31 / 33
2章 学校編
27
しおりを挟む
「うん、俺も乗るよ」
笠井も橋口も僕の誘いに“乗った”。
噂の真実などどうでも良い。
肝心なのは、なおざりにしてしまった担任のノートPCの解除だ。
それ以外は考えなくて良い。
「とりあえずさ、先生が戻る前に片付けない?」「そうだな」
「それが良い」
これで会話の流れの主導権は僕が完全に掌握した。
二人のマンパワーを駆使することができる。
僕は二人によし、やろっか、と再度声をかけて一時シャットダウンさせた先生のノートPCを二人が見つめるなか、再起動させる。
画面が明るくなったと思いきや、パスワードの解除を要求する通知が表示された。
来た、これが、問題のパスワードだ。
二人も注意深くPCの画面を見つめる。
僕が仰々しくパスワードと思わしき文字の羅列を打ち込んでいく。
当然、ダメだ。
適当にパスワードを打ち込むからパスワードは解除とはならない。
「少し考えたい」
それとなく言ってみる。
二人に考えて貰わないと解除とはいかない。
「ん、ならば貸してみろ。ここは俺と笠井でやってみるから」
「……任せた……」
橋口も笠井もキーボードと画面とを交互ににらめっこする。
「些細な情報で良いから欲しい……」
三人のなかで気の強い方である橋口がぐうの音をあげた。
情報……それも些細な情報。
手がかりになりそうなもの……。
僕の手がぎゅっと握りしめられるのに合わせて、紙がくしゃくしゃになる──
紙? そうだ! メモがあったじゃないか!
何で忘れてたんだよ!
「二人とも、使えるかわからないがこれを」
「助かるよ」
「サンキューな」
先生の打鍵する手元をしっかりと残したメモが二人に行き渡った。
そして、僕はあらかたのメモを書いた当時の様子を二人に明かした。
メモを整理するとこのような具合だ。
◆メモ◇
笹野先生のノートPCのパスワードを解く必要がある。
「と、ち、O、み、N、あ、ろ、2」のキーを打鍵していた先生のタイピングの手元をメモしたということ。
さらにいえば、10文字分のパスワードである。
◇◆◇◆◇◆◇◆
ここまでは僕の把握している情報だ。
さらに飛躍した考えをもたないと答えはたどり着けない──そう考えが煮詰まって頭が固くなるのを感じていると、二人は思わぬ反応を示した。
「必要なのは──“笹野先生”のノートPCの“パスワード”なんだよな?」
「うん、そうだと思う」
橋口は”笹野先生”と“パスワード”を強調して確認を求めてきた。
橋口につられて、笠井も続いた。
「先生のキーボード操作の手元を見たんでしょ?」「そう」
「ならさ、先生が打鍵した『と、ち、O、み、N、あ、ろ、2』のキーは、そのキーに書かれたアルファベッドや数字として、そのまま答えたら良いんじゃないかな?」
「どうして?」
二人が急に閃いたように話し出すのに、僕はというと、明瞭な回答に結び付く考えがもてないから、もどかしい。
だけど、自分の質問は充分に届かなかったようだ。
「ごめん、詳しく聞かせて欲しい」
「つまりだ、結論から話せば、『と、ち、O、み、N、あ、ろ、2』のキーはそれぞれ『s、a、n、o、3、アンダーバー、2』になる──」
笠井の言葉に続くように橋口も、
「さらにいえば、10文字のパスワード。もっとよくいえば、これは“笹野”先生の所有物について考えている。ならば──」
これならば、わかりそうな気がしなくもないな、と納得のいく説明におおお~、という感嘆の声が漏れでた。
笠井も橋口も僕の誘いに“乗った”。
噂の真実などどうでも良い。
肝心なのは、なおざりにしてしまった担任のノートPCの解除だ。
それ以外は考えなくて良い。
「とりあえずさ、先生が戻る前に片付けない?」「そうだな」
「それが良い」
これで会話の流れの主導権は僕が完全に掌握した。
二人のマンパワーを駆使することができる。
僕は二人によし、やろっか、と再度声をかけて一時シャットダウンさせた先生のノートPCを二人が見つめるなか、再起動させる。
画面が明るくなったと思いきや、パスワードの解除を要求する通知が表示された。
来た、これが、問題のパスワードだ。
二人も注意深くPCの画面を見つめる。
僕が仰々しくパスワードと思わしき文字の羅列を打ち込んでいく。
当然、ダメだ。
適当にパスワードを打ち込むからパスワードは解除とはならない。
「少し考えたい」
それとなく言ってみる。
二人に考えて貰わないと解除とはいかない。
「ん、ならば貸してみろ。ここは俺と笠井でやってみるから」
「……任せた……」
橋口も笠井もキーボードと画面とを交互ににらめっこする。
「些細な情報で良いから欲しい……」
三人のなかで気の強い方である橋口がぐうの音をあげた。
情報……それも些細な情報。
手がかりになりそうなもの……。
僕の手がぎゅっと握りしめられるのに合わせて、紙がくしゃくしゃになる──
紙? そうだ! メモがあったじゃないか!
