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離れがたい※
しおりを挟む「離れがたくて……」
ケイネスはいつも俺を真っすぐに見つめる。
俺はケイネスを一目見て視線を逸らした。ふーっと息を吐き感情的にならないように腕を組んだ。
発情が少し落ち着いたと思ったけれど、彼を前にすると足が震えて崩れ落ちそうになる。
「はぁ~。……アンタの匂いに苦しんでいるのに、ずっとそこに立たれたら腹が立つんだ。セックスしたいならそう言えば? 王様の命令なら俺なんて逆らえないんだから」
「違う。コバ。私は君を無視して繋がりたいわけじゃない」
この部屋には初めから鍵などはなく、彼が入ろうと思えばいつでも入ることができた。今もドアを開けたのに襲ってくる気配はない。
俺の気持ちは尊重されている。けれど、同時に無視されている。
「王様は嘘つきだな。じゃ、いいよ。あっさりしよう。手伝ってよ」
「……」
出来るだけ軽い言い方をして、ドアを開けたまま彼に背を向けてベッドに座った。コバはシャツ一枚を羽織った状態だ。この一枚を脱ぐかどうか迷って思いっきり脱いで全裸になる。
女の身体みたいに膨らみがなく真っ平らで痩せている。その身体に熱視線を感じる。
「俺はアンタの匂いを嗅ぐと発情期が益々辛い。でもアンタは離れて欲しいって言う俺の願いを聞かないんでしょう。王様なら仕方ない。俺が折れる」
失礼な物言いは今更だ。口早にそれを伝えるとケイネスはゆっくりと部屋の中に入ってきた。
ドアを閉めると圧迫感に呼吸が乱れる。どっどっ……と心臓が早まって先ほどまでの強がりも出来なくなり俯きになる。
彼の影が自分の身体を覆うと、彼がベッドの端に腰をかけるとベッドが沈む。
「そうだ。君の言う通りだ」
「……」
「君を尊重したいが、離れたくもないし凄く触れたい。矛盾している」
ケイネスに至近距離で見つめてくる。下を向いていても分かる熱視線。
彼がギシリとベッドの上に乗り上がってきて、俺の背後に座った。
彼の手が回され背後からゆったりと抱きしめられる。その腕は痛々しく噛み傷だらけだ。
ぎゅっと目を瞑った。
——香る。
彼の匂いが香って、鳥肌が立ち細胞が開くような感覚がした。
彼を目の前にすると強がって吠えても、所詮この程度でおしまいだ。身体が震えてしまう。
「震えている。……寒いかい」
「……ひ」
そう言って強く抱きしめられると緊張する裏腹、身体に力が入らなくなってしまった。
動けない……。
身体が言う事をきかずに弛緩していく。彼の分厚い胸元にくたぁともたれた。
「……手伝うと言うのは本当に自分勝手な言い方だ」
自嘲気味に言いながら、彼の手は俺の腹部を優しく擦ってくる。その手が熱くて驚いた。ヒクンと自分の陰茎が勃ちあがる。
「あ……あぅ……」
「嫌いな私の手が気持ちよく感じるのも、全部発情期のせいにしてしまえばいい。何も気にしなくていい」
そう言って頭にキスを落としてくる。ケイネスに触れられているところがやたらと熱く感じる。ただ、腹部を触れられているのに腹が痛い程疼いてくる。
「……っ、こわ……」
発情期のせいだけじゃない。
自分の身体の反応に心覚えがあった。ルムダンで初めてケイネスに出会った時の訳の分からない反応だ。
そうだった。分かっていたから会いたくなかったのに避けていたのに……っ、全部、発情期が台無しにしてしまう。
「コバ、怖いなら目を閉じていて。君が気持ちいいことを全部私がしたいんだ」
ケイネスの目を閉じろと言う言葉に従う。瞼を閉じると匂いが際立つ。いい匂いに全身が包まれている。
暫く互いの体温が馴染むように動かなかったが、腹部に置いていた手が身体の線を撫で始め胸を上下に擦った。
真っ平らな胸を彼が撫でる度に乳首が尖って、普段触りもしないそこが急に気になり始める。
「……???」
あまりに不思議な感覚がするため目を開けて自分の身体をみると、乳首が腫れあがっているみたいだ。胸全体撫でられているのにそのピンク部分が擦れるとジンジンする。
彼が落ち着かせようと胸を撫でている行為にすら異様に感じ始めた自分が恥ずかしくなる。
「ぁ……? も、もう、胸……、撫でなくていい……。するなら、さっさとして……」
「あぁ分かった」
そう言って、ケイネスが尖った乳首を軽く摘まんだ。
「ひゃっ! あ、ぁ……あ!?」
ビクンと身体が揺れた。
