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第三章・第二節 ようやく立ったスタートライン

42.レベル2

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 異世界には似合わない、どうしてもその存在が浮いてしまう大型のバスは、草原のど真ん中に停車する。全員降りた事を確認すると、私はバスに触れて――

「――『分解』」

 そう一言言うと、さっきまで動いていたバスが、モワア……ッ、と、煙に巻くように消えていく。

 私のスキルで錬成したものは、逆に分解することもできる。そこにあった形跡さえ残ることはない。

「ここは薬草の群生地……だけど、街からも離れてて、まだ沢山残っているはず。手分けして集めましょうか」

 馬車ならばここまで来れなくもないだろうが、個人で馬車を持っている冒険者なんてあまりいないだろう。やはり、ここに目星をつけておいて正解だった。

 どれほど薬草が集まるかにもよるが、あのバスをもう一度出せば、馬車よりもさらに多く持ち帰ることだってできるだろうし、ひとまず生活していくだけのお金は稼げそうだ。

「それじゃ、私はあっちを探してくるねー? 昼だから魔物も弱いと思うけど、みんなも気をつけてね!」

「それじゃ、俺たちはこっちだな」

 ……と、それぞれバラバラに分かれ、薬草を採取し始めた。私は、神崎あかねと二人で、少し離れた岩場の近くで採集する事にした。


 ***


 岩場の近くにもたくさん薬草が生えていて、集めるのには絶好のポイントなのだが……ほんの少し、面倒な事が。

「魔物だね……。スライムだから、そんなに手強くはなさそうだけど、五匹もいるよ」

 スライムといえば、昼の魔物の中でも弱い部類だが……数の差があった。それに、レベルだって特別高い訳でもない。

「……仕方ないわ。私がやる。――『物質錬成』」

 私は、そう言うと――右手に拳銃を錬成する。

 この銃を初めてみる神崎は、横でひいっ、と驚いていたが……私は構わず、奥のスライムに向けて、引き金を引く。

 ――パンッ、パンッ、パンパンパンッ!!

 五発の銃弾は、全てスライムの体に命中し、ビシャアッ! とはじけてそのまま消えていく。

 私が初めて、魔物をこの手で倒した瞬間だ。

 制服のポケットにしまっていた、前に城で配布された小さな石版を取り出して、指で触れてみる。

【水橋 明日香】
《レベル》2
《スキル》物質錬成
《力》9
《守》7
《器用》14
《敏捷》9


「水橋さん、レベル2になったんだね。……良かったの?」

「うん。ずっとこのままじゃ、ダメだと思ったから……」

 これで、『レベル1』も卒業だ。……思えば長いレベル1だった。

 今までは、戦う理由が見出せなかったけれど、今は違う。みんなを守っていくために、私は戦う事ができる。

「本当、凄いね……そのスキル。何でも作れちゃうの?」

「いえ、銃とか車とかは、たまたま私が構造とかを知っていたからで……私が細かく知っている物じゃないと、設計図でもない限りは作れないわ」

「へぇー。それでも充分、便利そうだよねー。私じゃ車の仕組みとか分からないし、絶対使いこなせないけど」

 私だって、万能じゃない。きっとこのスキルをもっと使いこなせる人がいると思う。どうしても、本当に私なんかがこのスキルを持って、良かったのだろうか……なんて思ってしまう。もっと適任者が、とか。

「とりあえず、魔物も片付けた訳だし……薬草を集めましょう?」

 そう言うと、私たちは岩場に生えている薬草を摘みはじめる。
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