る仕事ぶりをする人間ならば社長に選ばれる理由も分かる。
だけど、俺は、お菓子が好きなだけで出世欲もない人間だ。見た目も中身も普通の男を、社長が気に入る理由が分からない。
柏木さんがバラを早速花瓶に生けてデスクに飾っている。
「……柏木さんって面食いっすよね? それで、ロックバンドの元彼にフラれた」
以前、彼女に飲みに付き合わされた時に泣きながら言っていた。
「何よ、急に。もう、過去のことよ」
「そうっすね。そんな男は忘れた方がいいっす。……それで、元彼は初めだけキザで甘いことを言ってきたんすよね? で、すぐに飽きられたと」
「あら~、ケンカ売ってんのかしら? 傷口抉って来るじゃない」
柏木さんは、美形が大好きだ。恋人はすぐに出来るが長続きしないのは、男を見る目がないせいだと俺は思っている。
彼女に近づく人間は、初めは甘い言葉ばかりを言ってくるが、すぐに飽きるタイプ。
熱しやすく、冷めやすい。
きっと、社長もそうだ。昨日の今日で、この告白だ。典型的な熱しやすく冷めやすいタイプだろう。
「友達の話ですが、そういうタイプの人に迫られたら、どうやって断ったらいいと思いますか?」
そういうと、面倒見はいい柏木さんが、「うーん」と考え始めてくれる。しかし、答えが出ないようで、完全に相談する相手を間違えた。
「放っておくのが一番じゃない?」
それを横で聞いていた小嶋さんが、ニコっと笑って言った。
「そういうタイプは、熱が冷めるまで放置よ。変に油を注がない!」
「おぉ……なるほど。正論な気がします」
小嶋さんの言う通りだ。
俺の相手は会社の社長なんだ。変に油を注がず、熱した熱が冷めるまで待つのがベストだろう。
◇
「う~~~ん」
そして、会社から帰宅して風呂入ってビールを飲んでいる今。
俺は凄く悩まされていた。
俺のSNSのアカウントに新たにフォロワーが一名増えていたのだ。
『田中清一郎』
そのアカウントのアイコンは、“カロッソ”の人気商品のチョコ画像だった。
金持ちアカウントあるあるで、いい車や高級寿司などの画像を載せている人がいるけど怪しさと自慢しか感じない。
だが、この『田中清一郎』のアイコンとくればどうだろう。380円とスーパーで売られているチョコにしては高めの設定ではあるが、高級と言われるほどでもなく、手に取りやすい。
この画像をアイコンに使うことによって、そんなに気取っていない、かつ親しみやすさを感じるアカウントになっているのではないだろうか。
まだ、『田中清一郎』のアカウントページを見ていなかったが、恐る恐るそのアカウントページを覗いた。
『田中清一郎』今日、始めたばかりのアカウントのようだ。
フォローは、……俺、一人。
フォロワーは32人。
田中なんて名字は全国ゴロゴロいるし、清一郎と言う名も珍しくない。過去、そういう名の同級生もいた。
だが、もう俺は、この『田中清一郎』は社長だと確信している。これで、赤いフェラーリの写真をアイコンにするような人なら、もっと上手く躱すことが出来そうなのに。
社長は、本日二度呟いていた。
『誰か分からない名前で盗み見るような真似は誠意がなかった。愚かな僕を許して欲しい』
『どんな魔法を使ったんだ。胸が苦しい』
「…………ふぅ」
SNSから寒気がする。
…………これだけで判断してはアレだが、社長は“君はハート泥棒”だったのではないだろうか。文体と内容がそっくりだ。
一生問いただすことはないし、社長が“ハート泥棒”でも別にどうでもいい。
問題は、この『田中清一郎』をフォローするか、スルーするか、あるいは俺がSNS自体を辞めるかだ。
ブロックすることや、相手から見えない鍵垢にすることも考えた。だけど、スルーするのが一番だと思う。気づかなかったという方法だ。その次はアカウントを消去しSNS自体を辞める。
ちなみに俺のSNS名は、ヤマカワだ。
山川という名字も全国には多く、俺だと特定するものにはならない。アイコン画像は小学生の頃から持っている剣を模ったキーホルダーだ。
どうやって俺を特定したのか今は置いておこう。とにかく、このフォロワーをどう対処するかだ。
すると、社長が新たに呟いた。
『僕は君というマウンテンに遭難してしまったようだ』
「いや! だから、何それ!? 意味が分かんねぇよっ! 俺の名字が山川だから!? ————って、ひぃ……っ」
思わず、スマホを持ってツッコミを入れてしまったら、指が、イイネ♡をタップしてしまった。
ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお…………。
イイネ♡とは、消しても相手には通知がいく。何故、スライドさせる右手の親指の位置にイイネ♡ボタンがあるんだ!?
この時点で一番安全な『スルーをする』という方法はなくなってしまった。
残りの二択だが、イイネをした後すぐにアカウントを消せば不自然だろう。社長は逃げれば追いかけてくるハンタータイプかもしれない。残るは……
「仕方ない……。俺は、この田中清一郎をフォローする」
フォローはするが、これから俺はSNSで呟くことはしない。浮上しない。もし、このアカウントに関わってきても浮上しなければいいのだ。
何故か田中清一郎のフォロワーが今の間で2名増えている。それに乗じて俺もサッとフォローをした。そのまま、SNSを閉じようとした時、彼が呟いた。
『フォーエバーラブ』
ひぃい!? いや! 頼むからフォーエバーはやめてくれ!!!
