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第六章 第三次・召喚勇者
100.『重力支配』対『魔王』
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冗談抜きに山のような、巨大な紫色のドラゴンと、Sランクスキル『重力支配』を操る銀髪の男、鬼堂桜樹が向かい合う。
「リベンジだ。あの時の痛みは忘れてねェ。絶対にぶち殺してやるッ!!」
その大きさから、かなり離れたところで戦いたかったのだが、相手が相手であったため好都合だ。
何せ、彼は性格上、そのドラゴンを見れば血相を変えて向かってくるだろうし、後は遠くへと引きつけるだけ。これで誰にも迷惑をかけずに、存分に力を振るえるという訳だ。もちろん、リディエの街への被害は気にする必要があるが。
「前のオレとは違う。もうあんな攻撃で殺されるなんて事はねェ。さァ、楽しく殺し合いと行こうじゃねえかッ!!」
『少しばかり強いスキルを手に入れた如きで、この「魔王」である我に勝てると思うな。そもそもの「決定的な差」を目に焼き付けろ』
プレシャは言い放つと、以前彼を木っ端微塵に焼き消したその一撃を放つ。頭上、足下から同時に放たれる、全てを焼き消すブレス。
プレシャは魔法陣に向けて紫色のブレスを放つと、彼を一瞬で覆い尽くした。
――しかし。その影から。
「前のオレとは違うって言っただろうがッ! もう、そんな攻撃じゃあオレは止められねェ」
そう言って、彼はゆっくりと、プレシャの元へと歩く。周囲の重力を完全に支配した彼に、敵はない。
『グオオオオォォォォォォォッ!!』
プレシャの魔力を込めた、ビームのような超速のブレスも、重力によってふわりと挙動を変えられる。彼へと命中する事はない。
「叫べ。そして絶望しろ。オレを敵に回した事をなァ!」
余裕の表情で、一歩一歩と歩いてくる彼の歩みを止めることはできない。どんな攻撃も逸らし、地へと叩き落とす彼には、攻撃を当てれば勝てるが当てる事ができない。
どん詰まり。物理的な攻撃では彼に傷一つ付けることはできない。
『確かに二日前の貴様とは違うようだな。……しかし、あれが我の全てだと、本気で思うのか?』
「ここに来て強がりかァ? オレにはどんな攻撃も通用しねェ。例え爆弾だろうが、ミサイルだろうが、オレに当たる事はねェ」
確かに、物理的な攻撃では彼には何もしても無意味だろう。
――なら。
『「重力」一つ支配した如きで調子に乗るならそれも良いだろう。しかし、たった一つのスキルを支配しただけの貴様が、「魔法」という概念すらも支配できる我に敵うかな』
プレシャは魔族の王。魔力で栄えるグランスレイフ唯一の都市、マーデンディアを築き上げる事が出来るくらいには、「魔法」という物を理解し、支配し、使いこなせるのだ。
『確かに、この姿の我に魔法を使わせるのは名誉な事だ。誇ると良い。――「グラビティ・ゼロ」』
そう言いながら、紫色のドラゴンが詠唱した魔法は――『グラビティ・ゼロ』。……重力魔法だった。
彼の周りに展開されていた重力による無敵のバリアは、みるみるうちに強度を減らしていき――ゼロになる。
掻き消され、無になり、バリアを失った彼は――
「なッ!? クソがああああぁぁぁぁぁッ!!」
叫ぶと、さらに力を増していく。……そして、微力ずつではあるが、彼の力は増大していき――
「テメェにだけは負けたくねえッ!! オレは、こんな所で負けられねえんだよォォォォォォォッ!!!!」
その叫びに呼応するように、彼のスキル――『重力支配』は、さらに力を強め、プレシャの魔法『グラビティ・ゼロ』を掻き消した。
再び重力のバリアを纏った彼は、不敵な笑みで言う。
「『魔王』とか言ったなァ? の割には大した事ねえじゃねえかッ! ククッ、はははははははははッ!! そのままテメェは何も出来ずにオレに殺される運命だッ!! 大口を叩いた事を恥じながら死んでいくと良いッ!! ははははははははははははははッ!!」
魔王の力をも超えた彼、鬼堂桜樹を前にして、プレシャは――
