26 / 33
2章 学校編
22
しおりを挟む「ちょ、笠井か橋口。こいつを見てくれ」
僕はおもむろに丸めた紙切れを二人に見るように促しながら、ノートPCのパスワード解除を手伝うように誘導した。
「これはなんだ?」
「なんなんだよ、この暗号は」
各々口に驚きを出す。
見ても分からないのか? と頭をぼりぼり掻きながらパスワードと思わしき文字と数字の羅列を打ち込んでいく。
やはり……ダメだ。
パスワードが解読できないからと。
自分じゃ、やっぱ無理だ、とさじを投げ掛けたそのとき。
「パスワードのメモ……なるほどな、貸してみ?」
と、パスワード予測の書かれた紙切れと打鍵する様子をジーッと眺めていた橋口が口を開き、ノートPCの真ん前の座席を奪い取った。
すると、僕が言うより先に笠井が口を開いた。
「お? なにか答えでも分かったの?」
橋口は僕の書きなぐった紙切れとノートPCのキーボードとを何度も行き来しながら、彼なりの解釈を話し出した。
「なんだろうな、先生のパスワードは? って考えたときさ、答えが出てこないか?」
「どういうこと?」
「え、わかんない。教えて?」
やっぱり、わかんないって、橋口。
考えて頭を回すより先に悲鳴が上がる。
僕も笠井も橋口の考えにはついていけてない。
橋口だけがこの状況についていけてるように思う。
◆◇◆◇
パスワードとの格闘が続いていく。
自習室内にはノートPCを前に固唾を飲んで見守る三人の息づかいとカタカタ、打鍵してはデリートを繰り返し、パスワード解除できません、という警告が立ち上がる音が響くだけだった。
15分から20分近くは経っただろうか。
ふと僕らは思い起こした。
「見張り! 見張りだよ!」
見張り、見張りをたてないとダメじゃないか、と意見は合致したようで僕らは興奮気味の声を合わせた。
「じゃあ、誰が見張りする?」
いつの間にか、笠井が会話の主導権を握っていた。
「俺が? やだよ!」
「僕も嫌だな」
「俺も嫌だよ……じゃあ、誰がやるんだよ、見張りを」
口を開く者は橋口、僕、笠井の順に移る。
笠井のところまで発言権が一周まわるも、笠井の発言で場に沈黙が生じた。
──見張りなんてやりたくない。
三人の思いは口を開かずとも明白だった。
今、口を開いた者が見張りを誰がやるか決める。
言いたくない。
僕は固く心に決めて沈黙を守ることにした。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~
紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。
行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。
※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。
昭和レトロな歴史&怪奇ミステリー 凶刀エピタム
かものすけ
ミステリー
昭和四十年代を舞台に繰り広げられる歴史&怪奇物語。
高名なアイヌ言語学者の研究の後を継いだ若き研究者・佐藤礼三郎に次から次へ降りかかる事件と災難。
そしてある日持ち込まれた一通の手紙から、礼三郎はついに人生最大の危機に巻き込まれていくのだった。
謎のアイヌ美女、紐解かれる禁忌の物語伝承、恐るべき人喰い刀の正体とは?
果たして礼三郎は、全ての謎を解明し、生きて北の大地から生還できるのか。
北海道の寒村を舞台に繰り広げられる謎が謎呼ぶ幻想ミステリーをどうぞ。
紙の本のカバーをめくりたい話
みぅら
ミステリー
紙の本のカバーをめくろうとしたら、見ず知らずの人に「その本、カバーをめくらない方がいいですよ」と制止されて、モヤモヤしながら本を読む話。
男性向けでも女性向けでもありません。
カテゴリにその他がなかったのでミステリーにしていますが、全然ミステリーではありません。

【完結】共生
ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。
ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。
隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?

ダブルネーム
しまおか
ミステリー
有名人となった藤子の弟が謎の死を遂げ、真相を探る内に事態が急変する!
四十五歳でうつ病により会社を退職した藤子は、五十歳で純文学の新人賞を獲得し白井真琴の筆名で芥山賞まで受賞し、人生が一気に変わる。容姿や珍しい経歴もあり、世間から注目を浴びテレビ出演した際、渡部亮と名乗る男の死についてコメント。それが後に別名義を使っていた弟の雄太と知らされ、騒動に巻き込まれる。さらに本人名義の土地建物を含めた多額の遺産は全て藤子にとの遺書も発見され、いくつもの謎を残して死んだ彼の過去を探り始めた。相続を巡り兄夫婦との確執が産まれる中、かつて雄太の同僚だったと名乗る同性愛者の女性が現れ、警察は事故と処理したが殺されたのではと言い出す。さらに刑事を紹介され裏で捜査すると告げられる。そうして真相を解明しようと動き出した藤子を待っていたのは、予想をはるかに超える事態だった。登場人物のそれぞれにおける人生や、藤子自身の過去を振り返りながら謎を解き明かす、どんでん返しありのミステリー&サスペンス&ヒューマンドラマ。
【毎日更新】教室崩壊カメレオン【他サイトにてカテゴリー2位獲得作品】
めんつゆ
ミステリー
ーー「それ」がわかった時、物語はひっくり返る……。
真実に近づく為の伏線が張り巡らされています。
あなたは何章で気づけますか?ーー
舞台はとある田舎町の中学校。
平和だったはずのクラスは
裏サイトの「なりすまし」によって支配されていた。
容疑者はたった7人のクラスメイト。
いじめを生み出す黒幕は誰なのか?
その目的は……?
「2人で犯人を見つけましょう」
そんな提案を持ちかけて来たのは
よりによって1番怪しい転校生。
黒幕を追う中で明らかになる、クラスメイトの過去と罪。
それぞれのトラウマは交差し、思いもよらぬ「真相」に繋がっていく……。
中学生たちの繊細で歪な人間関係を描く青春ミステリー。
夜の動物園の異変 ~見えない来園者~
メイナ
ミステリー
夜の動物園で起こる不可解な事件。
飼育員・えまは「動物の声を聞く力」を持っていた。
ある夜、動物たちが一斉に怯え、こう囁いた——
「そこに、"何か"がいる……。」
科学者・水原透子と共に、"見えざる来園者"の正体を探る。
これは幽霊なのか、それとも——?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる