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2章 学校編
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しおりを挟む話が済んだ二人の間に沈黙が流れた。
少し間が空いて、笹野先生が口を開いた。
「特に話すことがなさそうならば、職員室に戻るが……えぇか?」
「え、あ、はい……」
僕は腑抜けた返事をする。
ひとまず、いじめのことを話したけれど、このままではUSBを持ち出す機会を掴めずに終わってしまう。
確かに先生のノートPCのキーボード入力の手元を視れていた。
流れるように押されたキーボードで、目に見えた部分で表すと「こ、ち、O、N、あ、ろ、2」のキーを触っていた。
画面を少し離れたところから、何食わぬ顔で盗み見ても、記号化されたパスワード11文字が表示されているだけだった。
見落としはあるかも知れないが、これらのキー配置とパスワードの文字数を記憶の片隅においておくことにした。
いつまで記憶できるかわからないけども。
「あ、先生。今ノートPCに入力した情報ってどうするんですか?」
「どうするって?」
「いじめについて、先生に訴えたことを周りに知られたら──」
「ああ、それについては大丈夫。情報は私と学年主任と校長先生とで、まずは共有して話を進めるから。安心しなさい。私らがきちんとついてるから」
「いや、でも……怖くて。いじめはなかったことにされるんじゃないか?って」
「どういうことだ? 何を言っているんだ」
「こんなご時世じゃないですか。いじめはなかったことにした方が松葉中学の看板は守られるんじゃないかって……つまり、簡単に真実はネジ曲がるんじゃ……っと思い……」
「なるほどな。お前なりに考えたわけだ。だけど、そうはならんよ」
僕が懸念材料をつぶやくと、笹野先生はどこか遠い目をして、PCにカタカタっとなにやら文字を入力しながら話を続けた。
「ま、とにかくだ、ちょっと用事がまだ残っているから、先に戻るわ。すまんが私の荷物を運んでくれないか?」
お、これは!?
チャンスが巡ってきたぞ!先生のノートPCをいじれる機会が巡ってきたぞ!
僕は「わかりました」と応えた後に、思わずむふふっと含みのある笑いをこぼしてしまった。
「何か言ったか?」
笹野先生は自習室の扉をがららっと開けながら、顔をこちらに振り返らせて、質問を落として自習室を後にした。
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