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2章 学校編

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 笠井はゆっくりと大きく肺を動かして、呼吸を整えると、声のトーンを大げさに下げ出した。
 
 「これは人から聞いた話なんだけど、ここの先生には大きな秘密があるらしいんだ」
 「え、どんなの」
 「俺も気になるぞ」
 
 再び大きく息を吸うと、笠井は僕らに続きを話し出した。
 
 「実は、この松葉中学の先生のなかには、いるらしい。ギャンブルに度はまりしたギャンブル狂が」
 
 
 笠井の話に耳を傾けていた僕と橋口は急にベクトルの違う話をされて戸惑いを隠せず、「それはどういうことだよ」と無骨な言葉を発してしまう。
 それも、二人は示し合わせたかのように呼応していた。
 
 「突然、何の話だよ。訳がわからんぞ」
 
 と、橋口は僕の気持ちを代弁してくれた。
 ほんと、それ。
 話が突然すぎる。
 
 「二人は知らない? ギャンブル狂で文無しの先生がいるって、噂されてるんだよ?」
 
 僕はへー、という空返事でうなずいてしまった。
 ごめんよ、笠井。
 ギャンブル狂で文無しって、その情報源はどこからだよ。
 あまりに噂レベルの話で信用ならない話じゃないか。
 
 僕も橋口も言うべきか言わないべきか、口を開くのを迷っていると、笠井が堰(せき)を切ったように勢いよく話を続け出した。
 
 「それもさ。僕らの周りにいるみたいだよ。ギャンブルの話を小難しい顔や口調で電話でしていたのを目撃した生徒がいたみたいで、噂はそこから広がったみたいなんだ」
 
 橋口は「なるほどねぇ」と近くにある空いている椅子を引っ張り出して、腕を組み座った。
 橋口は納得したようだが、僕は納得できない。
 話を深く掘り下げてみないことには、なんとも言えない。

 「肝心の情報がわからない」
 「肝心の?」
 「そうだ。噂を流していたのがこの学校の生徒なのは、わかった。同時に何人もいる先生のなかにギャンブル狂? の人間がいると言うこともわかる。ただ、今必要なのか?」
 
 僕は淡々と彼の話に論理のレールを敷いて、この話をした経緯や理由など、核心に確実に詰めよって行く。
 そうだ、肝心なのは噂を聞いて、ただ聞き流すことではない。
 噂には広がった理由や背景があるはずだ。
 〝火のない所に煙は立たぬ〟と言うぐらいだから。
 笠井の返事を待っている間、僕が考え事をしていると、橋口が口を挟んだ。
 
 「悠基のいう通りさ。そもそも笹野先生のノートPCの中身を見るのが俺らのしようとしてることじゃないか。これとそれが関係あるか……だよな? な、悠基」
 
 橋口は話し終わると、僕の方を見て同意を求めてきたから、うなずいて笠井に話すように迫った。
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