記憶を失った半年間で俺の身に何が起きた!? ~俺の彼氏は調査団の中にいる!?~

モト

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13.ふたりっきり

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 ミシェルの言葉に固まった。

 ……今夜、家にくる?

「……は? ……あ、おい、勝手に決めるな、無理だ!」
「はい、遅いです。もう決めました」
「決めたって……」

 3秒遅れただけなのにタイムアウトらしい。

「楽しみにしています」

 若さ故の強引さなのか、俺の言うことを聞かず、今夜の約束をしたままミフェルが去っていこうとする。

「待ってくれ、今日は都合が悪いからな!」

 約束出来ないからとデカい声を出した。しかしそれに対して彼から返事はなかった。



◇◇


「お疲れ様でしたー」
「お疲れーっす」

 お先に失礼しますと声をかけてくる同僚や部下に「気をつけてな」と手を振る。俺の机には山積みの書類が置かれ、残業が一目瞭然。

「団長~、そんなに仕事押し付けられて大丈夫ですか? 可哀想っすね!」

 トムが心配して声をかけてくる。この後、自分は美女とうきうきデートだそうで、他人を思いやれる気持ちで満ちているようだ。

「んーまぁ、今日一日あれば大丈夫だろう」

 実は、俺の方から副団長に仕事をふってくれと頼んだのだ。
 たんまりと仕事を寄越してきたが、家に帰れない口実に丁度よく、トムに問題ないと声をかけた。


 そして、俺が「お疲れ!」と声をかけた先には、ミフェルの姿もあった。

 約束をなんて見れば分かるだろうな。

 でも、俺だってちゃんと断ったし。優柔不断で悪いが、今日は勘弁してくれと心の中で言い訳を並べた。



 皆が帰り終えた後、真面目な俺は書類整理に資料室へ向かった。
 普段の俺は外回りばかりして書類整理や地味な作業を副団長に任せっきりな自覚がある。副団長が、ここぞとばかりに仕事をふってきたのは、俺の行いのせいといえよう。


 あれやこれややり始めると終わらない作業を中断して、資料室を出て食堂に向かう。もう灯りもついていない食堂に一食置かれていた。
 残業する予定だったから、食堂のおばちゃんに頼んでおいたのだ。

 それを手に取り、団長室へ向かっていると、灯りのついた部屋があった。

 消し忘れか?
 誰もいないと思った部屋に入ると、机の下に誰かしゃがんでいた。黒い髪の毛がモソモソと動く。

「────……あれ、カイザ?」
「……団長」

 ここは、モンスターを一時預かりしている専用部屋だ。獣臭く、俺にとってはいい匂いの部屋だ。


「残業手当つかないんだから早く帰れよ」

 カイザ以外は誰もいない。
 彼はモンスターに好かれる性質を持っているから、世話を焼いていたのかもしれない。

「あんまり世話すると情が出るぞ……とまぁ、そのモンスターなら大丈夫か」
「……」

 そう言って近づくと、カイザはふいっと視線を逸らした。
 どうやら、俺はカイザに嫌われているらしい。

 気まずいなと思いながら、カイザが見ていた大きな水槽を見た。
 そこには、手のひらサイズのナメクジが数匹いた。

 ただの大きなナメクジじゃなくて、立派なモンスターだ。
 いつもは海のど真ん中に生息しているのだが、沿岸部での出没が多くなったと報告があり、捕獲した。
 大量に出没するようであれば、冒険者ギルドに討伐依頼しなくてはいけない。
 だが、まずなぜ沿岸部に出没するようになったか調査する必要がある。場合によっては游泳禁止処置を……。


「こいつがどうかしたのか?」

「……はい。実は今朝見た時より、三匹足りないんです」

 モゾリ。
 その報告を受けた時、ズボンの中に気色悪い何かが這ってくるのを感じた。
    
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