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第5章 事件解決編その1

27話 舩木ひろ子の生還

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 (お母さん? お母さんが居るの?)

 誘拐犯に目隠しと口にガムテープをされて、手足を固いロープで拘束された舩木ひろ子は、離れた場所からかすかに聞こえてくる声に聞き覚えがあった。徐々に近づくその声の主は舩木ひろ子の母親のそれだった。

 ひろ子は必死にガムテープで塞がれた口を動かして声を出そうとした。だけども、むごごっと言う小さな雑音しか出せず。拘束された手足を動かして物音を立てようにも動かせず。目隠しをされたひろ子の目には涙が浮かんでいたがそれに気付く者は誰一人として居なかった。

「ひろ子ー? どこに居るの? ひろ子ー?」

 母親の声が更に大きく近くなった。気付けば、その声はひろ子の耳元でしていた。 

「お母さん!」

 ひろ子の母親がどうやら探し当てたらしい。誘拐犯にひろ子が連れられてやって来て目隠し等をされた場所が社員ロッカーの並ぶ休憩室を兼ねた更衣室だった。

「良かった! 探し当ててくれて良かった! 怖かったの……。何も見えなくて。少しも動けなくて。助けて欲しいって、願ってた」

 ひろ子は母親の梓乃がガムテープを剥がして体を椅子に固定していたロープをほどいているのを眺めながら、思い出していた。

※※舩木ひろ子の回想シーン※※

「自由にしてて良いよ! お母さんが来るまで、ここでゆっくり休んで」

 ひろ子はそう言われてその人と談笑していた。

「じゃあ! ちょっと何か持ってくるからそこで待っていて」

 ひろ子がそう話をされて気を許して背中を向けて、休憩室にもなっている所で、TVを点けて夕方のゴールデン番組に夢中になっていると、休憩室の扉を開けてその人が何やら抱えて入ってきていた。

 しかし、ひろ子はその光景をただの景色としてぼんやりと眺めているだけで気にも止めなかった。すると、急に後ろからその人が羽交い締めにして苦しめてきた。

(く、苦しい! 助けて。ガハッガハッ)

 いつの間にか、ひろ子の意識が遠退いてしまった。







「助かったね! えらいじゃない! 頑張ったね」

 疲れのあまり、ひろ子がうとうとしてまどろんでいると、気付けば、そんな声に囲まれていた。声の正体は警部達であった。

(私、助かったのか……)

 ひろ子はという現実も現実もまるで嘘であるかのように、ぼんやりした意識の中から、警部達の会話を聞いていた。

「まさかなぁ、母親の舩木梓乃を捕まえる事になるとは思いもしなかったなぁ」
「確かに。警部の仰有おっしゃる通りですよ」
「それにしても、誘拐の目的がまさか、あんな事だったとは思わないよな」
「ですな」

 
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