31 / 35
愛欲※
しおりを挟む
「あ……あのさ、王様……ん」
「コバ、名前で呼んで欲しい」
「ケ、イネス……」
チャプン。と目を覚ましたら、ケイネスによって風呂に入れられ身体を洗われていた。
◇
ケイネスと和解して、一週間。
彼は俺を見るとすぐに傍にきて甘い言葉で口説いてくる。
現在別々の部屋に寝ているが、同室を希望されていた。俺は無理だと拒否をしたが、彼は何かとしつこく二言目には「気が変わらないだろうか」と聞いてくる。
「では、今日は部屋に来て欲しい」
「……う~ん」
「来て欲しいな」
廊下の真ん中で抱き上げられ、頬をスリスリ寄せてくる。そんな彼にまだ慣れず緊張してしまう。
「離してよ……」
彼の胸を押して、地面について数歩後退る。
廊下なので勿論召使いもいる。俺達の様子を全く気にする素振りはないが、どうしても視線が気になる。
「少しいい? 俺とのこと少し決めておこう!」
王には公務がある。忙しい時間を割いて自分の時間を作ろうとしないでほしい。
それに毎回、来て欲しいと強請られることにも羞恥心の限界を感じていた。
──四日に一度、閨に入る。
俺がそう言うと、ケイネスの額から血管がぷくりと現れニコリと笑った。
ケイネスからしたら、運命の番とのようやくの蜜月。離れていた分の反動で少しでも密にしたいのだそうだ。
「大丈夫。公務に支障は出ないよ」
「これから出るかもしれない」
「出ないって」
「駄目だ」
拒否の言葉を口にする度、ケイネスの全身から威圧のオーラを感じる。だか、頑固な俺に彼の方が折れた。
「では、暫くはそうしよう」
渋々ケイネスは頷いたが、その表情は不満げだった。
そして、……今日がその四日に一度、ケイネスの部屋に渡る日だ。
部屋を訪ねると、彼は上機嫌だった。
「私に抱かれるためにやってくる、君の緊張した面持ちを見て待った甲斐があったよ」
「……」
これから身体を繋げる、俺から彼を求めて王の部屋に向かう。
この瞬間は何より良い一興だとそう彼は微笑む。
なんて言い方をするんだ。二度目からもっと緊張して行きにくくなった。
「おいで」
室内には召使いが用意したブドウなどがあるが、まっすぐにベッドに向かった。俺をベッドに押し倒すと、唇が降ってきた。
性急だが、一度彼の発情した匂いを嗅ぐと俺の身体もカッと熱くなる。服も脱がず身体を繋げた。
一週間以上我慢したケイネスは一度果てても萎えず、止まりなかった。
「……ぁ……、ぁ、はぁんっ!! またっ!? やぁぅ、んっ」
「あぁ、もっと深く私を感じておくれ」
「やっぁ」
彼の愛撫に飲まれて翻弄され、ただただ喘がされた。
そして……
気が付けば風呂に入れられていた。
「……ケイネス、王様に洗ってもらうのは気が引ける」
王様に身体を洗ってもらうなどあってはいけないとコバは思いっきり拒否したいが、身体が疲弊して上手く動かせない。
そう言えば、発情期の時も風呂に入れられたことがあった。あの時は意識が曖昧であったけれど今は意識がしっかりしている分、申し訳ない。
「……っ、ねぇ、身体を離してくれよ?!」
ケイネスは俺を膝上乗せ湯船に浸かっている。
「何故? 君は召使いに身体を洗わせることが嫌いだと言うし、私も他の者に情事の後、触れてもらいたくない」
ケイネスは甘い声で耳朶を噛みながら囁く。俺の身体の世話する事を喜びに感じているし、王の前に番なのだから気にしないで欲しいと訴えてくる。
「私が君に触れたいから、やらせて欲しい」
そういうものなのだろうかと思いながらも、甘やかされることは悪い気がしない。
「他の者よりもっと特別になりたい」
「……」
この王は本当に変わってる。
俺がなにを言っても拒否してもケイネスは受け入れて、結果、こんなに甘い。
温かい湯と背中にあたる体温はとても心地がいい。全身から力が抜けて彼に身を預けた。
