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第五章 グランスレイフ
76.代償の果てに
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重いまぶたを開けると……そこは部屋の天井だった。
彼女自身は使った事がないが、そもそも彼女の城の一室であるため、すぐにここがどこなのかは理解できた。
――魔王城の医務室。
ぼやける記憶をなんとか振り絞り、あの時何があったのかを思い出す。
……ゴーレムの群れが攻めてきて。それを止める為に向かい、ダークエルフの男と戦い。歯が立たなくて、それをただ見守るだけで――
「……そうだ、我は……あのダークエルフとの戦いで我慢出来ずに。力を無理矢理使って……ゲホッ、ゴホォッ」
全身が痺れるように痛いし、息をするのも苦しい。これが無理矢理に使った力の代償という訳か。
今、彼女がここにいるという事は……無事にダークエルフを倒すことが出来、マーデンディアを守り切ることが出来たのだろう。……それはよかった。
医務室にある時計には、時刻だけではなく月日も表示されている。それを見る限り、あれから二日も眠ってしまっていたらしい。
「……皆は無事なのだろうか」
ふと気になって、起き上がろうとした瞬間。待っていましたと言うように、コンコンッ、というノックの音の後に医務室の扉が開かれる。
タイミングよく医務室へと入ってきたのは――
「――プレシャさん、目が覚めたんだね」
梅屋唯葉。魔人へと改造された人間で、元の人間へと戻る為、兄と共にここ、グランスレイフまでやってきた少女だ。
「……ああ。我はあの後……。迷惑を掛けたな」
「ううん。あの時、私たちだけじゃとても敵わなかったから。助けられたのはこっちだよ。ありがとう」
唯葉は、優しい声でプレシャに言う。そもそも、巻き込んだのは自分なのにと思うと、胸が苦しくなる。
そんな唯葉を見て、プレシャはどこか、違和感を感じる。
「そ、そんなに見つめて……どうしたのプレシャさん。……あっ、もしかして」
そうだ。プレシャの感じた違和感。それは――目が黒かったこと。
プレシャが初めて会った時からずっとあの目は紅かったので、どこか変な感じがする。
そして、目が黒くなった……正確には、黒に戻ったということは。
「……人間に戻ったのだな」
「うん。あの戦いの次の日に、ラヴビーさんの所へ行ったの。……人間に戻れたのも、プレシャさんのおかげ。本当にありがとう」
「……我は特にお礼のされるような事はしていないし、むしろ助けられてばかりだったな」
自身の無力さが悔しいが、梅屋正紀に梅屋唯葉と出会ってから、助けられてばっかりだ。
そもそもの出会ったきっかけが、クラーケンに苦戦していた所を助けてもらった所から始まり、ゴーレムの群れだって、彼らがいなければ防ぎきることは出来なかっただろう。
今こうして生きているのが不思議なほどだ。
……正直、人間には嫌な思いしか無かった。過去、その力を恐れられ、魔石を奪おうとした人間を。
しかし、それは一部の人間がそうであっただけだ。それなら魔族であっても、今回のように敵対する事だってあるし、人間と魔族なんて垣根、実に下らないものなんだなと思う。
そんな簡単な事を、彼らに教えられた。……これ以上、何かから教えられることなんてもうないのかと思っていたが……まだまだ未熟な物だな。
それを踏まえて、プレシャは『ある決意』を胸に秘める。
「――唯葉。一つ、相談があるのだが……出来れば、正紀も呼んできて貰えるか」
彼女自身は使った事がないが、そもそも彼女の城の一室であるため、すぐにここがどこなのかは理解できた。
――魔王城の医務室。
ぼやける記憶をなんとか振り絞り、あの時何があったのかを思い出す。
……ゴーレムの群れが攻めてきて。それを止める為に向かい、ダークエルフの男と戦い。歯が立たなくて、それをただ見守るだけで――
「……そうだ、我は……あのダークエルフとの戦いで我慢出来ずに。力を無理矢理使って……ゲホッ、ゴホォッ」
全身が痺れるように痛いし、息をするのも苦しい。これが無理矢理に使った力の代償という訳か。
今、彼女がここにいるという事は……無事にダークエルフを倒すことが出来、マーデンディアを守り切ることが出来たのだろう。……それはよかった。
医務室にある時計には、時刻だけではなく月日も表示されている。それを見る限り、あれから二日も眠ってしまっていたらしい。
「……皆は無事なのだろうか」
ふと気になって、起き上がろうとした瞬間。待っていましたと言うように、コンコンッ、というノックの音の後に医務室の扉が開かれる。
タイミングよく医務室へと入ってきたのは――
「――プレシャさん、目が覚めたんだね」
梅屋唯葉。魔人へと改造された人間で、元の人間へと戻る為、兄と共にここ、グランスレイフまでやってきた少女だ。
「……ああ。我はあの後……。迷惑を掛けたな」
「ううん。あの時、私たちだけじゃとても敵わなかったから。助けられたのはこっちだよ。ありがとう」
唯葉は、優しい声でプレシャに言う。そもそも、巻き込んだのは自分なのにと思うと、胸が苦しくなる。
そんな唯葉を見て、プレシャはどこか、違和感を感じる。
「そ、そんなに見つめて……どうしたのプレシャさん。……あっ、もしかして」
そうだ。プレシャの感じた違和感。それは――目が黒かったこと。
プレシャが初めて会った時からずっとあの目は紅かったので、どこか変な感じがする。
そして、目が黒くなった……正確には、黒に戻ったということは。
「……人間に戻ったのだな」
「うん。あの戦いの次の日に、ラヴビーさんの所へ行ったの。……人間に戻れたのも、プレシャさんのおかげ。本当にありがとう」
「……我は特にお礼のされるような事はしていないし、むしろ助けられてばかりだったな」
自身の無力さが悔しいが、梅屋正紀に梅屋唯葉と出会ってから、助けられてばっかりだ。
そもそもの出会ったきっかけが、クラーケンに苦戦していた所を助けてもらった所から始まり、ゴーレムの群れだって、彼らがいなければ防ぎきることは出来なかっただろう。
今こうして生きているのが不思議なほどだ。
……正直、人間には嫌な思いしか無かった。過去、その力を恐れられ、魔石を奪おうとした人間を。
しかし、それは一部の人間がそうであっただけだ。それなら魔族であっても、今回のように敵対する事だってあるし、人間と魔族なんて垣根、実に下らないものなんだなと思う。
そんな簡単な事を、彼らに教えられた。……これ以上、何かから教えられることなんてもうないのかと思っていたが……まだまだ未熟な物だな。
それを踏まえて、プレシャは『ある決意』を胸に秘める。
「――唯葉。一つ、相談があるのだが……出来れば、正紀も呼んできて貰えるか」
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