自分で言うのもあれだが、俺は平々凡々の見た目と中身だ。
例えば、見た目が普通でも、向上心が高くキラッと光る仕事ぶりをする人間ならば社長に選ばれる理由も分かる。
だけど、俺は、お菓子が好きなだけで出世欲もない人間だ。見た目も中身も普通の男を、社長が気に入る理由が分からない。
柏木さんがバラを早速花瓶に生けてデスクに飾っている。
「……柏木さんって面食いっすよね? それで、ロックバンドの元彼にフラれた」
以前、彼女に飲みに付き合わされた時に泣きながら言っていた。
「何よ、急に。もう、過去のことよ」
「そうっすね。そんな男は忘れた方がいいっす。……それで、元彼は初めだけキザで甘いことを言ってきたんすよね? で、すぐに飽きられたと」
「あら~、ケンカ売ってんのかしら? 傷口抉って来るじゃない」
柏木さんは、美形が大好きだ。恋人はすぐに出来るが長続きしないのは、男を見る目がないせいだと俺は思っている。
彼女に近づく人間は、初めは甘い言葉ばかりを言ってくるが、すぐに飽きるタイプ。
熱しやすく、冷めやすい。
きっと、社長もそうだ。昨日の今日で、この告白だ。典型的な熱しやすく冷めやすいタイプだろう。
「友達の話ですが、そういうタイプの人に迫られたら、どうやって断ったらいいと思いますか?」
そういうと、面倒見はいい柏木さんが、「うーん」と考え始めてくれる。しかし、答えが出ないようで、完全に相談する相手を間違えた。
「放っておくのが一番じゃない?」
それを横で聞いていた小嶋さんが、ニコっと笑って言った。
「そういうタイプは、熱が冷めるまで放置よ。変に油を注がない!」
「おぉ……なるほど。正論な気がします」
小嶋さんの言う通りだ。
俺の相手は会社の社長なんだ。変に油を注がず、熱した熱が冷めるまで待つのがベストだろう。
◇
「う~~~ん」
そして、会社から帰宅して風呂入ってビールを飲んでいる今。
俺は凄く悩まされていた。
俺のSNSのアカウントに新たにフォロワーが一名増えていたのだ。
『田中清一郎』
そのアカウントのアイコンは、“カロッソ”の人気商品のチョコ画像だった。
金持ちアカウントあるあるで、いい車や高級寿司などの画像を載せている人がいるけど怪しさと自慢しか感じない。
だが、この『田中清一郎』のアイコンとくればどうだろう。380円とスーパーで売られているチョコにしては高めの設定ではあるが、高級と言われるほどでもなく、手に取りやすい。
この画像をアイコンに使うことによって、そんなに気取っていない、かつ親しみやすさを感じるアカウントになっているのではないだろうか。
まだ、『田中清一郎』のアカウントページを見ていなかったが、恐る恐るそのアカウントページを覗いた。
『田中清一郎』今日、始めたばかりのアカウントのようだ。
フォローは、……俺、一人。
フォロワーは32人。
田中なんて名字は全国ゴロゴロいるし、清一郎と言う名も珍しくない。過去、そういう名の同級生もいた。
だが、もう俺は、この『田中清一郎』は社長だと確信している。これで、赤いフェラーリの写真をアイコンにするような人なら、もっと上手く躱すことが出来そうなのに。
社長は、本日二度呟いていた。
『誰か分からない名前で盗み見るような真似は誠意がなかった。愚かな僕を許して欲しい』
『どんな魔法を使ったんだ。胸が苦しい』
「…………ふぅ」
SNSから寒気がする。
…………これだけで判断してはアレだが、社長は“君はハート泥棒”だったのではないだろうか。文体と内容がそっくりだ。
一生問いただすことはないし、社長が“ハート泥棒”でも別にどうでもいい。
問題は、この『田中清一郎』をフォローするか、スルーするか、あるいは俺がSNS自体を辞めるかだ。
ブロックすることや、相手から見えない鍵垢にすることも考えた。だけど、スルーするのが一番だと思う。気づかなかったという方法だ。その次はアカウントを消去しSNS自体を辞める。
ちなみに俺のSNS名は、ヤマカワだ。
山川という名字も全国には多く、俺だと特定するものにはならない。アイコン画像は小学生の頃から持っている剣を模ったキーホルダーだ。
どうやって俺を特定したのか今は置いておこう。とにかく、このフォロワーをどう対処するかだ。
すると、社長が新たに呟いた。
『僕は君というマウンテンに遭難してしまったようだ』
「いや! だから、何それ!? 意味が分かんねぇよっ! 俺の名字が山川だから!? ————って、ひぃ……っ」
思わず、スマホを持ってツッコミを入れてしまったら、指が、イイネ♡をタップしてしまった。
ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお…………。
イイネ♡とは、消しても相手には通知がいく。何故、スライドさせる右手の親指の位置にイイネ♡ボタンがあるんだ!?
この時点で一番安全な『スルーをする』という方法はなくなってしまった。
残りの二択だが、イイネをした後すぐにアカウントを消せば不自然だろう。社長は逃げれば追いかけてくるハンタータイプかもしれない。残るは……
「仕方ない……。俺は、この田中清一郎をフォローする」
フォローはするが、これから俺はSNSで呟くことはしない。浮上しない。もし、このアカウントに関わってきても浮上しなければいいのだ。
何故か田中清一郎のフォロワーが今の間で2名増えている。それに乗じて俺もサッとフォローをした。そのまま、SNSを閉じようとした時、彼が呟いた。
『フォーエバーラブ』
ひぃい!? いや! 頼むからフォーエバーはやめてくれ!!!
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