43 / 43
エピローグ 黎明の剣士
しおりを挟む
あれから2日が経った。
現在のクロムはというと、
「――ったたたたた!」
「ほーら、無理しない。あーん」
「うぅ……んく、美味しい」
ギルド関連の病院、その病室の一角で寝たきりのままルフランにフルーツを食べさせてもらっていた。
しかもその体や顔つきは元の13歳の少年のそれに戻っており、2日前に見せた大人の姿から大きく劣化してしまっていた。
どうやらあれは妖刀が示したクロムの可能性の一つであり、持ち主のピンチに反応して、妖刀を扱うにあたって最善の姿になるように強引にクロムの肉体を作り変えた、と言った形らしい。
当然いつまでもそんな状態を続けていたらクロムの体が耐えきれず崩壊してしまうため、全てが終わったと同時に再び元の姿へと戻されたのだ。
その反動でクロムは全身筋肉痛になりこうして全く身動きが取れない状況になってしまった。
ただこれはもう少し経てば回復するらしいので、それまでの辛抱だ。
「ようクロム。見舞いに来てやったぞ」
「大丈夫? クロムくん」
「大丈夫じゃないですよぉ……」
病室のドアがやや乱暴に開けられ、アルファンとエルミアの二人がやって来た。
エルミアが見舞いの品を近くのテーブルに置いたのだが、その箱には"フェーデフルール"の文字が刻まれていた。
それは王都でも有名なスイーツカフェのお店の名だ。
「大金星だったな小僧。悪魔の塵に侵された奴に勝つなんてよ」
「結局なんなんですかアレは。服用するだけであんな強くなる薬なんて反則でしょうあんなの」
「……あれはとある過激派宗教団体が秘密裏に開発した劇薬だ。飲めば一時の間絶大な力を得られるが、最終的に人格が破壊されて魔物に近しい存在に成り下がる」
「一応その宗教団体は取り壊しになって、悪魔の塵も回収したはずなんだけどね……ちなみに王国では飲むのはもちろん、所持してるだけで大罪だよ」
「…‥不穏ですね」
「ああ。だがまあ今はそんなこと気にすんな。早く体治して復帰して来い。そしたらお前らはその瞬間からAランク冒険者だ」
「――はい!」
その言葉を聞き、クロムは嬉しそうに返事をした。
それは第二の師として仰いだ男から与えられた勲章だ。
Aランク冒険者。それはこの国において最強格の冒険者の一人に数えられる事を意味する。
つまり、世界最強の剣士を名乗る旅路の、記念すべき第一歩である。
(妖刀も正式に僕のものになったし、これで心置きなくこの刀と剣の道を極められる)
「よーし、これからも頑張るぞ! ってててて……」
「こーら! 暴れないの!」
締まらないなぁ、と思いながらも、クロムとルフランの二人は顔を見合わせ、笑い合った。
そうだ。自分はまだ13歳。
まだまだ子供として数えられる年齢だ。
今はまだ、こうして周囲の人たちの優しさに甘えながら成長してもいい時代なのだ。
でもやがていつかは、この手で大切な人を全て守り切れるような、そんな理想的な剣士になれるように、今は一歩ずつ進んでいく。
魔法使いになれなかった少年は、一振りの刀と共に追い出された事で、最高の出会いを経て、最強の剣士へと成り上がる。
そんな英雄譚がいつの日か描かれるといいな。
そんな妄想を抱きながら、幼き剣士は眠りについた。
現在のクロムはというと、
「――ったたたたた!」
「ほーら、無理しない。あーん」
「うぅ……んく、美味しい」
ギルド関連の病院、その病室の一角で寝たきりのままルフランにフルーツを食べさせてもらっていた。
しかもその体や顔つきは元の13歳の少年のそれに戻っており、2日前に見せた大人の姿から大きく劣化してしまっていた。
どうやらあれは妖刀が示したクロムの可能性の一つであり、持ち主のピンチに反応して、妖刀を扱うにあたって最善の姿になるように強引にクロムの肉体を作り変えた、と言った形らしい。
当然いつまでもそんな状態を続けていたらクロムの体が耐えきれず崩壊してしまうため、全てが終わったと同時に再び元の姿へと戻されたのだ。