『「重力」では貴様の方が格上だったようだな。しかし言っただろう。貴様は所詮たった一つのスキルを支配しただけだと』
「リベンジだ。あの時の痛みは忘れてねェ。絶対にぶち殺してやるッ!!」
その大きさから、かなり離れたところで戦いたかったのだが、相手が相手であったため好都合だ。
何せ、彼は性格上、そのドラゴンを見れば血相を変えて向かってくるだろうし、後は遠くへと引きつけるだけ。これで誰にも迷惑をかけずに、存分に力を振るえるという訳だ。もちろん、リディエの街への被害は気にする必要があるが。
「前のオレとは違う。もうあんな攻撃で殺されるなんて事はねェ。さァ、楽しく殺し合いと行こうじゃねえかッ!!」
『少しばかり強いスキルを手に入れた如きで、この「魔王」である我に勝てると思うな。そもそもの「決定的な差」を目に焼き付けろ』
プレシャは言い放つと、以前彼を木っ端微塵に焼き消したその一撃を放つ。頭上、足下から同時に放たれる、全てを焼き消すブレス。
プレシャは魔法陣に向けて紫色のブレスを放つと、彼を一瞬で覆い尽くした。
――しかし。その影から。
「前のオレとは違うって言っただろうがッ! もう、そんな攻撃じゃあオレは止められねェ」
そう言って、彼はゆっくりと、プレシャの元へと歩く。周囲の重力を完全に支配した彼に、敵はない。
『グオオオオォォォォォォォッ!!』
プレシャの魔力を込めた、ビームのような超速のブレスも、重力によってふわりと挙動を変えられる。彼へと命中する事はない。
「叫べ。そして絶望しろ。オレを敵に回した事をなァ!」
余裕の表情で、一歩一歩と歩いてくる彼の歩みを止めることはできない。どんな攻撃も逸らし、地へと叩き落とす彼には、攻撃を当てれば勝てるが当てる事ができない。
どん詰まり。物理的な攻撃では彼に傷一つ付けることはできない。
『確かに二日前の貴様とは違うようだな。……しかし、あれが我の全てだと、本気で思うのか?』
「ここに来て強がりかァ? オレにはどんな攻撃も通用しねェ。例え爆弾だろうが、ミサイルだろうが、オレに当たる事はねェ」
確かに、物理的な攻撃では彼には何もしても無意味だろう。
――なら。
『「重力」一つ支配した如きで調子に乗るならそれも良いだろう。しかし、たった一つのスキルを支配しただけの貴様が、「魔法」という概念すらも支配できる我に敵うかな』
プレシャは魔族の王。魔力で栄えるグランスレイフ唯一の都市、マーデンディアを築き上げる事が出来るくらいには、「魔法」という物を理解し、支配し、使いこなせるのだ。
『確かに、この姿の我に魔法を使わせるのは名誉な事だ。誇ると良い。――「グラビティ・ゼロ」』
そう言いながら、紫色のドラゴンが詠唱した魔法は――『グラビティ・ゼロ』。……重力魔法だった。
彼の周りに展開されていた重力による無敵のバリアは、みるみるうちに強度を減らしていき――ゼロになる。
掻き消され、無になり、バリアを失った彼は――
「なッ!? クソがああああぁぁぁぁぁッ!!」
叫ぶと、さらに力を増していく。……そして、微力ずつではあるが、彼の力は増大していき――
「テメェにだけは負けたくねえッ!! オレは、こんな所で負けられねえんだよォォォォォォォッ!!!!」
その叫びに呼応するように、彼のスキル――『重力支配』は、さらに力を強め、プレシャの魔法『グラビティ・ゼロ』を掻き消した。
再び重力のバリアを纏った彼は、不敵な笑みで言う。
「『魔王』とか言ったなァ? の割には大した事ねえじゃねえかッ! ククッ、はははははははははッ!! そのままテメェは何も出来ずにオレに殺される運命だッ!! 大口を叩いた事を恥じながら死んでいくと良いッ!! ははははははははははははははッ!!」
魔王の力をも超えた彼、鬼堂桜樹を前にして、プレシャは――
『「重力」では貴様の方が格上だったようだな。しかし言っただろう。貴様は所詮たった一つのスキルを支配しただけだと』
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