なにこれ、と驚いているうちにケイネスが摘まんだ乳首を指の腹で撫で捏ねられる。
「あぁっ! あっひ、ひぃ……!?」
ぴくんぴくんと身体が飛び跳ねる。可愛らしい喘ぎ方などとは違う。単純にその行為に目をグルグルさせてケイネスを見上げた。
見上げるとケイネスが俺を見つめて彼の長い髪が頬に当たった。
「もしかして、乳首を触ったことがないのかい?」
「……ぁ? こわ、い……、なに……?」
俺の口から涎が垂れていたのをケイネスは長い指で拭きとり舐めた。その濡れた指で乳首にゆっくり触れる。
「ぁ……やっ……!?」
乳首に触られただけで、陰茎からじわっとトロミのある液体が溢れる。
「やっぱり、知らなかったんだね。胸は男も感じる性感帯だ。君の反応は当たり前だから恥ずかしくないよ。発情期が始まってどうしていたんだい?」
どうしていた? と快楽でぼんやりしている頭では反応し辛くなる。
彼に触れられるとどうしても頭がはっきりしない。コバは眉間にシワを寄せて彼が言った言葉に反応しようとする。
「チンコ……、擦って、ちゃんと発散してた……のに……」
医者が言う通りにちゃんとしていた。なのに全然治まらなくて辛くて……と余計なことまで言い始めた。
そんな俺をケイネスは抱き上げて膝に跨らせた。背中をポンポンと撫でてくれる。
対面になることで、よりケイネスの匂いを嗅いでしまう。だけど、抵抗する意識が弱っていて素直にその匂いを嗅いだ。
「——……」
これだ……。
なんで、コレなんだよ。そう思いながらも離れられない。
ゆったり抱きしめられて夢現、優しく撫でてくれる身体に全てを預けた。
愛撫が再び始まっても、先ほどのように恐怖は感じなかった。身体がビクビクする度にケイネスが抱きしめてくれる。より一層優しく触れてくる手が耳や指に大腿に触れる。
その手がようやく陰茎を擦り始めた。
「……い、たい」
ケイネスは優しくしか触れていない。
たた、自分で発散するために乱暴に擦っていたから、微かに触れるのでも痛みが走る。
「……早く発情期を終わらせようと頑張ったんだね」
彼が労いの言葉をかけてくれるのをコクリと頷いた。
「そうか……じゃ、ここで気持ちよくなろうか」
跨るコバを抱きしめながら後孔の窄まりへと指で触れた。しっかりと閉じたそこはケイネスの指が撫でるとヒクッと蠢いた。
「……おや? ここ、普段触らないのかい?」
「?」
ケイネスの問いにトロンとした顔をして首を傾げた。
彼の表情を見てケイネスは微笑んだ。
「そう、もっと気持ちいいことを教えてあげよう」
後孔の縁を指でなぞって、トントンとノックした。
「ぁ……???」
その指が表面をノックする度、下腹部が疼いて身悶える。何をされているのか分からないのに、その指がそこに触れるのが気持ち良くて仕方がない。
「ぅう……あっはぁ……」
「あぁ、私が触ると蕾がヒクヒクして濡れ始めたよ」
窄みに触れると愛液が溢れ出て指を濡らしていく。
「君は本当にどこもかしこも食べてしまいたくなるほど愛らしい」
「あん……」
「無理やり抱いたりしないから、安心して欲しい。指を一本だけ挿れるよ」
ケイネスが俺の後孔に爪先だけを挿入した。濡れているそこはすんなりとケイネスの指を受け入れた。そのままぐぅっと指を根元まで挿入される。ヒクヒクと内部が収縮を繰り返している。
「ひゃ……あ、あ……ぁ……ぁっ」
その指の感覚に震えていると髪の毛に唇が当たる。
グジュ……グジュ……とよく濡れた内部を指で攪拌される。あまりの気持ちよさに意識を飛ばした。
強くいい匂いで目覚めた。
目を微かに開けると、浴室だった。ケイネスが自身を慰めて吐精していた。その間俺には触れなかった。
その後、俺の身体を洗い始めた。
王なのに……。
丁寧な手の動きが心地よくて、なのにそれすらも快感を呼ぶ。
「はぁ……ん」
俺の性器は萎えず勃ち上がっていた。ぼんやりとケイネスを見上げると彼はゴクリと息を飲み、俺の身体を抱きしめた。
抱きしめられたまま、また指が後孔に挿いってきた。
「あぁん、……んあっぁあ」
俺は彼の愛撫に腰をくねらせ嬌声をあげ続けた。彼は俺の唇に何度も近づけては、自分の腕を噛んでいた。
次に俺が目覚めると頭がスッキリしていた。
横で椅子に腰掛けていたケイネスに視線を合わすことなく俯向いた。気まずそうな俺の様子にケイネスは部屋を出た。
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