グズグズに溶かされてしまいそうだわ。
だが、赤くて腫れぼったい胸の突起にスルリと指が触れてくるのには何か意図を感じる。
「おい……ん」
「ん?」
再び、長くてゴツゴツした指が胸の突起に触れ軽くキュッと摘ままれた。
「あ、っ、うう……んっん……アンタッ」
身を竦めて、背後から抱きしめてくるケイネスを見た。ケイネスは目を細めて、俺の首を舐めながら、摘まんだ乳首を上下に軽めに扱き始める。
「あっ。うぅんっ……あ、あっ、駄目っ乳首やだ!」
駄目だと言っているのに、乳首を弄られる。治まった身体の熱がまた上がってくる。
「どうして?」
「うぁあんっあぁ、ん、ん……あっ。乳首触られたら……、また、気持ちい、く、なるから……っ」
乳首を弄られる度、腹が疼くし陰茎が緩やかに勃起してくる。考えないようにしているが、尻にはケイネスの猛った性器がずっと当たっている。
「あぅっ。腰動いちゃ……止めて、乳首擦っちゃ駄目……」
腰が上下に揺れ、ケイネスの太ももに性器を擦ってしまう。
「あーっ、ん、止めてって! あ、あうっ、動いちゃうからっ」
力が入らない身体でケイネスの手を止めようとするが、カプリと肩を甘噛みされ吸われる。
全身、彼のキスマークだらけだ。肩も太ももも胸も。前回付けられた痕がようやく消えたのにまた付けられている。
「……ぁんっ」
痕、付けられるのが気持ちいいって自分でも引くわ……。
「きも、ちよく、なった、じゃん」
ケイネスの方を向くと、彼の目が熱を孕んでいる。俺に対し「美しい」「色っぽい」「こんな可愛い人は知らない」など、絶世の美男子を相手にしているかのようだ。
「っアンタ、目がおかしいっ。も、黙って……くぅううんっ」
クポッと彼の先端が後孔に挿れられた。
肛門括約筋にカリが引っ掛けられて抜かれてまた引っ掛けられる。そうしながら乳首も弄られる為、早くも中イキしてしまう。
「美味しそう。蕩けている」
「ぁ……へ……あえっ」
ヒクヒクと痙攣し蠢く内部にケイネスは舌なめずりをし、猛る性器を一気に奥へと押し込んだ。
「————っ!」
ビクンビクン、俺の小さな身体は飛び上がった。逃げる身体をケイネスに封じられる。
「はぁはぁ——……、あっ、ん……あぅんっ!」
息も落ち着かないうちに乳首を扱かれ、その刺激に振り向けば唇を塞がれる。
口の中で暴れるケイネスの舌と、緩々尻の奥を性器で捏ねられる。
「君の気持ちいいところ擦ってあげる」
「へ……ぅ」
そう言って、ケイネスは俺の両脇を持ち上げ、ちゅぽっと性器を抜いた。そして、俺を浴槽の縁にうつ伏せにさせると、尻をグッと高く上げさせる。
「あ……、み、見ない、で」
後孔が蠢いて求めている。
そこにペニスが宛がわれゆっくり挿いっていく。じっくり観察されている。
挿入される快感と羞恥心で足が震えた。
「……ぅ、あっあっ!」
ペニスが中にみっちりと挿いると、彼は俺の腰を掴み動き始める。
前立腺というそうだ。自分の身体の中にこんなに気持ちいい部分があることに本当に驚いてしまう。
「……ぁ、あ、ぁっ、……っ、ぁあん」
「コバ、頭が溶けそう……」
擦られる度、ピカピカと頭の中で光が点滅する。ケイネスが性器を抜き射精した後、もう一度浴槽で繋がった。
◇
……四日に一度は欲望が抑えられなくなることが分かった。
次の日の朝起きるや、艶やかなケイネスの寝顔を見て思った。
喉も痛い、関節も痛い。だるい。出すもの全部搾り取られた。
身体が丈夫な俺ですら唸る。これが四日に一度のペースなのは厳しい。
「はぁ」
溜息をつくとケイネスの腕が伸びて来て、彼の胸に引き寄せられた。ギャッと悲鳴をあげそうなのをグッと我慢する。
逞しい胸はいい匂いがする。
「コバがいる。ふふふ。宝石のような目、キレイな髪の毛、白い肌……ふふふ」
くるくると俺の赤色の髪の毛を指に絡ませ、上機嫌だ。酔っ払いのように笑っている。
