親切な王子様は僕のおともだち。

モト

文字の大きさ
上 下
19 / 19

七夕 番外編※ 後

しおりを挟む
 ――結婚から約一年後。


 理仁と結婚しても日常生活に特に変わりのない真彩はいつも通り家事に勤しんでいた。

 悠真は小学校へと通い出してから周りの友達の影響もあって朔太郎や真彩にベッタリという事も減りつつあり、最近では強くなりたいと言って空手を習い始めていたりする。

「姉さん、そろそろ買い物行きますか?」
「あ、うん、そうだね。今日は悠真の習い事の日だし、帰ったらすぐおやつを食べられるように準備しなきゃだから今のうちに行こうか」

 今日は買い出しに行く日とあって、悠真が帰宅する時間までに済ませてしまおうと買い出しの付き添い担当でもある朔太郎が真彩に声を掛けていざ出掛けようというその時、

「うっ……」
「姉さん?」
「ご、ごめん、ちょっと気分が……」

 急な吐き気に襲われた真彩は心配する朔太郎の横を通り過ぎると急いでトイレに駆け込んだ。

 実は数日前から度々吐き気に襲われていた真彩。

 初めは季節の変わり目で体調を崩したのかもと思ったりしていたものの、熱や風邪の症状がない事、ふと思えば月のものが暫く来ていない事に気付く。

「……これって、やっぱり……」

 悠真を身篭った時にも同じような事があり、恐らく妊娠しているのではと直感した。

「……とりあえず、調べてみないとね」

 悠真の時は初めての事で戸惑いや不安しか無かったものの、二度目ともなると慌てたりはしない。

 トイレから出て部屋に戻った真彩は心配する朔太郎に笑顔を向け、

「ごめんね、もう大丈夫だから行こうか」
「姉さん、具合が悪いなら俺一人で行きますから、姉さんは休んでてください」

 そう声を掛けるけれど、具合が悪いなら一人で行くと朔太郎が言う。

「ううん、本当に大丈夫。私も買いたいものがあるから一緒に行かせて?」
「……姉さんが、そこまで言うなら……」

 本来ならばお願いしたいし有難い申し出ではあるものの、流石に検査薬を買って来てと頼めるはずもない真彩。

「けど、絶対無理しないでくださいよ?」
「うん、約束するね。ありがとう」

 何とか朔太郎を説得して一緒に出掛けることになった真彩は、朔太郎の運転する車でいつものスーパーへと向かう事になった。

 その夜、

「……やっぱり」

 悠真を寝かせて落ち着いた真彩は昼間買ってきた検査薬を使ってみると、思っていた通りの結果になったのだ。

「……でも理仁さんには、きちんと病院で確かめて貰ってから伝えよう」

 実は今、理仁は仕事で毎日帰りが遅く、朝も早い。

 何でも傘下組織で問題が発生したり経営の方でも様々な問題を抱えているらしく、常に忙しそうにしていてゆっくり話す時間が取れていない状況の中、万が一間違いだったりして迷惑を掛けたくないという思いから今はまだ話せないと考える真彩。

「とりあえず早めに病院に行って、検査してもらおう……」

 そう決めた真彩は今日も遅い理仁の帰りを待ちながらソファーで眠ってしまうのだった。

 翌日、真彩が目を覚ますといつの間にかベッドで眠っていたのだけれど、理仁の姿は無い。

「やだ、理仁さんが帰って来たの気づかなかった」

 帰宅に気づけなかったどころか、ソファーで眠ってしまった自分をベッドまで運ばせてしまった事にも申し訳なく思う真彩。

 急いでリビングへと向かうもやはり理仁の姿は無く、代わりに翔太郎が真彩を待っていた。

「おはようございます、真彩さん」
「おはよう翔太郎くん。理仁さんは……」
「兄貴はもう出ました。何でも今日は九州まで行く用事があるとか。帰りは明後日になるそうです」
「そう……なんだ」

 忙しい彼を労う事すら出来ていない真彩は自分の不甲斐なさに気落ちする。

 それに気付いた翔太郎が何かを言いかけた、その時、

「姉さん!」

 いつになく慌てた表情の朔太郎が、

「悠真、熱があるみたいで、姉さんを呼んでるッス」

 一緒の部屋で寝ていた悠真の体調が悪くて呼んでいると真彩に伝えに来た。
しおりを挟む
感想 33

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(33件)

ころころたまご

久しぶりに番外編あって嬉しかったです。
「はぁ…いい…」
と、余韻に浸りながら尊ぶってほんとにあるんだなと自分の行動に笑えました。
すごいよかったです。可愛い二人がこのままずっとイチャイチャしてすごせますように。

モト
2022.07.09 モト

ころころたまご様

番外編もお読みくださりありがとうございます。
小間が春への気持ちがどんどん大きくなっていく…そんな気持ちで書いていたのでご感想頂けてとても嬉しいです。
お越し下さりありがとうございました。

解除
そら豆太
2022.07.08 そら豆太

こっちも最高の七夕だぜ(≧∀≦)
番外編嬉しいですー。ありがとうございます‼️
相変わらず可愛い2人だけど色んな意味で大人になってく姿を見守れて楽しい。

モト
2022.07.09 モト

そら豆太様
お読みくださりありがとうございます。激甘な番外編でした。春が小間の色気にキャキャ喜んでましたね。ふふ。
お越し下さりありがとうございました。

解除
こここ
2022.07.04 こここ

2人がめちゃくちゃかわいい!!
最高でした!!
読めて良かったです♡

モト
2022.07.05 モト

こっこ様
お読みくださりありがとうございます。嬉しいご感想大変励みになります。甘々な二人でした。

解除

あなたにおすすめの小説

貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話

タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。 叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……? エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。