上 下
35 / 43
番外編

番外編 女狐フランの妖艶なあざとさ ① サモン視点 *

しおりを挟む
【※誤字申し訳ございませんでした! ご報告大変助かりました。ご感想も嬉しいです!】


 (サモン視点)
※恋人になった彼らのその後



 自分の手のひらに浮かび上がる紋章。
 これは自分がフランにかけた“御守”の術式が発動している証拠である。
 それを見て、小さく舌打ちする。

 ──どこかの阿呆がフランに手を出している。

 絶世の美青年であるフランの凄艶に惹かれて群がってくる虫は多い。
 アレは他の奴が触って良いものではないのに、それをまだ分かっていない愚かな虫けらがいるとは。
 虫駆除に急いでフランの反応を示す場所に向かった。

 校舎の一番奥の使われていない──魔術物品室。
 そんな場所にフランと害虫がいることに血管が切れそうな程、怒りを覚える。
 勢いよく部屋のドアを開けると、目の前に広がった意外な光景に目を疑う。

 フランが男の両頬に手を添えていたからだ。
 男の方は俺を見て「ひぃ」と叫んでいる。それから、フランは俺が来たというのにいつものような“来てくれた!”というような喜ぶ表情はなく、ただ怪しく微笑むだけ。

「ふ──、……ねぇ、君、分かった? 君では僕にふさわしくないんだよ」
「ひぃ……わ、分かりました! 身体拘束の魔術を解除してくださいぃいいい~」
「本当?」

 フランが男の頬を柔らかく撫で、妖艶さの漂う表情で男の耳元で何かを囁く。──俺の目の前で。
 気付けば、二人を引き離し、男の方を瞬時に魔法で転移させていた。転移魔法は空間を飛ばすもので、非常に複雑な魔法でその男の着地点は保証しない。
 だが、そんなものはどうでもよく、どういうことだとフランを睨んだ。

「ふふ──」
「……」

 フランは自分の真っ赤な唇に指を添え、目を細めて微笑む。艶麗な色気は普段の彼とは別人のようだ。

「誰だ、貴様」

 フランはその問いに答えず、先程の男にしたように俺の頬を柔らかく撫でる。目の動き、表情、仕草どれをとっても違和感だらけだ。

「目の下のクマは酷いけれど、目鼻立ちは整っているし、体躯の良さも非常に好ましいね。何より、魔力が美味しそうだ」

 つぅっとその手が頬から首筋、胸元へ下りていく。
 舌なめずりをして見上げるその瞳が、口付けを強請っていた。近づいてくる唇をパシッと手で押さえる。

「もう一度聞く。貴様は誰だ」

 押さえた手を彼はそっと触れて、指に絡ませてくる。それからその手を自分の頬に寄せ頬擦りした。
 男に媚びることを知っているその動き、ますますフランではないと確信する。なのに「僕はフランだよ」と言うから、眉間にシワが寄る。

「ふふ、それとも君は、僕のような美しい人が他にいるとでも?」
「……フランの中に、狐でも入ったか。調子に乗るなよ」

 さっきの阿呆が、呼びよせの術で霊を呼んだのか。
 フランに憑依している霊を引き離すことなど容易だが、本体に影響を及ぼす可能性もある。これが適当な奴ならば、強引に術を使うが、フランのことならばそうはいかない。万が一にでも彼が傷つくことなどあってはならない。
 フランに取り付く浅ましい霊がどの程度、彼の中にくっついているのか、見極めなくては。

「大丈夫、そんなに警戒しないで」
「──……」
 
 自分の首に腕を回されて、下を向かされると唇を重ねられた。
 フランの意思でないキスなど本意ではないが、身体を合わせた方が霊のことを分かりやすい。
 恐らく、霊はフランの魔力に引っ付いているはずだ。フラン以外の気を確かめるために、そのキスにのってみる。
 重なった唇は角度を変えて、口付けを深めてくる。さらにその舌が口腔内に差し込まれて、自分の舌に絡みつく。
 
 こうもキスの仕方が違うものかと萎えていたら、足が淫らに自分の足に擦り寄ってくる。俺の太腿にわざと股間を押し付けるような──……。
 肩を掴み、その身体を離すと、物足りないとでもいうように唇をペロリと舐めた。

「どうしたの? もう終わり?」
「何が目的だ」
「目的は、見れば分かるでしょ? この身体は君に、ほら──こんなに反応しているよ」

 フランはスラックスを下げ、それからシャツのボタンも外し始めた。そして後ろに置かれた机に緩く座った。

「発情しているのは、そういう魔法をさっきの彼がしたんだよ。でも、いいこと教えてあげよう」

 シャツの隙間に除くピンク色に色づいた箇所をチラリと見せた。ぷくりと勃ち上がった乳首と既に濡れ始めている性器。

「この身体が反応するのは、君だからだよ。君を見てキスしたら、こうなったの。さっきの男では少しもそそらなかった。あれでは僕の身体は濡れない」
「…………」
「あれ? 嬉しくないのかい?」

 それは意識があるフランに何度でも言ってもらいたいことだと目を細めた。
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 時々おまけのお話を更新しています。

役目を終えた悪役令息は、第二の人生で呪われた冷徹公爵に見初められました

綺沙きさき(きさきさき)
BL
旧題:悪役令息の役目も終わったので第二の人生、歩ませていただきます 〜一年だけの契約結婚のはずがなぜか公爵様に溺愛されています〜 【元・悪役令息の溺愛セカンドライフ物語】 *真面目で紳士的だが少し天然気味のスパダリ系公爵✕元・悪役令息 「ダリル・コッド、君との婚約はこの場をもって破棄する!」 婚約者のアルフレッドの言葉に、ダリルは俯き、震える拳を握りしめた。 (……や、やっと、これで悪役令息の役目から開放される!) 悪役令息、ダリル・コッドは知っている。 この世界が、妹の書いたBL小説の世界だと……――。 ダリルには前世の記憶があり、自分がBL小説『薔薇色の君』に登場する悪役令息だということも理解している。 最初は悪役令息の言動に抵抗があり、穏便に婚約破棄の流れに持っていけないか奮闘していたダリルだが、物語と違った行動をする度に過去に飛ばされやり直しを強いられてしまう。 そのやり直しで弟を巻き込んでしまい彼を死なせてしまったダリルは、心を鬼にして悪役令息の役目をやり通すことを決めた。 そしてついに、婚約者のアルフレッドから婚約破棄を言い渡された……――。 (もうこれからは小説の展開なんか気にしないで自由に生きれるんだ……!) 学園追放&勘当され、晴れて自由の身となったダリルは、高額な給金につられ、呪われていると噂されるハウエル公爵家の使用人として働き始める。 そこで、顔の痣のせいで心を閉ざすハウエル家令息のカイルに気に入られ、さらには父親――ハウエル公爵家現当主であるカーティスと再婚してほしいとせがまれ、一年だけの契約結婚をすることになったのだが……―― 元・悪役令息が第二の人生で公爵様に溺愛されるお話です。

余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。 フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。 前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。 声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。 気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――? 周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。 ※最終的に固定カプ

買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます

瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。 そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。 そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。