何で忘れてたんだよ!
「二人とも、使えるかわからないがこれを」
「助かるよ」
「サンキューな」
先生の打鍵する手元をしっかりと残したメモが二人に行き渡った。
そして、僕はあらかたのメモを書いた当時の様子を二人に明かした。
メモを整理するとこのような具合だ。
◆メモ◇
笹野先生のノートPCのパスワードを解く必要がある。
「と、ち、O、み、N、あ、ろ、2」のキーを打鍵していた先生のタイピングの手元をメモしたということ。
さらにいえば、10文字分のパスワードである。
◇◆◇◆◇◆◇◆
ここまでは僕の把握している情報だ。
さらに飛躍した考えをもたないと答えはたどり着けない──そう考えが煮詰まって頭が固くなるのを感じていると、二人は思わぬ反応を示した。
「必要なのは──“笹野先生”のノートPCの“パスワード”なんだよな?」
「うん、そうだと思う」
橋口は”笹野先生”と“パスワード”を強調して確認を求めてきた。
橋口につられて、笠井も続いた。
「先生のキーボード操作の手元を見たんでしょ?」「そう」
「ならさ、先生が打鍵した『と、ち、O、み、N、あ、ろ、2』のキーは、そのキーに書かれたアルファベッドや数字として、そのまま答えたら良いんじゃないかな?」
「どうして?」
二人が急に閃いたように話し出すのに、僕はというと、明瞭な回答に結び付く考えがもてないから、もどかしい。
だけど、自分の質問は充分に届かなかったようだ。
「ごめん、詳しく聞かせて欲しい」
「つまりだ、結論から話せば、『と、ち、O、み、N、あ、ろ、2』のキーはそれぞれ『s、a、n、o、3、アンダーバー、2』になる──」
笠井の言葉に続くように橋口も、
「さらにいえば、10文字のパスワード。もっとよくいえば、これは“笹野”先生の所有物について考えている。ならば──」
これならば、わかりそうな気がしなくもないな、と納得のいく説明におおお~、という感嘆の声が漏れでた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
彼女が愛した彼は
朝飛
ミステリー
美しく妖艶な妻の朱海(あけみ)と幸せな結婚生活を送るはずだった真也(しんや)だが、ある時を堺に朱海が精神を病んでしまい、苦痛に満ちた結婚生活へと変わってしまった。
朱海が病んでしまった理由は何なのか。真相に迫ろうとする度に謎が深まり、、、。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
舞姫【中編】
友秋
ミステリー
天涯孤独の少女は、夜の歓楽街で二人の男に拾われた。
三人の運命を変えた過去の事故と事件。
そこには、三人を繋ぐ思いもかけない縁(えにし)が隠れていた。
剣崎星児
29歳。故郷を大火の家族も何もかもを失い、夜の街で強く生きてきた。
兵藤保
28歳。星児の幼馴染。同じく、実姉以外の家族を失った。明晰な頭脳を持って星児の抱く野望と復讐の計画をサポートしてきた。
津田みちる
20歳。両親を事故で亡くし孤児となり、夜の街を彷徨っていた16歳の時、星児と保に拾われた。ストリップダンサーとしてのデビューを控える。
桑名麗子
保の姉。星児の彼女で、ストリップ劇場香蘭の元ダンサー。みちるの師匠。
亀岡
みちるの両親が亡くなった事故の事を調べている刑事。
津田(郡司)武
星児と保が追う謎多き男。
切り札にするつもりで拾った少女は、彼らにとっての急所となる。
大人になった少女の背中には、羽根が生える。
与り知らないところで生まれた禍根の渦に三人は巻き込まれていく。
彼らの行く手に待つものは。
マクデブルクの半球
ナコイトオル
ミステリー
ある夜、電話がかかってきた。ただそれだけの、はずだった。
高校時代、自分と折り合いの付かなかった優等生からの唐突な電話。それが全てのはじまりだった。
電話をかけたのとほぼ同時刻、何者かに突き落とされ意識不明となった青年コウと、そんな彼と昔折り合いを付けることが出来なかった、容疑者となった女、ユキ。どうしてこうなったのかを調べていく内に、コウを突き落とした容疑者はどんどんと増えてきてしまう───
「犯人を探そう。出来れば、彼が目を覚ますまでに」
自他共に認める在宅ストーカーを相棒に、誰かのために進む、犯人探し。
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。
ヘリオポリスー九柱の神々ー
soltydog369
ミステリー
古代エジプト
名君オシリスが治めるその国は長らく平和な日々が続いていた——。
しかし「ある事件」によってその均衡は突如崩れた。
突如奪われた王の命。
取り残された兄弟は父の無念を晴らすべく熾烈な争いに身を投じていく。
それぞれの思いが交錯する中、2人が選ぶ未来とは——。
バトル×ミステリー
新感覚叙事詩、2人の復讐劇が幕を開ける。
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。某大学の芸術学部でクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。かつての同級生の不審死。消えた犯人。屋敷のアトリエにナイフで刻まれた無数のXの傷。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の六人は、大学時代にこの屋敷で共に芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。グループの中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる