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番外編 七夕 前
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【大学2年生の彼等】
晴天の七夕は約5年ぶりだ。
近所の土手で七夕祭りが開催されるため、小間ちゃんを誘った。
「春君、バイト休んで大丈夫だったの?」
「うん!」
思わず全力で頷いてしまったのは、小間ちゃんが浴衣姿だから。俺は、浴衣を持っていないので白Tシャツにジーンズ姿。小間ちゃんが浴衣で来るなら、俺もそれに合わせて浴衣を用意しておけばよかった。
艶やかな黒髪、柔らかい表情の小間ちゃんと浴衣。スズランとかが似合いそうなイメージだ。なんて和装が似合う人なんだろう。
横目に何度も見ながら歩いていると、出店が並んでいる。たこやき、りんご飴、くじ引きに、焼きとうもろこし。
その出店を通りすぎると、大きい笹がある。
大きな笹の横には一般客用に厚紙の短冊とペンが用意されている。
「短冊に願い事を書こうか」
「うん!」
厚紙とペンを持って用意されている簡易テーブルに向かった。
俺は、チラリと小間ちゃんを見た。小間ちゃんの短冊は【春】の文字。俺の事を書こうとしていることに口が緩む。
「小間ちゃんは、なんて書くの?」
「——あ、——あぁあっ!? え、えーと何にしようかな」
何にしようって、もう俺の名前を記入しているよね。変な横やりいれちゃった。
「春君と皆が健康にいられるように——にしようかな」
絶対、それ、途中で考え直したよね。最初に考えていたのは何だったんだろう。……まぁ、その願いも小間ちゃんらしくていいなと思い、俺は俺で願いを書くことにした。
【小間ちゃんとずっと一緒にいられますように】
小間ちゃんとキスもエッチも沢山出来ますように。俺の性技がアップしますように。小間ちゃんが俺にメロメロになりますように。同棲できますように。
一言に願いをいっぱい込めた。
欲深い俺。
俺の書いた短冊を見た小間ちゃんは「あ……」と小さな声を漏らした。その後、何も反応なし。
引かれたかな。でもまぁ、真実の願いだし。
短冊を笹に括りつけた俺達は、出店でかき氷を買って土手で食べることにした。
ビルや建物の灯りで星は見えない。田舎だったら沢山星を見ることができたのだろうな。
「星、見えないね」
そう言って小間ちゃんを見ると、彼が俺を見つめていて、かぁあっと頬を赤らめた。
「…………」
小間ちゃんのそういう反応、本当、可愛い。
本当の友達だった頃は、全然俺を意識してなくてさ。付き合い始めてからどんどんそんな風な反応する姿を横で感じていくの。
控えめに言って最高だよね。悶える。その結果、益々彼にのめり込んじゃう。
シャクシャクとかき氷を食べる音。
小間ちゃんの食べているかき氷がイチゴ味だからか、シロップの赤さが唇にも付いちゃって、いつもより色っぽく見える。
暑いのにきっちり着込んでいる浴衣を乱したくなる。白い肌を俺に見せて欲しい。
しばらく無言で見つめ合った後、小間ちゃんがてへっと小さく笑う。
「あのね、僕もさっき同じこと書こうと思ったの。春君とずっといれますようにって——ふふ。でも、恥ずかしくなっちゃって誤魔化しちゃった」
「……そう、なんだ」
顔を赤らめながら、そんな嬉しい事言うの反則。人がいるのに今すぐ抱きしめたくて仕方がない。我慢出来なくてコッソリ、彼の唇に軽いキスをした。小間ちゃんの体質がキスを隠してくれるといいけど。
カキ氷を食べて互いに唇が冷たい。
こんな場所だから、すぐに離れた。
だけど、我慢出来なかったのは俺だけじゃなくて小間ちゃんもだった。
少ししか触れ合っていないのに、小間ちゃんが体育座りになった。
「————ぼ、僕……変」
「……」
浴衣から見えるうなじにゴクリと息を飲んだ。
「小間ちゃん、行こう」
「——へ!? あっ!?」
立ち上がって小間ちゃんの腕をぐいぐい乱暴に引っ張っていく。頭がのぼせ上って、家まで我慢出来そうになくて、近くのラブホテルに入った。
小間ちゃんはラブホテルに入ることが初めてで、凄く緊張していた。とは言え、俺も初めてなので使い勝手が分からない。
ソワソワしている小間ちゃんをベッドにどさりと押し倒す。