「…………」
ほんと、恥ずかしい奴だな。
暫くケイネスの好きにさせていると、彼の身体が再び欲情しているので驚き睨んだ。
彼は苦笑いをしてベッドの縁に座った。俺も起き上がろうとして無理だったため、ケイネスに介護してもらって、彼の膝の上に乗せられた。
ちゅっと額にキスをされ、日が暮れても明けても甘さが変わらないケイネスに笑った。
「——……あぁ、コバ、聞いて欲しい事がある。以前にも言ったが、君と婚姻を結びたい。そのための儀を行いたい」
「あぁ、はい」
王妃になることはケイネスから言われていたので、儀式は当然あるものだと思っていた。頷いたが、彼が驚いている。
「ん? スラム街の人間だって結婚式くらい知ってるんだよ。ルムダンで結婚式を挙げている金持ちの奴らを何度も見たことがあるんだ。王様の結婚式っていうのはどういうのか知らねぇけど」
すると、グッと肩を掴まれた。
「本当にいいのだね!? 一度婚姻を結んでしまえば、何があっても君は死ぬまで私の妃なのだよ!?」
「あ? そうなの。はい分かった」
頷くと彼の目が左右に彷徨う。
「……あと、国民と他国からの訪問者への披露がある。人目が嫌なら……」
「あぁ。それが心配だったのか。俺、覚えは早い方だし、作法もなんとか覚えるよ。周りの人も教えてくれるだろうし」
スラム街の少年なんぞと結婚したがる酔狂はケイネスだけだと思うが、彼が俺を望んでいることはもう分かっている。
彼がこんな自分と結婚したいならば、俺だって男だし腹をくくるくらいはしたい。
「やるよ」
要は彼のそばで頑張ることを伝えたいのだ。
「……そうか」
ケイネスは頷くと、プルプルと口角が上がり、耳と尻尾を動かした。
締りがない顔だ。でもその顔がとても嬉しそう。
「コバ、好きだ。私は君のような優しくて愛しい者は知らない」
いや、だから、褒めすぎだろう? ムズムズしてくるんだけど。
大層大事に抱きしめられ、反論する言葉を抑え静かにケイネスの唇が落ちてくるのを待った。
「コバ、名前で呼んで欲しい」
「ケ、イネス……」
チャプン。と目を覚ましたら、ケイネスによって風呂に入れられ身体を洗われていた。
◇
ケイネスと和解して、一週間。
彼は俺を見るとすぐに傍にきて甘い言葉で口説いてくる。
現在別々の部屋に寝ているが、同室を希望されていた。俺は無理だと拒否をしたが、彼は何かとしつこく二言目には「気が変わらないだろうか」と聞いてくる。
「では、今日は部屋に来て欲しい」
「……う~ん」
「来て欲しいな」
廊下の真ん中で抱き上げられ、頬をスリスリ寄せてくる。そんな彼にまだ慣れず緊張してしまう。
「離してよ……」
彼の胸を押して、地面について数歩後退る。
廊下なので勿論召使いもいる。俺達の様子を全く気にする素振りはないが、どうしても視線が気になる。
「少しいい? 俺とのこと少し決めておこう!」
王には公務がある。忙しい時間を割いて自分の時間を作ろうとしないでほしい。
それに毎回、来て欲しいと強請られることにも羞恥心の限界を感じていた。
──四日に一度、閨に入る。
俺がそう言うと、ケイネスの額から血管がぷくりと現れニコリと笑った。
ケイネスからしたら、運命の番とのようやくの蜜月。離れていた分の反動で少しでも密にしたいのだそうだ。
「大丈夫。公務に支障は出ないよ」
「これから出るかもしれない」
「出ないって」
「駄目だ」
拒否の言葉を口にする度、ケイネスの全身から威圧のオーラを感じる。だか、頑固な俺に彼の方が折れた。
「では、暫くはそうしよう」
渋々ケイネスは頷いたが、その表情は不満げだった。
そして、……今日がその四日に一度、ケイネスの部屋に渡る日だ。
部屋を訪ねると、彼は上機嫌だった。
「私に抱かれるためにやってくる、君の緊張した面持ちを見て待った甲斐があったよ」
「……」
