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番外編

番外編 女狐フランの妖艶なあざとさ ② *サモン視点

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「発情したその身体は俺が面倒をみるが、要らないのは貴様だ」
「……君……、ふーん」

 先程の触れ合いでフランの中に別の存在を感知した。だが、霊がフランの身体を気に入ったとばかりにしがみ付いている。
 魔法は使えても霊媒師ではない。それだから、目に見えない霊的なものは結局自分のイマジネーション頼りだ。

「ぁんっ」
「……」

 突然、フランの口から喘ぎ声漏れる。
 彼はこちらを見て艶やかに微笑んだ。何をしているのかと思えば、わざと見せつけるかのように乳首を指で弄り始める。

「んっ、ぁ……この身体すご、乳首で凄い感じちゃ……あん、んっ」

 自身の乳首を指で引っ張って尖らせて、カリカリ掻く。その刺激にシャツで半分隠している下半身はピクピクと揺れて反応しているのが分かる。身体を捩ってくねらせる様子は、一流の踊り子のようでもある。
 普段の彼とは全く違う艶美は異性を確実に引き付けるだろう。

「ねぇ、いけずなこと言わないで。楽しもうよ。君もこの身体を好き放題したいんだろう? 僕なら望みのままにあげられる。この薄い腹が孕むくらい精をたっぷり出してもいいんだよ」

 そう言って、座り直した机の上で足を曲げ、精を注ぐ場所として局部を見せる。

「今だけじゃない。君が望むならずっと生涯傍に──……、っ」

 彼が言いかけて息を飲んだのは、俺が魔力を外に出したからだ。暗く冷たい靄が室内に広がる。発情して紅潮していたその頬が、一気に青ざめる。

「今は貴様をどう抹消させようか考えているだけだ」
「っ、……なんだい。僕を抱く気がないのならば、退きなよ。この学園なら他にも上等な魔力はある──ひっ」

 腕を強く掴み、魔力でその身体をぐるぐるに締め付ける。

「その身体で他の男をたぶらかすのは許さん」
「……っ、……ぁ」

 締め付けたいのは霊だけだが、今は身体と共にあるため締め付ける他方法がなく、仕方なくの手段だ。身体への拘束は最小限に緩めるが、威嚇は続ける。
 自分の上着を脱いで、はだけたその身体に掛ける。すると、明らかに興ざめした瞳で彼が俺を見た。

「──はん、朴念仁。つまんない男に引っかかっちゃった」
「減らず口を永久に言えないようにしてやろう」

 きゅっと黒い手袋を嵌めた後、フランのはだけた胸に手を置く。この霊の形は全て感知した。時間がかかってしまって、彼の身体を好き放題させてしまった。守護者として情けない。

「まっ、待って! 待ちなよ! 消滅させるのはやめて!」
「手遅れだ、消えろ」
「待ってって言ってるじゃない! フランを道連れにするよ!? ひっ、アンタの魔力異常よ⁉ 人間じゃない、このバケモノ!」

 そう、この魔力はバケモノじみている。
 以前、本当のフランにもこうして脅したことがあった。だが、彼は俺にそんな言葉を言ったことは一度もない。あのフワフワは案外とても根性が座っているのだ。

 ──この身体は髪の毛の先まで、

「……道連れだと? 少しでもフランを傷つけてみろ。貴様は消滅させず永遠とつづく拷問にでもかけてやろう」
「……っ、分かったわよ、言う通りにするわ。この身体で発散したら、ちゃんとこの子に身体を返すから」
「今すぐ」
「発情した身体に引っ付いているから無理よ。霊的にこの子の引力が強すぎるの。発散させないと出れないわ」

 俺が少し考えている間に、小賢しく、「少しも傷つけたくないのでしょう。これが一番彼にとって安全な方法だと思うわ」と持ち掛けてくる。
「……」

 霊の言う言葉を鵜呑みするわけではないが、その身体の拘束を弱めた。

「では、早く発散して──出ろ」
「ふ。……本当に君って最低」

 俺を睨みながら、彼は自身の身体を弄り始めた。先程の誘うような仕草はなく局部を上下する直接的な刺激。
 この霊は随分小賢しく、余計な企みを持っていないか確認するため、動作を見守る。

「んっ、ぁ、あ……はぁ、この身体、本当、気持ちいい」
「余計なことを考えるな」
「煩いわね……っ、っ。──ねぇ、この子のお尻、開発したの……君? 疼いてくるんだけど。ねぇ触ってくれない?」

 霊は人を誑かす術を知っている。
 少しも揺れはしないが、誘い言葉も的確だ。

「触らない。それから貴様はそこに触れるな」
「……そんなこと言って、君もこの身体見て……──嘘でしょう?!」

 彼は太腿を俺の下半身に当ててくるが、反応を示さないそこを見て、目を見開いた。フランでない者の自慰など見せられても感情が動くはずもない。

「性を楽しめない堅物かと思いきや、勃起不全なだけじゃない」

 フランの顔で嘲笑うとずっと腹立たしさが込み上げてくる。彼の首を掴んで引き寄せる。

「貴様で勃つわけがないだろう」
「──く」

 霊的に屈辱だったのか、美しい顔が憎悪に歪む。
 だけど、発情している上に感度のよい身体は、単調な刺激でもすぐに極まってしまう。一際大きく震えると、彼は自分の手の中に白濁を漏らした。

 はぁはぁ……と下を向きながら上下する肩。
 霊の言った通り、発散した瞬間にその気配はフランの身体の中から消えた。
 フランは大丈夫だろうかと、腰を曲げて屈む。たらんと垂れた横髪をその耳にかけようとして、パシッと手を叩かれた。

「フラン?」
「──……」

 返答はないが、彼は下を向いたまま自分の上着を俺に突っ返した。
 何か様子がおかしい。

「フラン、大丈夫か? 気分が……」
 声をかけながら、ギクリとする。下を向いているから、ポロっと透明の雫が地面に落ちた。

「────う…………」
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