だから、悪役令息の腰巾着! 忌み嫌われた悪役は不器用に僕を囲い込み溺愛する

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番外編

番外編 女狐フランの妖艶なあざとさ ⑤ サモン視点*

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 欲望を抱いていたら、彼が顔を横に振って唇を離そうとする。それを追いかけるのを我慢して唇を離し、フランの顔を覗き込む。
 はぁはぁと荒い息、紅潮した頬、ぽってりした唇、潤んだ瞳、垂れた眉。

 ──絶対見間違いなんかしない。
 これは全部、フランだ。
 愛おしさが込み上げてきて、再び口づけると、抱きしめている身体がピクピクと震えた。

「んぁ、サモンく、……ん、ぼ、く」

 頭を後ろに引いて、キスから逃れようとするが、その口からは甘い声が漏れている。
 感じている時の声だと分かって、彼の下半身を横目に見た。

 あぁ……苦しかったのか。

 催淫効果がまだ切れていないのだろう。軽い口付けだけでも主張して膨らんでいる。
 彼の反応がただただ嬉しく、舌を彼の熱い口腔内に差し込んだ。下顎、歯の裏まで全部舌で舐めとりながら、舌同士を絡ませる。
 くちっと唾液で濡れる音が、密着している場所から聞こえた。

「はぁん、ん……ん、ん」

 口づけから伝わる彼の感触や匂い、反応の全てが身体の奥底にズシンと重く響く。
 キスをしながら、シャツのボタンを外していると、彼に手を掴まれた。

「何故? 苦しいだろう?」
「──だって」
「だって?」

 彼はまた下を向いてしまった。それから、しっかり聞いていなければ聞こえない声で呟く。

「……自信ないから」

 ──自信? 
 立ち直りが早くポジティブな彼がこんな風に言うなんて。
 やはり、霊など何が何でも真っ先に取り除いておくべきだったと反省する。
 なんの、とは聞かなくても分かるが、あまりに不要な嘆きなので、あえて聞いてみる。

「フランが性的魅力に自信を持てなくなったという意味でいいか?」
「っ、……サモン君ってば、デリカシーがなさすぎる。僕の記憶では勃たないと言われた直後なんだよ。仕方ないじゃないか──ひゃっ!?」

 フランの腰を掴み手前に深く座らせる。ズボン越しに下半身の熱を伝えるとフランは目を見開いて驚いた。

「…………え?」

 こんな密室でフランにキスしてしまえばこうなって当然。毎回こうなるというのに、彼はまだ自覚していないのだろうか。

「えっ、え、え……? でも、さっき……え……?」
「あれはフランでないと言っただろう。その悩みは杞憂にすぎない」
「……っ」
「それにフランに対して、いつもなっているだろう」

 堂々と言うべきではないが、当たり前のこととして言うと、彼は羞恥に頬を染める。
 彼は少し何かを考えた後、ようやく「え、へへへ」といつもの笑顔を取り戻した。

「……そっか、嬉しいな」
「……っ」

 言葉通りの嬉しそうな表情。
 あまりの可愛さに息を飲む。
 その言い方はなんだ……。俺が反応していることは、そんなに嬉しいのか? ニマニマすることなのか?

 可愛さが通り越して何処かの血管が切れそうだ。
 溜め息が出そうで耐える。こんな時に溜め息なんぞ吐けば誤解を招く。
 その代わり、眉間にシワが寄る。

 ──絶品のご馳走が自分から喜んで食べてと言っている状況で間違いない。
 だが、フランは誘惑している自覚があまりない。
 彼は無自覚天然たらしなのだ。
 日常的にそう思うことは多々ある。
 ベッドで潤んだ瞳で見つめられて、誘われているのかと思えば、単に眠たくて涙目になっただけだとか。

 そして、こんなに抱いて欲しいオーラが出ているのに、学園では挿入するな。──とか彼には禁止事項もあるのだから、有り得ないだろう。
 ゴゴゴゴゴゴゴ……と理性と本能を戦わせているうちに肩から靄が出る。

「っ、……サ、サモン君?」
「────何があっても抱く……絶対」
「え、ひゃ⁉」

 考えた結果、こんな不快な場所にいる必要は何もない。
 彼の身なりを整えて俺の上着をぐるぐるに巻きつけ、抱き上げると寮まで猛進した。こちらを見る者は威嚇する。


 そうして全力で寮の部屋まで着いて、ベッドに彼を下ろしその身体に覆いかぶさった。

「え……、え? サモン君?」

 フランの目が驚いているのは、煽られ過ぎて野獣と化した自分のせいだろう。

「──フランも俺を間違えるな」

 俺は絶対フランを求める。

 そう言いながら、彼の衣類を剥ぎ取った。



 そこからは、欲望のままに彼の身体を貪った。
 全裸にさせて、真っ白な肌に赤い自分の痕を残していく。蕩けていく身体を情欲で掻いで、突く。彼の弱いところを何度も浅く、深く。
 前から、後ろから。胸も腹も背中も性器も、全てに触れる。
 甘い声を深い口づけで塞いだ。
 俺がどれくらい日頃我慢しているのか、彼だけを想っているのか。

「あっ、あ、んんん、待って! やっ、出ないっ、あっ、出ないのに、気持ち……い、んんっ」

 深く突くと、彼の性器からつぅっと蜜が伝う。
 もう吐き出すものがないのか少量だ。先程からその性器も緩くしか勃ちあがっていない。
 動きを止めて彼の頬を撫でると、「も、分かったぁ」と涙目で訴えられる。

「君はちょっとSで、頑固で、ムッツリで、抜かずに何発も出来ちゃう絶倫で……」
「……」
「それから、凄い優しいって分かったからぁ」

 はふはふっと彼が「分かったよぉ」と俺の胸元に頬ずりする。
 やめて欲しいのか、もっと続けて欲しいのか。恐らく前者だと思うが、自分には逆効果だ。

 だが、その言葉に胸がほっこりする。
 彼以外は俺のことをそんな風には言わないだろう。
 金色頭に口づけしながら、柔らかくその身体を抱きしめた。



 ◇◇◇


「誰だったんだろう?」

 それから一週間後、フランが変な人に出会ったと言ってきた。なんでも、狐のような男がフランを手招きするのだそうだ。
 その銀色の髪の毛はとても美しかったと。

 先日の件もあるから注意していると、確かに──いる。
 正確には、いる気配がするのだ。
 だが、俺がいるときは姿を上手く隠しているようだ。

「フラン、そいつは何か言っていたか?」
「「大変そうね、他にもいい人いるわよ」ってその人がブラウドの方を指さしたんだ」
「……」
「初対面でそんなこと言われるのも不思議だなって」

 ──あの、狐か。
 ブラウドに目を付けたってわけか。どうするつもりだ。

「フランに害をなすものは、許さない。男ども虫けらだろうと霊だろうと捻り潰してやる」
「え? あ、うん? ありがとう」

 ほんわか無邪気に喜ぶフランの横で、誰にも……と心の中で呟いて、奥歯を噛みしめた。



 番外編 女狐フランの妖艶なあざとさ おわり




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