これから身体を繋げる、俺から彼を求めて王の部屋に向かう。
この瞬間は何より良い一興だとそう彼は微笑む。
なんて言い方をするんだ。二度目からもっと緊張して行きにくくなった。
「おいで」
室内には召使いが用意したブドウなどがあるが、まっすぐにベッドに向かった。俺をベッドに押し倒すと、唇が降ってきた。
性急だが、一度彼の発情した匂いを嗅ぐと俺の身体もカッと熱くなる。服も脱がず身体を繋げた。
一週間以上我慢したケイネスは一度果てても萎えず、止まりなかった。
「……ぁ……、ぁ、はぁんっ!! またっ!? やぁぅ、んっ」
「あぁ、もっと深く私を感じておくれ」
「やっぁ」
彼の愛撫に飲まれて翻弄され、ただただ喘がされた。
そして……
気が付けば風呂に入れられていた。
「……ケイネス、王様に洗ってもらうのは気が引ける」
王様に身体を洗ってもらうなどあってはいけないとコバは思いっきり拒否したいが、身体が疲弊して上手く動かせない。
そう言えば、発情期の時も風呂に入れられたことがあった。あの時は意識が曖昧であったけれど今は意識がしっかりしている分、申し訳ない。
「……っ、ねぇ、身体を離してくれよ?!」
ケイネスは俺を膝上乗せ湯船に浸かっている。
「何故? 君は召使いに身体を洗わせることが嫌いだと言うし、私も他の者に情事の後、触れてもらいたくない」
ケイネスは甘い声で耳朶を噛みながら囁く。俺の身体の世話する事を喜びに感じているし、王の前に番なのだから気にしないで欲しいと訴えてくる。
「私が君に触れたいから、やらせて欲しい」
そういうものなのだろうかと思いながらも、甘やかされることは悪い気がしない。
「他の者よりもっと特別になりたい」
「……」
この王は本当に変わってる。
俺がなにを言っても拒否してもケイネスは受け入れて、結果、こんなに甘い。
温かい湯と背中にあたる体温はとても心地がいい。全身から力が抜けて彼に身を預けた。
グズグズに溶かされてしまいそうだわ。
だが、赤くて腫れぼったい胸の突起にスルリと指が触れてくるのには何か意図を感じる。
「おい……ん」
「ん?」
再び、長くてゴツゴツした指が胸の突起に触れ軽くキュッと摘ままれた。
「あ、っ、うう……んっん……アンタッ」
身を竦めて、背後から抱きしめてくるケイネスを見た。ケイネスは目を細めて、俺の首を舐めながら、摘まんだ乳首を上下に軽めに扱き始める。
「あっ。うぅんっ……あ、あっ、駄目っ乳首やだ!」
駄目だと言っているのに、乳首を弄られる。治まった身体の熱がまた上がってくる。
「どうして?」
「うぁあんっあぁ、ん、ん……あっ。乳首触られたら……、また、気持ちい、く、なるから……っ」
乳首を弄られる度、腹が疼くし陰茎が緩やかに勃起してくる。考えないようにしているが、尻にはケイネスの猛った性器がずっと当たっている。
「あぅっ。腰動いちゃ……止めて、乳首擦っちゃ駄目……」
腰が上下に揺れ、ケイネスの太ももに性器を擦ってしまう。
「あーっ、ん、止めてって! あ、あうっ、動いちゃうからっ」
力が入らない身体でケイネスの手を止めようとするが、カプリと肩を甘噛みされ吸われる。
全身、彼のキスマークだらけだ。肩も太ももも胸も。前回付けられた痕がようやく消えたのにまた付けられている。
「……ぁんっ」
痕、付けられるのが気持ちいいって自分でも引くわ……。
「きも、ちよく、なった、じゃん」
ケイネスの方を向くと、彼の目が熱を孕んでいる。俺に対し「美しい」「色っぽい」「こんな可愛い人は知らない」など、絶世の美男子を相手にしているかのようだ。
「っアンタ、目がおかしいっ。も、黙って……くぅううんっ」
クポッと彼の先端が後孔に挿れられた。
肛門括約筋にカリが引っ掛けられて抜かれてまた引っ掛けられる。そうしながら乳首も弄られる為、早くも中イキしてしまう。
