32 / 40
30.それは俺のもの
しおりを挟む
そんな俺を横目にカイザは淡々と状況報告し始める。
「団長、オオネズミの子供は爪が長く、鍵を自分で器用に開けたと推測されます。今後、ケージの鍵を増やすべきかと」
オオネズミの爪は細くて長い。子供の細い爪は鍵穴に入ったのだろう。
「検討する。それで、オオネズミ子供は?」
「どこかに身を隠して……」
その瞬間、生い茂る草陰から、オオネズミの子供が俺めがけて飛び掛かって来た。
「団長!」
それを見たカイザが慌てて俺の腕を掴んで、彼が前に出る。
すると、オオネズミの子は素早く身を草むらに隠れた。
姿を隠して敵を撹乱されるオオネズミの特有の戦い方だ。
カイザは力が強いだけだ。
戦闘スキルは俺の方が高い。長引かせず手っ取り早く捕まえたい。
他団員にも気をつけるように指示を出していると、もそっと草むらが動いた。
だが、オオネズミの子が現れたのは、その別方向、カイザの真横からだ。
「退け」
カイザの身体を押した。
彼を狙って一直線に飛び掛かって来たオオネズミの子は俺の腕に食らいついた。
「っ、団長!!」
カイザが叫んだが、冷静になるよう首を振る。
オオネズミは山奥で生息している。ただ、たまに迷って人里にやってくる。人里で見つけたら駆除対象だ。なぜなら、これらは農作物を荒らすし、噛まれて菌が身体に入ったら、鼠咬傷とか色々ヤバいからだ。
俺の腕を噛みついて離さないオオネズミの首根っこ掴むと、ジタバタと藻掻く。
カイザがすぐにオオネズミの口に木の棒を添えて、俺の腕からオオネズミを離し、ケージに入れた。
カイザは俺の腕を掴むと、袖をめくりあげた。水筒の水をかけたあと咬傷に吸い付く。
「おい!?」
彼はすぐ、ペッと血を吐き出し、また吸いつく。
「なにして、離せ!」
言うことを聞かない。腕を強く掴まれたまま吸引される。
「カイザ、よせ。菌が移ったらどうする!?」
「……」
ミフェルにカイザを離すように指示するが、彼はやめようとしない。
カイザは数分間ずっと俺の腕の傷口を吸い出して、ようやく口を離したら、何も言わず無言でうがいをする。
そして────……睨まれる。
「──傷つくんなっつっただろうが」
「……」
「勝手なことしやがって」
ドスの効いた声と口調、誰だお前って感じのカイザに流石の俺も固まる。
消毒液を腕にぶっかけられると、傷口が沁みる。
予測不可能な動きをするカイザは、次に俺の身体を軽々と抱き上げた。
また彼の怪力を目の当たりにした団員たちはポカンとしている。
「おい!? 一体何を考えている!?」
カイザの後ろ髪をぐいぐい引っ張りながら抵抗するが、そんなことではカイザの怪力はびくともしない。
抱き上げにくいと、抱きながらぎゅううぅっと腕を掴まれる。
「────……うるせぇ」
カイザの額が青筋たって、目が座って、顔の筋肉は怒りかストレスでヒクヒクと痙攣している。
「俺のに傷を付けやがって」
「っ!?」
いや、お前のもんじゃないだろ!? そう言った途端、カイザに口をがぶりと噛まれ、窒息死するかと思うようなジュボジュボとディープキスをお見舞いされた。
番のことは、驚きと苦しさで一瞬忘れていた。
「あ、団長とカイザってそういう仲……」というあっけにとられた団員の言葉を聞きながら、気絶することも出来ず、恥ずかしく抱き上げられて帰る事となった。
「団長、オオネズミの子供は爪が長く、鍵を自分で器用に開けたと推測されます。今後、ケージの鍵を増やすべきかと」
オオネズミの爪は細くて長い。子供の細い爪は鍵穴に入ったのだろう。
「検討する。それで、オオネズミ子供は?」
「どこかに身を隠して……」
その瞬間、生い茂る草陰から、オオネズミの子供が俺めがけて飛び掛かって来た。
「団長!」
それを見たカイザが慌てて俺の腕を掴んで、彼が前に出る。
すると、オオネズミの子は素早く身を草むらに隠れた。
姿を隠して敵を撹乱されるオオネズミの特有の戦い方だ。
カイザは力が強いだけだ。
戦闘スキルは俺の方が高い。長引かせず手っ取り早く捕まえたい。
他団員にも気をつけるように指示を出していると、もそっと草むらが動いた。
だが、オオネズミの子が現れたのは、その別方向、カイザの真横からだ。
「退け」
カイザの身体を押した。
彼を狙って一直線に飛び掛かって来たオオネズミの子は俺の腕に食らいついた。
「っ、団長!!」
カイザが叫んだが、冷静になるよう首を振る。
オオネズミは山奥で生息している。ただ、たまに迷って人里にやってくる。人里で見つけたら駆除対象だ。なぜなら、これらは農作物を荒らすし、噛まれて菌が身体に入ったら、鼠咬傷とか色々ヤバいからだ。
俺の腕を噛みついて離さないオオネズミの首根っこ掴むと、ジタバタと藻掻く。
カイザがすぐにオオネズミの口に木の棒を添えて、俺の腕からオオネズミを離し、ケージに入れた。
カイザは俺の腕を掴むと、袖をめくりあげた。水筒の水をかけたあと咬傷に吸い付く。
「おい!?」
彼はすぐ、ペッと血を吐き出し、また吸いつく。
「なにして、離せ!」
言うことを聞かない。腕を強く掴まれたまま吸引される。
「カイザ、よせ。菌が移ったらどうする!?」
「……」
ミフェルにカイザを離すように指示するが、彼はやめようとしない。
カイザは数分間ずっと俺の腕の傷口を吸い出して、ようやく口を離したら、何も言わず無言でうがいをする。
そして────……睨まれる。
「──傷つくんなっつっただろうが」
「……」
「勝手なことしやがって」
ドスの効いた声と口調、誰だお前って感じのカイザに流石の俺も固まる。
消毒液を腕にぶっかけられると、傷口が沁みる。
予測不可能な動きをするカイザは、次に俺の身体を軽々と抱き上げた。
また彼の怪力を目の当たりにした団員たちはポカンとしている。
「おい!? 一体何を考えている!?」
カイザの後ろ髪をぐいぐい引っ張りながら抵抗するが、そんなことではカイザの怪力はびくともしない。
抱き上げにくいと、抱きながらぎゅううぅっと腕を掴まれる。
「────……うるせぇ」
カイザの額が青筋たって、目が座って、顔の筋肉は怒りかストレスでヒクヒクと痙攣している。
「俺のに傷を付けやがって」
「っ!?」
いや、お前のもんじゃないだろ!? そう言った途端、カイザに口をがぶりと噛まれ、窒息死するかと思うようなジュボジュボとディープキスをお見舞いされた。
番のことは、驚きと苦しさで一瞬忘れていた。
「あ、団長とカイザってそういう仲……」というあっけにとられた団員の言葉を聞きながら、気絶することも出来ず、恥ずかしく抱き上げられて帰る事となった。
51
お気に入りに追加
927
あなたにおすすめの小説
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞


ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました
雪
BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」
え?勇者って誰のこと?
突如勇者として召喚された俺。
いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう?
俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる