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28.おっさんも切なくなるんだよ

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「団長、おはよーっす」
「……はよ」

 後ろからトムが大声に挨拶した。元気な挨拶は大変良い事だが、二日酔いの頭にはとてつもなく響く。

「なんすかぁ? もしかして二日酔いですか? 情けないなぁ、そんなことで仕事できます?」

 ────……コイツの声、高めでなんか物凄くイライラする。

 ごくごく真っ当なことを言われているだけだが、完全な八つ当たりで彼を睨んだ。


「あ、俺、胃薬あるっすよ。もし必要なら使ってください」

 ポンッと薬を手のひらに置かれる。
 すまん、いい奴。

「悪いな。もらっとく」
「いーっすよ。団長に恩売っとくと後で色々役に立ちそうっすから」

 胃薬一錠で恩を売ろうとするとは、なんて器が小さい。
 腹が立ちながらも有難くその胃薬を飲むと、午後には気分がマシになって来た。
 ミーティングでカイザとは顔を合わせたが、それ以降は作業場所が違うから会話することもない。
 
 このまま離れよう。
 カイザだって、それが分かっているから最後までやらなかった。
 今まで通り上司と部下。それくらいのポーカーフェイスはこの年になると難なく出来る。


「全くだらしがない」

 横で俺と言うお荷物の代わりにせっせっと書類整理なり他部署との打ち合わせをする副団長。

「貴方のような立場がそうでは部下に示しが付きませんよ!」
「悪いな」
「……」

 素直に謝れば、不思議そうな顔をされる。

「そういえば記憶をなくす寸前の貴方もそんな風に腑抜けていましたね」
「…………」

 だろうな。
 短期間だろうと、あんなに情熱的に責められて、俺は割とガチ目に惚れていた。
 ナガレ達の生態を本で読んだだけが原因じゃない。俺は別れを切り出す前まで、どうか違いますようにと半分祈るような気持ちでいた。
 だけど、別れを言い出したあの日。
 そう、丁度、記憶を失う一か月前のこと。
俺はどうにも我慢出来ず、現場が近いからと、カイザが暮らす村まで迎えに行った。
 大きな門があり、部外者は中の様子をみることは出来ない。

 門が開くのを待っていたその時だ
 ────……開いた門から村の様子が見えた。カイザはナガレと抱き合っていた。
 それだけじゃない。
 カイザは門前に俺がいることに気付くと、慌てて走り出して来て、自分の上着をスッポリ頭に被せた。

 門が見えなくなるまで離れると、彼は「見られなくてよかった」と言ったの



 はぁっとため息をつくと、副団長が書類をクルクル丸めて、パコンと人の頭を叩いた。それすらもどうでもよく反応しない。

「ちったぁ働いてくださいよ! ……あぁ、そうそう。先ほどカイザ・ヴィンジェスカが、一時預かりのモンスターの輸送先で困っていましたよ。様子を見に行ってください」
「…………今日はお前が行ってくれ」
「アンタ、自分が思っている以上に分かりやすい」

さっさと行ってこいと首根っこ掴まれて、追い出されてしまった。
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