「美味しそう。蕩けている」
「ぁ……へ……あえっ」
ヒクヒクと痙攣し蠢く内部にケイネスは舌なめずりをし、猛る性器を一気に奥へと押し込んだ。
「————っ!」
ビクンビクン、俺の小さな身体は飛び上がった。逃げる身体をケイネスに封じられる。
「はぁはぁ——……、あっ、ん……あぅんっ!」
息も落ち着かないうちに乳首を扱かれ、その刺激に振り向けば唇を塞がれる。
口の中で暴れるケイネスの舌と、緩々尻の奥を性器で捏ねられる。
「君の気持ちいいところ擦ってあげる」
「へ……ぅ」
そう言って、ケイネスは俺の両脇を持ち上げ、ちゅぽっと性器を抜いた。そして、俺を浴槽の縁にうつ伏せにさせると、尻をグッと高く上げさせる。
「あ……、み、見ない、で」
後孔が蠢いて求めている。
そこにペニスが宛がわれゆっくり挿いっていく。じっくり観察されている。
挿入される快感と羞恥心で足が震えた。
「……ぅ、あっあっ!」
ペニスが中にみっちりと挿いると、彼は俺の腰を掴み動き始める。
前立腺というそうだ。自分の身体の中にこんなに気持ちいい部分があることに本当に驚いてしまう。
「……ぁ、あ、ぁっ、……っ、ぁあん」
「コバ、頭が溶けそう……」
擦られる度、ピカピカと頭の中で光が点滅する。ケイネスが性器を抜き射精した後、もう一度浴槽で繋がった。
◇
……四日に一度は欲望が抑えられなくなることが分かった。
次の日の朝起きるや、艶やかなケイネスの寝顔を見て思った。
喉も痛い、関節も痛い。だるい。出すもの全部搾り取られた。
身体が丈夫な俺ですら唸る。これが四日に一度のペースなのは厳しい。
「はぁ」
溜息をつくとケイネスの腕が伸びて来て、彼の胸に引き寄せられた。ギャッと悲鳴をあげそうなのをグッと我慢する。
逞しい胸はいい匂いがする。
「コバがいる。ふふふ。宝石のような目、キレイな髪の毛、白い肌……ふふふ」
くるくると俺の赤色の髪の毛を指に絡ませ、上機嫌だ。酔っ払いのように笑っている。
「…………」
ほんと、恥ずかしい奴だな。
暫くケイネスの好きにさせていると、彼の身体が再び欲情しているので驚き睨んだ。
彼は苦笑いをしてベッドの縁に座った。俺も起き上がろうとして無理だったため、ケイネスに介護してもらって、彼の膝の上に乗せられた。
ちゅっと額にキスをされ、日が暮れても明けても甘さが変わらないケイネスに笑った。
「——……あぁ、コバ、聞いて欲しい事がある。以前にも言ったが、君と婚姻を結びたい。そのための儀を行いたい」
「あぁ、はい」
王妃になることはケイネスから言われていたので、儀式は当然あるものだと思っていた。頷いたが、彼が驚いている。
「ん? スラム街の人間だって結婚式くらい知ってるんだよ。ルムダンで結婚式を挙げている金持ちの奴らを何度も見たことがあるんだ。王様の結婚式っていうのはどういうのか知らねぇけど」
すると、グッと肩を掴まれた。
「本当にいいのだね!? 一度婚姻を結んでしまえば、何があっても君は死ぬまで私の妃なのだよ!?」
「あ? そうなの。はい分かった」
頷くと彼の目が左右に彷徨う。
「……あと、国民と他国からの訪問者への披露がある。人目が嫌なら……」
「あぁ。それが心配だったのか。俺、覚えは早い方だし、作法もなんとか覚えるよ。周りの人も教えてくれるだろうし」
スラム街の少年なんぞと結婚したがる酔狂はケイネスだけだと思うが、彼が俺を望んでいることはもう分かっている。
彼がこんな自分と結婚したいならば、俺だって男だし腹をくくるくらいはしたい。
「やるよ」
要は彼のそばで頑張ることを伝えたいのだ。
「……そうか」
ケイネスは頷くと、プルプルと口角が上がり、耳と尻尾を動かした。
締りがない顔だ。でもその顔がとても嬉しそう。
「コバ、好きだ。私は君のような優しくて愛しい者は知らない」
いや、だから、褒めすぎだろう? ムズムズしてくるんだけど。
