上 下
11 / 16

勇者を攻めたい!

しおりを挟む
ピュッピュピュルルンパンチを放った。


だけど、俺のパンチはウィルの胸に当たる直前に腕を掴まれた。

「—————くそぉ。なんで、打たせないんだよぉ」
「いえ、別にいいんですよ? 何喘ぎさせられようと。ただ、そうする覚悟は魔王様にありますか?」


———へ? 喘がせる覚悟? このパンチの効果を知ってるのか? やっぱり、知っていてパンチを避けていたのか。


「我慢にも努力がいるんです。ただでさえ我慢しているんです。そんなパンチ受けたら、絶対に止まりませんよ。貴方のそのプリプリのお尻にちんこ突っ込んで三日三晩は寝床から離しません———の覚悟です」

「へ……」

「あれ? 言い方遠回しすぎて分かりませんか? 丁寧に拡張して何度も射精させた後に、俺のちんこを挿入します。俺のちんこの大きさに慣れる数回は先っぽだけ。そういう思いやりも努力で出来ると思うんです。でも、快楽パンチを受けたら努力できず、一番初めから奥まで突くかもしれません」


ベラベラと話すウィルにドン引きする。おい、俺は今、引いてるぞ———……。

「このパンチは下僕に出来る……はずなんだ。皆例外なく」

「へぇ。やってみますか? 俺は下僕化よりも我慢できなくなる方にかけますよ。俺が喘がされる倍以上喘がせますが」
「……」

俺は黙ると、場所を変えましょうと、ウィルは俺を抱きかかえて移動し馬に乗せた。
ウィルが剣を振り下ろすと突風による竜巻が起きた。それで目隠しになり、エルフの里からは無事に出ることが出来た。






次の目的地は、聞かなくとも何となく分かった。

ウィルが向かったのは、むかしに住んでいた洞窟だった。

ーーー…………やっぱり、お前が育て子か。ウィル……昔はウルと名乗っていた。あんなにひょろ長い子だったのに。


その洞窟の前に馬を止め、俺を降ろしてくれる。
ウィルは驚かない俺に苦笑いした。

「俺が、ウルだって気付いていたんですか?」
「……今、確信したばかりだよ」
「そう……忘れないでいてくれたんですね」

忘れられるわけないのに。ガタイが変わってイケメンになったから、すぐに分からなかっただけ。

それから、洞窟の中に案内してくれる。
洞窟内をくるりと見渡した。

「ふぁ……懐かしい」

俺が暮らしていた時より、洞窟内が大きくなってキレイになっていた。

なんだろう……。嬉しい。
ずっと、錆びれないように手入れしてくれたんだ。



すると後ろからフワリと抱きしめられた。

「子供の頃は、貴方の幸せの為に離れたんです。でも、無理だったし、俺が貴方を幸せにしたいので攻めにきました」

ウィルは身体を離し、正面から向き合った。腰を下ろし真剣な顔して見つめてくる。

「ラキさん、好きです」
「……うっ!」

俺は胸を押さえて慌てて下を向いた。なんだ!? 何が起きた。


【キュンを獲得しました】【勇者からキュンを与えられました】

ピロンピロンと俺の中の更新が止まらない! 


下を向いた俺にウィルが手をそっと握った。あ、あ……手ぇ、握られた! 手、ギュッとされた!!

「少しだけ俺の話をしていいですか?」
「あ……、あぁ、はい」

バクバクなる心臓が、それどころじゃないけど、ちゃんと話聞かなくちゃ!! そう、ウィルの顔をチラリと見た。
やっぱり……イケメンだぁ……。

【キュンレベルが上がりました】

もう、それいいから!!


「幼い頃、自分と離れた方がラキさんの幸せになれると思ったんです。エルフに会いに行けますし。でも魔王城に籠っていて腹が立ちました。なんの為に離れたんだろうって。こんな女々しい気持ちも少しだけあります」
「……」

ウィルが洞窟から出てすぐに、俺が魔王になり魔界が平和になった。
離れたウィルもそのことはすぐに耳に入った。

俺が魔王城に籠っている原因は、お人よしが原因だろうと思ったそうだ。それから、何度も俺を助けに来ていたらしいけれど、弱かったので何度も死にかけたそうだ。

だけど、ウィルの話はそこで終わった。


……多分、その後は、ウィルの努力があったんだよな? 努力レベル10000になる色々なエピソードを聞きたい。


それに、出会ってからも、何故正体を秘密にしてたのかとか、エルフの里で何を買い物していたのだとか、聞きたい事はいっぱいなのに。


「……エルフの里で、俺は、ウィルがあの弱い子供だったらいいなと思ったんだ」

その子が強くなって、俺に会いに来てくれたのならいいのに。それが、ウィルならいいのに。————と思った。

だけど、口には出さなかった。
俺は、いつまで経っても受け身で待つだけだったのが、恥ずかしいから。だけど、これからは……、今からは———…………

ウィルの手を離し、トタトタトタッと距離を置いた。



そして、真正面からウィルを睨んだ。

「覚悟はいいか。勇者!!」

俺は、再び両手を身体の前にファイティングポーズをとった。
ウィルは、目を見開いて、そして、参りましたね、と苦笑いした。



それで、俺は今までで一番強いパンチをその胸に打ち込んだ。


メロメロのメロメロにするために————————……。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

処理中です...