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2章 学校編

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「何だよ! 噂の話をしたら悪いか?」
 
 笠井はふつふつと沸き立つ怒りをあらわにして、僕らに声をぶつけた。
 僕は、まぁまぁ、となだめに入るも、笠井はご立腹だ。
 
「見張りを誰がやるか、の話で盛り下がっていたから、盛り上げようとしただけだったのに……」
 
 と、わざと聞こえるような声量で笠井は漏らす。
 また、空気が悪くなったよ……。
 これは僕らのせいか、と僕らは想いをひとつにするも、笠井の機嫌は悪いまま。
 さて、どうしたものか。
 僕は橋口に目配せをした。
 助けを求めるためだ。
 橋口はというと、やれやれといった具合か、機嫌を損ねた年不相応な態度をとる笠井の扱いにさじを投げそうでいた。
 お前がなんとかしろよ、という目配せをこちらに向けてくる。
 無理無理無理無理。
 僕に笠井をなだめるように何か気の利いたことをいえってか。
 
 「知ってるだろ、橋口」
 
 ふと頭の中で駆け巡らせていた言葉を発してしまった。
 
「え、何急に」
「そうだよ、僕を差し置いて、何、会話進めようとしてるの?」
 
 二人から非難の言葉が集中して浴びせられた。
 しまったぁ。
 しくじったよ。
 とりあえず、何かにつけて、巧く切り抜けなきゃ。
 ごめんだよ、不用意に非難を浴びるのは。
 
「そうさ、そうなんだよ、橋口、笠井!」
 
 ここは勢いに任せて切り抜けよう。
 
「笠井が話すようにだ、確かに噂はあるんだよ。いや、あるはずなんだ。その噂の始まり、ってやつが。探してみないか」
 
 二人の尻に火をつけるように僕は勢いに任せて二人の返事を催促した。
 
「やけに言葉に凄みがあるじゃないか。珍しいな、悠基」
 
 橋口は感心の言葉を口にする。 
 良いぞ、そのまま乗ってこい、と僕は祈りを捧げた。
 
「よく言えたもんだよ、詰め将棋みたいに次から次へと理詰めしてきたくせに」
「ごめん……」
 
 笠井の問い詰めの的を射ぬいた発言に僕はずしりと頭の上に“信頼を欠いた”という自らの言動がのし掛かって気が遠のくような心地がしていた。 
 
 しかし、笠井はぶつぶつと言葉を呟き続けたのちに、気持ちが揺れ動いたのか、手のひらを返すように、「……乗ったよ……」と返事をしてきた。
 数分遅れて、橋口も同じ言葉を口にした。
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