大層大事に抱きしめられ、反論する言葉を抑え静かにケイネスの唇が落ちてくるのを待った。
44
お気に入りに追加
1,973
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。
獣人公爵のエスコート
ざっく
恋愛
デビューの日、城に着いたが、会場に入れてもらえず、別室に通されたフィディア。エスコート役が来ると言うが、心当たりがない。
将軍閣下は、番を見つけて興奮していた。すぐに他の男からの視線が無い場所へ、移動してもらうべく、副官に命令した。
軽いすれ違いです。
書籍化していただくことになりました!それに伴い、11月10日に削除いたします。
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
大好きだけど、結婚はできません!〜強面彼氏に強引に溺愛されて、困っています〜
楠結衣
恋愛
冷たい川に落ちてしまったリス獣人のミーナは、薄れゆく意識の中、水中を飛ぶような速さで泳いできた一人の青年に助け出される。
ミーナを助けてくれた鍛冶屋のリュークは、鋭く睨むワイルドな人で。思わず身をすくませたけど、見た目と違って優しいリュークに次第に心惹かれていく。
さらに結婚を前提の告白をされてしまうのだけど、リュークの夢は故郷で鍛冶屋をひらくことだと告げられて。
(リュークのことは好きだけど、彼が住むのは北にある氷の国。寒すぎると冬眠してしまう私には無理!)
と断ったのに、なぜか諦めないリュークと期限付きでお試しの恋人に?!
「泊まっていい?」
「今日、泊まってけ」
「俺の故郷で結婚してほしい!」
あまく溺愛してくるリュークに、ミーナの好きの気持ちは加速していく。
やっぱり、氷の国に一緒に行きたい!寒さに慣れると決意したミーナはある行動に出る……。
ミーナの一途な想いの行方は?二人の恋の結末は?!
健気でかわいいリス獣人と、見た目が怖いのに甘々なペンギン獣人の恋物語。
一途で溺愛なハッピーエンドストーリーです。
*小説家になろう様でも掲載しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】私の番には飼い主がいる
堀 和三盆
恋愛
獣人には番と呼ばれる、生まれながらに決められた伴侶がどこかにいる。番が番に持つ愛情は深く、出会ったが最後その相手しか愛せない。
私――猫獣人のフルールも幼馴染で同じ猫獣人であるヴァイスが番であることになんとなく気が付いていた。精神と体の成長と共に、少しずつお互いの番としての自覚が芽生え、信頼関係と愛情を同時に育てていくことが出来る幼馴染の番は理想的だと言われている。お互いがお互いだけを愛しながら、選択を間違えることなく人生の多くを共に過ごせるのだから。
だから、わたしもツイていると、幸せになれると思っていた。しかし――全てにおいて『番』が優先される獣人社会。その中で唯一その序列を崩す例外がある。
『飼い主』の存在だ。
獣の本性か、人間としての理性か。獣人は受けた恩を忘れない。特に命を助けられたりすると、恩を返そうと相手に忠誠を尽くす。まるで、騎士が主に剣を捧げるように。命を助けられた獣人は飼い主に忠誠を尽くすのだ。
この世界においての飼い主は番の存在を脅かすことはない。ただし――。ごく稀に前世の記憶を持って産まれてくる獣人がいる。そして、アチラでは飼い主が庇護下にある獣の『番』を選ぶ権限があるのだそうだ。
例え生まれ変わっても。飼い主に忠誠を誓った獣人は飼い主に許可をされないと番えない。
そう。私の番は前世持ち。
そして。
―――『私の番には飼い主がいる』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる