【完結済】妹と浮気していた婚約者が婚約破棄を突きつけてきました……その人、私と入れ替わってた隣国の王女様だけど

玖遠紅音

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4話 謎すぎる理不尽理論

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 二日後の夜、私は当主であるお父様と共に王城へと召喚された。

 ヴェネットとの入れ替わりは一時中断となり、あの後ようやく事態を呑み込んで涙を流してしまった私に静かに寄り添ってくれていた二人も「やるべきことができた」と言って私を見送ってからどこかへ行ってしまった。

 現在の私のメンタルはボロボロだ。
 裏切られたショック。王族との関りが無くなってしまったことへの申し訳なさ。セルキーの逆切れ報復への恐怖など、様々な感情が織り交ざって胸が苦しい。
 お父様は「大丈夫だ。お前は悪いことをしていないんだろう?」と慰めてくれたけど、それでも吐きだしそうな自分を押さえつけるのに精いっぱいな私には響かない。

 今からどんな目に合うのか。どんな未来が待っているのか。
 それを考えるだけでまた泣いてしまいそうだった。

 王城へと足を踏み入れると、私とお父様はそのまままっすぐ謁見の間へと通された。 
 荘厳な光景と、玉座に座る初老の国王陛下の威圧感も相まって、私の心臓は今までにないくらい激しい鼓動を刻んでいる。

 辛うじて頭に残っていた作法に従い、お父様と共に膝をつく。

「面を上げよ。此度は我が息子セルキーと、そなたの娘ミリアの婚約に関して重大なる問題が発生したと聞く。セルキーよ。偉大なる神の名に誓い、余と皆に真実のみを語るが良い」

「はい」

 促されるがままに、兄弟と並んでいた第三王子セルキーが前へ出る。
 その手には一枚の紙が握られていた。
 彼はそれを突き出すように構えると、大きく息を吸って語り出した。

「この度、私セルキーはこの場にて重大なる罪を告白せねばなりません」

 彼が語り始めたのは、己の罪を告白し赦しを得るための告解――ではなかった。

「我が婚約者ミリア=アルネスティアは、私が以前よりいずれ家族となる者として親交を深めていた彼女の妹マリィ=アルネスティアとの間に不適切な関係があると誤認し、私を激しく罵ったばかりか、彼女自身もまた、平民街のとある甘味処で働く若き少年と関係を持っていたことが明らかとなりました」

「……ぇ?」

 セルキーが語り出したその内容を前に、私は言葉を失った。
 彼は一体何を言っているのだろうか。
 ありえない。私は浮気なんてしていないし、彼の浮気現場を目撃したヴェネットが嘘を言っているはずもない。
 確かにあの子の買い出しを何度か手伝ったことはあるけど、いくらなんでもそれだけで浮気というのは暴論過ぎる。

「して、その甘味処の少年とやらも証人として呼び立てたはずだが、姿が見当たらぬな」

「……彼は己の罪を深く悔い、自らの身をもって償いを行いました。彼を呼び出しに向かった際には、事実を認める旨と謝罪が書き込まれた遺書を……」

 そう言って彼は懐から一枚の紙を取り出し、陛下に差し出した。
 陛下はそれを改めると、ふむ、と頷き紙を返した。

「裁きの場に現れず、罪を自ら告白することもなく逝ってしまったのは非常に残念であるが、それが事実なのであればその者の意も汲まねばなるまいな」

「はい。しかして彼女は仮にも貴族の身分を与えられた身。故にその身分をはく奪し、しかるべき地にて深く反省を促すのが妥当かと恐れながらも進言いたします」

「余も同様の処罰が相応しいと考える。ミリア=アルネスティア。我が息子に相応しき淑女だと思ったのだが、残念だ」

「では早速――」

「――お待ちください陛下!」

 私を連れていくべく近づいてきた兵士たちを見てお父様が声を上げようとしたけど、その前に大きな声を響かせた人がいた。
 セルキー殿下をもう少し大人にしたと言った容姿の彼は、第一王子殿下だ。
 次期国王と名高い人望と器を持つ彼が、この決定を良しとしなかったのだ。

「どうしたセティアよ。貴様は我が決定に異を唱えるというのか」

「恐れながら。裁きの場というのは、双方の主張を聞くべきものであります。我が弟セルキーの言い分のみではなく、このミリア=アルネスティア嬢にも事情を聴くべきかと」

 そう進言すると、セルキーの表情は「面倒なことを……」とでも言いたげなくらい苦々しいものになる。
 一方で陛下は僅かにも表情を変えることはない。

「ふむ。いいだろう。ミリア=アルネスティアよ。申してみるが良い」

「ぇ……ぁ、う……」

 セティア殿下のおかげで、私にも弁明の機会が設けられた。
 でも、もう、私には耐えられなかった。
 頭の中は深い絶望に塗りつくされ、思考は完全に停止。
 ただ無様に涙を流しながら、壊れた人形のように口をパクパクとさせることしかできなかった。

 お父様が必死に肩を揺らして呼び掛けてきたけど、もう私は……

 段々と声が遠くなり、私の意識はそのまま闇に落ちていった。


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