「ごめん、小間ちゃんが色っぽくて我慢出来そうにない」
晴天の七夕は約5年ぶりだ。
近所の土手で七夕祭りが開催されるため、小間ちゃんを誘った。
「春君、バイト休んで大丈夫だったの?」
「うん!」
思わず全力で頷いてしまったのは、小間ちゃんが浴衣姿だから。俺は、浴衣を持っていないので白Tシャツにジーンズ姿。小間ちゃんが浴衣で来るなら、俺もそれに合わせて浴衣を用意しておけばよかった。
艶やかな黒髪、柔らかい表情の小間ちゃんと浴衣。スズランとかが似合いそうなイメージだ。なんて和装が似合う人なんだろう。
横目に何度も見ながら歩いていると、出店が並んでいる。たこやき、りんご飴、くじ引きに、焼きとうもろこし。
その出店を通りすぎると、大きい笹がある。
大きな笹の横には一般客用に厚紙の短冊とペンが用意されている。
「短冊に願い事を書こうか」
「うん!」
厚紙とペンを持って用意されている簡易テーブルに向かった。
俺は、チラリと小間ちゃんを見た。小間ちゃんの短冊は【春】の文字。俺の事を書こうとしていることに口が緩む。
「小間ちゃんは、なんて書くの?」
「——あ、——あぁあっ!? え、えーと何にしようかな」
何にしようって、もう俺の名前を記入しているよね。変な横やりいれちゃった。
「春君と皆が健康にいられるように——にしようかな」
絶対、それ、途中で考え直したよね。最初に考えていたのは何だったんだろう。……まぁ、その願いも小間ちゃんらしくていいなと思い、俺は俺で願いを書くことにした。
【小間ちゃんとずっと一緒にいられますように】
小間ちゃんとキスもエッチも沢山出来ますように。俺の性技がアップしますように。小間ちゃんが俺にメロメロになりますように。同棲できますように。
一言に願いをいっぱい込めた。
欲深い俺。
俺の書いた短冊を見た小間ちゃんは「あ……」と小さな声を漏らした。その後、何も反応なし。
引かれたかな。でもまぁ、真実の願いだし。
短冊を笹に括りつけた俺達は、出店でかき氷を買って土手で食べることにした。
ビルや建物の灯りで星は見えない。田舎だったら沢山星を見ることができたのだろうな。
「星、見えないね」
そう言って小間ちゃんを見ると、彼が俺を見つめていて、かぁあっと頬を赤らめた。
「…………」
小間ちゃんのそういう反応、本当、可愛い。
本当の友達だった頃は、全然俺を意識してなくてさ。付き合い始めてからどんどんそんな風な反応する姿を横で感じていくの。
控えめに言って最高だよね。悶える。その結果、益々彼にのめり込んじゃう。
シャクシャクとかき氷を食べる音。
小間ちゃんの食べているかき氷がイチゴ味だからか、シロップの赤さが唇にも付いちゃって、いつもより色っぽく見える。
暑いのにきっちり着込んでいる浴衣を乱したくなる。白い肌を俺に見せて欲しい。
しばらく無言で見つめ合った後、小間ちゃんがてへっと小さく笑う。
「あのね、僕もさっき同じこと書こうと思ったの。春君とずっといれますようにって——ふふ。でも、恥ずかしくなっちゃって誤魔化しちゃった」
「……そう、なんだ」
顔を赤らめながら、そんな嬉しい事言うの反則。人がいるのに今すぐ抱きしめたくて仕方がない。我慢出来なくてコッソリ、彼の唇に軽いキスをした。小間ちゃんの体質がキスを隠してくれるといいけど。
カキ氷を食べて互いに唇が冷たい。
こんな場所だから、すぐに離れた。
だけど、我慢出来なかったのは俺だけじゃなくて小間ちゃんもだった。
少ししか触れ合っていないのに、小間ちゃんが体育座りになった。
「————ぼ、僕……変」
「……」
浴衣から見えるうなじにゴクリと息を飲んだ。
「小間ちゃん、行こう」
「——へ!? あっ!?」
立ち上がって小間ちゃんの腕をぐいぐい乱暴に引っ張っていく。頭がのぼせ上って、家まで我慢出来そうになくて、近くのラブホテルに入った。
小間ちゃんはラブホテルに入ることが初めてで、凄く緊張していた。とは言え、俺も初めてなので使い勝手が分からない。
ソワソワしている小間ちゃんをベッドにどさりと押し倒す。
「ごめん、小間ちゃんが色っぽくて我慢出来そうにない」
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