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第一章 ハズレスキル・味方弱化
4.旅立ちの準備
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この世界で職に就き、裕福な暮らしは出来なくとも、そこそこ安定した暮らしをしていくのも良いかもしれない。
でも、やっぱり元の世界に帰れるなら帰りたい。あの城の奴らなら帰る方法を知っているかもしれないが、再び俺が城に乗り込んで聞いたところで追い返されるのがオチだろう。
昨日、この異世界に来て初めての夕食を食べ終えた後、これからどうするかを真剣に考えた。そこで、宿の部屋に大陸全体の地図が掛かっているのを見つけた。
今、俺がいる『ヒューディアル大陸』は西と東で二つの国に分かれているらしく……今いるのは西側、『ドルニア王国』の王都。
その地図から手に入れた大陸の情報を踏まえて、これからどうするかを考える。
まず、このドルニア王国にはあんな扱いを受けた上に、さらに挑発するような事を言ってしまった訳で合わせる顔もないし、帰る方法を聞き出したりすることには期待できない。
……そこで、俺は東側『リディエ共和国』へと向かう事を目標にした。ここ、ドルニア王国と同様に大きな国らしい。
長旅にはなるだろうが、その過程で元の世界に帰る方法が見つかるかもしれないし、どうやらこの世界にはレベルという概念があるらしい。
スキルなんてなくとも、それを上げれば強くなれるみたいだし、努力してレベルを上げて強くなってしまえば、その手に入れた強さであの城の奴らに言うことを聞かせることだって、力づくで聞き出すことだってできるかもしれない。
つまりは、旅をする事が元の世界へと帰るための近道なのだ。
……それで、今日はあちこちの店を駆け巡り、旅へと出る準備を整えている。
――まずは雑貨屋。
バッグが無くて色々と不便だったので、まずはバッグを選ぶ。長旅になりそうだし、大きめな革製のオシャレなものにした。
あとは、宿屋にも置いてあったあの石版。それの小さいバージョンみたいなものがあったので、いつでも自分の状態が見れれば便利だと思い買っておく。
ちょうど、俺が売り払ったスマートフォンくらいの大きさで、字は小さいしいくつか測れない項目もあったが、問題ない。最低限自分のレベルとステータス、あとは病気とか重要なものさえ見れればいいしな。
あとは大陸の地図、それも周辺の村や町、道までもが詳細に記されたものを購入した。
最後に緊急用の携帯食料や浄水器、薬とかその他いろいろの小物を買ったりして、合計大銀貨4枚と大銅貨5枚。
――次に武器屋。街の外には魔物もいるらしく、出歩くには武器が必要だ。
少しの距離なら護身用のナイフとかでも事足りるかもしれないが、大陸の西から東への大移動をする訳だし、お金もそこそこあるのでここでケチる必要もないと思い、少し高めの短剣を買った。
もっと重くていかにも強そうな武器はあったが、いざ持ってみると重たすぎて、マトモにこんなのをぶんぶんと振り回せる気がしなかったので諦めた。
ついでに革製の防具を全身買っておく。防具とは言っても所詮は革製だし、防御力は気休め程度なのかもしれないが、少なくとも俺の拳で全力で殴ってみても傷一つ付かなかったので、そこそこの防御力はあるらしい。
……武器防具合わせて大銀貨9枚に、小銀貨4枚。
「こんなものか……」
足りないものがあれば途中の町で買い足していけばいいし、とりあえずはこれで何とかなるだろう。
……と、出発は明日にするとして、宿へと戻ろうとした時。……ふと、目に入ったお店が気になった。
「……魔導書屋?」
魔導書……という事は、これを買って読みこめば魔法が使えるようになるのだろうか。
気になった俺は、チリンチリンというベルの音と共にドアを開けると、他のお店と何ら変わらない外観の、変わった店へと入る。
「いらっしゃーい」
中に入ると、綺麗な銀髪の、歳は十代後半くらいだろうか? 俺と同い年くらいの少女に出迎えられる。
「……魔導書って、読めば誰でも魔法が使えるようになったりする物なんですか?」
「まあ魔導書だからね。魔法の適正もあるし……誰でもって訳もないけど、魔導書の中身が理解できるようになる頃には使えるようになるんじゃない? ……魔法が初めてなら、相当苦労すると思うけどね」
「なるほど……」
店の中には棚がいくつもあり、その中にはぎっしりと本が並べられている。これが全て魔導書なのだろうか?