その反動でクロムは全身筋肉痛になりこうして全く身動きが取れない状況になってしまった。
ただこれはもう少し経てば回復するらしいので、それまでの辛抱だ。
「ようクロム。見舞いに来てやったぞ」
「大丈夫? クロムくん」
「大丈夫じゃないですよぉ……」
病室のドアがやや乱暴に開けられ、アルファンとエルミアの二人がやって来た。
エルミアが見舞いの品を近くのテーブルに置いたのだが、その箱には"フェーデフルール"の文字が刻まれていた。
それは王都でも有名なスイーツカフェのお店の名だ。
「大金星だったな小僧。悪魔の塵に侵された奴に勝つなんてよ」
「結局なんなんですかアレは。服用するだけであんな強くなる薬なんて反則でしょうあんなの」
「……あれはとある過激派宗教団体が秘密裏に開発した劇薬だ。飲めば一時の間絶大な力を得られるが、最終的に人格が破壊されて魔物に近しい存在に成り下がる」
「一応その宗教団体は取り壊しになって、悪魔の塵も回収したはずなんだけどね……ちなみに王国では飲むのはもちろん、所持してるだけで大罪だよ」
「…‥不穏ですね」
「ああ。だがまあ今はそんなこと気にすんな。早く体治して復帰して来い。そしたらお前らはその瞬間からAランク冒険者だ」
「――はい!」
その言葉を聞き、クロムは嬉しそうに返事をした。
それは第二の師として仰いだ男から与えられた勲章だ。
Aランク冒険者。それはこの国において最強格の冒険者の一人に数えられる事を意味する。
つまり、世界最強の剣士を名乗る旅路の、記念すべき第一歩である。
(妖刀も正式に僕のものになったし、これで心置きなくこの刀と剣の道を極められる)
「よーし、これからも頑張るぞ! ってててて……」
「こーら! 暴れないの!」
締まらないなぁ、と思いながらも、クロムとルフランの二人は顔を見合わせ、笑い合った。
そうだ。自分はまだ13歳。
まだまだ子供として数えられる年齢だ。
今はまだ、こうして周囲の人たちの優しさに甘えながら成長してもいい時代なのだ。
でもやがていつかは、この手で大切な人を全て守り切れるような、そんな理想的な剣士になれるように、今は一歩ずつ進んでいく。
魔法使いになれなかった少年は、一振りの刀と共に追い出された事で、最高の出会いを経て、最強の剣士へと成り上がる。
そんな英雄譚がいつの日か描かれるといいな。
そんな妄想を抱きながら、幼き剣士は眠りについた。
48
お気に入りに追加
311
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ユウ
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
弓使いの成り上がり~「弓なんて役に立たない」と追放された弓使いは実は最強の狙撃手でした~
平山和人
ファンタジー
弓使いのカイトはSランクパーティー【黄金の獅子王】から、弓使いなんて役立たずと追放される。
しかし、彼らは気づいてなかった。カイトの狙撃がパーティーの危機をいくつも救った来たことに、カイトの狙撃が世界最強レベルだということに。
パーティーを追放されたカイトは自らも自覚していない狙撃で魔物を倒し、美少女から惚れられ、やがて最強の狙撃手として世界中に名を轟かせていくことになる。
一方、カイトを失った【黄金の獅子王】は没落の道を歩むことになるのであった。
自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
おー! これも面白かったー!
|ूoωo。)⁾⁾
お誘いを受けるって、いいんだけど、お互いの得意武器とかロール(役割)とか、確認なしに決めちゃうの?(੭ ᐕ)?
剣士と戦士、剣士と魔法士、剣士と闘士、組み合わせで違うんじゃ⋯⋯?
どうなるんでしょう?
|ू ´ー`*)₎₎₎