親切な王子様は僕のおともだち。

モト

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「わぁ、この紅茶美味しい」

僕は、春君のお家に遊びに行かせてもらっている。お洒落なデザイナーズハウスだ。外見もお洒落だけど、中にお邪魔すると、どこもかしこもお洒落で驚いた。
今、春君の部屋で出してくれた紅茶を飲んでいる。

「小間ちゃんが持ってきてくれたマカロンも美味しいよ。小間ちゃんのお母さんから電話きて驚いたけど」
「うん……恥ずかしいな。僕、友達の家に遊びに行くの初めてで。母さんが喜んじゃったんだ」

友達のお家に行くと親に言うと、一緒に大喜びしてくれたんだ。
これは、手土産持たせなきゃと母さんが近所で評判のマカロンを並んで買ってきてくれた。

「友達……」

横に座る春君が少し困っている。

「あ……、僕は春君の友達だと思っているんだけど、間違ってた?」

友達にも「友達になろう」っていう申請がいるとか……。でも、今さらすぎるよね。

心配げな僕の視線に気づくと、ニコリと笑ってくれる。

「俺は、小間ちゃんは友達よりもっと仲良しだと思っているし、そうなりたいな」

隣に座っている春君が僕の手を握ってきた。

「——ふわ……っ!? それって?」
「うん」

——それって、もしかして、親友とかいう存在なのかな!? 
友達が出来ただけでも嬉しいのに、親友だと思ってくれているなんて嬉しすぎてしまう。

「ふふふ……、ふふふ」

笑いが止まらなくて両手で口を覆ってニコニコする。
口を手で覆ったのは、もしかしたら僕が笑う顔が非常におかしいかもしれないと思ったからだ……あ、ほら。春君またぎゅぬッて目を閉じてすっぱい顔してる。


「……はぁ~、落ち着いた」
「……ん?」
「あぁ、うん。ごめん。こっちの話。あ、ほら、マカロン美味しいから小間ちゃんも食べて?」

そう言って、春君がマカロンを持って、僕の口に放り込んでくれる。
春君は、世話焼きだ。
最近、春君は僕にこうして あーん。してくれるようになった。男子高校で あーん。はどうなんだろうと思うけど、微笑まれると断れない。

「小間ちゃん、口の端に付いてる」
もぐもぐと食べていると、春君が僕の口の端をペロリと舐めた。

「ふぇっ!?」
「小間ちゃんって美味しい」
「それはしちゃぁ、ダメだよぉ。この前も言ったのに」
「ごめんね」

ごめんねといいながら、ニコニコしている春君。
んもぉ、言ってくれれば自分で汚れとるのに。

「あ、そうだ。この前、小間ちゃんにオススメした映画があるんだけど、一緒に観る?」
「うん!」

そう言って、彼がテレビをつけて用意をしてくれる。

「……あの、春君? これは?」

映画が始まると彼は僕の背後に移動して、僕を跨ぐようにして座った。

「ん? ごめんね。俺の部屋、背もたれないから長時間座っているの疲れるでしょ? 俺を背もたれにして?」
「え……、そんな」

彼の親切がこんなところまで……。
二時間ほどなら、背もたれなくても座っていられるのに、彼は僕の身体を自分の方に寄せて、腕を腹部に巻き付けた。

「ほら、楽でしょ」
「そうだけど、君に悪いよぉ」
「俺も抱き着いてた方がいいから。ね?」

これが、友達……親友同士の過ごし方なのかな。
彼はそれが普通のようであるし、きっと、僕が友達慣れしていないせいだと思った。







初めは変だと思っていたこともどんどん普通のように感じられてしまう。
「あ、ソース、口元についてるよ」
「ん。ありがとう」
「うん、どうしまして」

今日は、彼の部屋で買ってきたたこ焼きを食べていたんだけど、口にソースが付いていて、親切な彼は舐めとってくれる。そのあと、ホッペにチュッとされる。

ボディタッチが激しいのは、春君の祖父が外国人だからなんだと思うようになっていた。


「小間ちゃんって顔も口の小さい」
「目立たない顔しているよね」
「そんなこと……初めは思ったけど、今は全然思わないよ。凄い可愛いなって思ってる」

最近、春君が僕のことをよく可愛いと言うようになった。僕のようなモブ顔をそう言ってくれるのは、僕の内面を見てくれているような気がして嬉しかった。
どんどん春君と僕は距離が近くなって仲良しになっていっている気がする。

「小間ちゃん、耳たぶ大きくて可愛い」
「ん、ん。春く……」
カプ、カプと春君が僕の耳を甘噛みする。
友達と言うより、すっかり大型犬に懐かれたような感覚だよ。

「ひゃ、んんっ。く、くすぐったいよ。ふふ、春君? もう止めて」
「小間ちゃんの耳、美味しくて癖になる」
「んっあ、僕、人一倍、くすぐったがりだから駄目だよ。ね?」

これが、春君流の接し方だって、もうすっかり分かっちゃったけど、くすぐったくて我慢できない。
身体を捩ると、春君がようやく耳から口を離した。

「……明後日、うちの親、出張なんだけど、泊まりに来ない?」
「え? お泊り?」
「うん。小間ちゃんが泊ってくれたら、凄く嬉しい。お願い?」

チュッチュッと僕の頬にキスしながら、彼は言う。
春君のお家にお泊り、春君と眠りにつくまで楽しくお話……。友達とお泊り会だなんて無縁だと思っていたのに。

考えるだけ凄く舞い上がってしまう。

「小間ちゃん、凄い可愛い顔……。食べたくなる」

カプっと今度は僕の頬を甘噛みしてくる。

「わっ、ん、ん。春君っ、僕は食べ物じゃないよぉ」
「美味しい。泊ってくれないと食べる」
さらにカプカプ噛んでくるし、服の中に手が入ってきてくすぐられる。大きな手で脇腹を撫でられてゾクゾクする。

わ。これ、分かったって言うまでくすぐるつもりだぁ。春君の目を見ると、にやっと笑っている。

「ひゃっあはは……ん、ん……、くすぐったいよぉ! あは、もう、分かったよぉ」
「——ホント? 小間ちゃん……、僕の部屋に泊ってくれる?」


頷くと、春君が僕のことを益々強く抱きしめてくる。あー我慢できないって子供みたいに喜ぶので、彼は大袈裟だなぁっと思った。
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