「まー、初めてならとりあえず無属性の初級魔法から始めるのが無難かな。物を持ち上げたりとか簡単な魔法ばかりだけど、全ての魔法の基礎が学べて、他の属性の魔法を覚える時にも役に立つからねー」
そう言って、魔導書屋の少女が持ってきたのは白色の分厚い本。
「まずはこれから始めて、この本に書いていることを完璧にマスターできたら他の属性の魔導書にチャレンジするのがオススメかな。魔法が得意か不得意かは、無属性魔法である程度分かるから。得意な人はすぐに覚えられるし、苦手な人はいつまで経っても覚えられないって感じかな」
これから長旅になるし、その道中も暇になりそうなので、そんな暇つぶしにはちょうどいいかと思い、オススメされた無属性の初級魔法の魔導書を買うことにした。
あくまで暇つぶし。そう割り切って、もし魔法が使えるようになったらラッキーだな、という軽い気持ちで、分厚い白い魔導書を購入した。……大銀貨2枚。暇つぶしにしては高いとは思うけど。
印刷技術やらが現代日本よりも発展していなかったりするせいなのか。かなり高価な買い物だ。ただ、これから魔法が使えるようになれば、値段以上の恩恵があるに違いない。
でも、やっぱり元の世界に帰れるなら帰りたい。あの城の奴らなら帰る方法を知っているかもしれないが、再び俺が城に乗り込んで聞いたところで追い返されるのがオチだろう。
昨日、この異世界に来て初めての夕食を食べ終えた後、これからどうするかを真剣に考えた。そこで、宿の部屋に大陸全体の地図が掛かっているのを見つけた。
今、俺がいる『ヒューディアル大陸』は西と東で二つの国に分かれているらしく……今いるのは西側、『ドルニア王国』の王都。
その地図から手に入れた大陸の情報を踏まえて、これからどうするかを考える。
まず、このドルニア王国にはあんな扱いを受けた上に、さらに挑発するような事を言ってしまった訳で合わせる顔もないし、帰る方法を聞き出したりすることには期待できない。
……そこで、俺は東側『リディエ共和国』へと向かう事を目標にした。ここ、ドルニア王国と同様に大きな国らしい。
長旅にはなるだろうが、その過程で元の世界に帰る方法が見つかるかもしれないし、どうやらこの世界にはレベルという概念があるらしい。
スキルなんてなくとも、それを上げれば強くなれるみたいだし、努力してレベルを上げて強くなってしまえば、その手に入れた強さであの城の奴らに言うことを聞かせることだって、力づくで聞き出すことだってできるかもしれない。
つまりは、旅をする事が元の世界へと帰るための近道なのだ。
……それで、今日はあちこちの店を駆け巡り、旅へと出る準備を整えている。
――まずは雑貨屋。
バッグが無くて色々と不便だったので、まずはバッグを選ぶ。長旅になりそうだし、大きめな革製のオシャレなものにした。
あとは、宿屋にも置いてあったあの石版。それの小さいバージョンみたいなものがあったので、いつでも自分の状態が見れれば便利だと思い買っておく。
ちょうど、俺が売り払ったスマートフォンくらいの大きさで、字は小さいしいくつか測れない項目もあったが、問題ない。最低限自分のレベルとステータス、あとは病気とか重要なものさえ見れればいいしな。
あとは大陸の地図、それも周辺の村や町、道までもが詳細に記されたものを購入した。
最後に緊急用の携帯食料や浄水器、薬とかその他いろいろの小物を買ったりして、合計大銀貨4枚と大銅貨5枚。
――次に武器屋。街の外には魔物もいるらしく、出歩くには武器が必要だ。
少しの距離なら護身用のナイフとかでも事足りるかもしれないが、大陸の西から東への大移動をする訳だし、お金もそこそこあるのでここでケチる必要もないと思い、少し高めの短剣を買った。
もっと重くていかにも強そうな武器はあったが、いざ持ってみると重たすぎて、マトモにこんなのをぶんぶんと振り回せる気がしなかったので諦めた。
ついでに革製の防具を全身買っておく。防具とは言っても所詮は革製だし、防御力は気休め程度なのかもしれないが、少なくとも俺の拳で全力で殴ってみても傷一つ付かなかったので、そこそこの防御力はあるらしい。
……武器防具合わせて大銀貨9枚に、小銀貨4枚。
「こんなものか……」
足りないものがあれば途中の町で買い足していけばいいし、とりあえずはこれで何とかなるだろう。
……と、出発は明日にするとして、宿へと戻ろうとした時。……ふと、目に入ったお店が気になった。
「……魔導書屋?」
魔導書……という事は、これを買って読みこめば魔法が使えるようになるのだろうか。
気になった俺は、チリンチリンというベルの音と共にドアを開けると、他のお店と何ら変わらない外観の、変わった店へと入る。
「いらっしゃーい」
中に入ると、綺麗な銀髪の、歳は十代後半くらいだろうか? 俺と同い年くらいの少女に出迎えられる。
「……魔導書って、読めば誰でも魔法が使えるようになったりする物なんですか?」
「まあ魔導書だからね。魔法の適正もあるし……誰でもって訳もないけど、魔導書の中身が理解できるようになる頃には使えるようになるんじゃない? ……魔法が初めてなら、相当苦労すると思うけどね」
「なるほど……」
店の中には棚がいくつもあり、その中にはぎっしりと本が並べられている。これが全て魔導書なのだろうか?
「まー、初めてならとりあえず無属性の初級魔法から始めるのが無難かな。物を持ち上げたりとか簡単な魔法ばかりだけど、全ての魔法の基礎が学べて、他の属性の魔法を覚える時にも役に立つからねー」
そう言って、魔導書屋の少女が持ってきたのは白色の分厚い本。
「まずはこれから始めて、この本に書いていることを完璧にマスターできたら他の属性の魔導書にチャレンジするのがオススメかな。魔法が得意か不得意かは、無属性魔法である程度分かるから。得意な人はすぐに覚えられるし、苦手な人はいつまで経っても覚えられないって感じかな」
これから長旅になるし、その道中も暇になりそうなので、そんな暇つぶしにはちょうどいいかと思い、オススメされた無属性の初級魔法の魔導書を買うことにした。
あくまで暇つぶし。そう割り切って、もし魔法が使えるようになったらラッキーだな、という軽い気持ちで、分厚い白い魔導書を購入した。……大銀貨2枚。暇つぶしにしては高いとは思うけど。
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