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12. 運命の闘い
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そのときガラスを割って黒い影が凄まじい速さで飛び込んできて僕は悲鳴を上げた。ヒメナが僕を庇って前に立ち腰から剣を抜くと、目の前の男はニッと口の端を上げた。ロドニーを名乗ったあの男だった。
「ここにいたんだね、アンソニー君」
「アンソニーに手を出さないで!」
ヒメナが剣を構え叫んだ。
騒ぎを聞いたガートルードが本棚の奥から現れると、時間泥棒はにやりと薄気味悪い笑いを浮かべた。
「やはりここにいたのかガートルード、この小僧を追ってきて良かったよ」
黒い男が冷たく笑った。
「ヒメナ、アンソニー、隠れていろ!」
ガートルードに言われ僕はヒメナに手を引かれ壁際に置いてある灰色のカプセルの中に隠れた。不思議そうキョロキョロしている僕に、これはベッドなのだとヒメナが小声で教えてくれた。中には柔らかいクッションが敷いてありピンクの黒猫柄の可愛らしい枕と同じ柄のシーツもある。
僕たちは丸いガラス窓から外の様子を見つめた。黒い男がガートルードに詰め寄っていた。
「今まで散々手こずらせてくれたな……だがもう終わりだ!」
男が腰から秒針のような細長い棒を取り出しガートルードに襲いかかり、持ち上げた棒を思い切り振り下ろした。さっと後退して攻撃をかわしたガートルードは腰から例のナイフを抜き取って応戦したが、彼の振ったナイフは敵の頬を掠めただけだった。
黒い男が呪文を唱えると、秒針から黒い霧のような物が飛び出してきた。ガートルードはそれをナイフで跳ね返し、走って反動をつけると男の顎に飛び蹴りを喰らわせた。男は背中から壁にぶつかり、その瞬間秒針が床に落ちた。
それと同時にヒメナがカプセルを飛び出し男に突進し剣を振りかぶった。ヒメナを止めようと一緒の外に飛び出してしまった僕は頭を低くし、黒い男の死角を通り反対側の部屋の隅まで逃げた。気づいた男は秒針を素早く手に取りヒメナに向けて呪文を吐いた。黒い霧がヒメナを直撃するすんでのところでガートルードが庇い、代わりに攻撃が彼を直撃し身体が吹き飛ばされ、持っていたナイフが投げ出され僕の足元まで滑ってきた。
「お父さん!」
ヒメナが倒れている父親に駆け寄った。そこに黒い男がもう一度攻撃を仕掛けようとしたとき、僕は背後から全速力で男の背中目指して突っ込みその背中にナイフを埋め込んだ。
ギャアアア~~~‼︎‼︎‼︎
獣のような叫び声をあげ男が地面に倒れたとき、息も絶え絶えのガートルードは素早くポケットからあの小さな丸い金色の時計を取り出して天に翳し、何か呪文のようなものを唱えた。その瞬間男の身体から虹色の水飛沫と霧の混じったような迸りがナイアガラのように噴き出して、金色の時計の中に吸い込まれていった。
ガートルードはほっとしたように微笑んだ。
「助かったよ、お陰であの男が人々から奪った時間を取り戻せた……」
「ガートルード!」
ガートルードは息も絶え絶えで、腹から血が出ていた。僕は着ていたシャツを脱いで彼の腹に巻きつけた。
「死んだら嫌だっ……お父さん」
泣いている娘の頬をガートルードの大きな骨ばった手がなでた。
「死にはしないさ、君だって知ってるだろう?」
彼は僕の方を見て言った。
「お願いがある、あの公園まで連れて行ってくれないか? やらなければならないことがまだ一つ残っているんだ」
彼は言った。
「ここにいたんだね、アンソニー君」
「アンソニーに手を出さないで!」
ヒメナが剣を構え叫んだ。
騒ぎを聞いたガートルードが本棚の奥から現れると、時間泥棒はにやりと薄気味悪い笑いを浮かべた。
「やはりここにいたのかガートルード、この小僧を追ってきて良かったよ」
黒い男が冷たく笑った。
「ヒメナ、アンソニー、隠れていろ!」
ガートルードに言われ僕はヒメナに手を引かれ壁際に置いてある灰色のカプセルの中に隠れた。不思議そうキョロキョロしている僕に、これはベッドなのだとヒメナが小声で教えてくれた。中には柔らかいクッションが敷いてありピンクの黒猫柄の可愛らしい枕と同じ柄のシーツもある。
僕たちは丸いガラス窓から外の様子を見つめた。黒い男がガートルードに詰め寄っていた。
「今まで散々手こずらせてくれたな……だがもう終わりだ!」
男が腰から秒針のような細長い棒を取り出しガートルードに襲いかかり、持ち上げた棒を思い切り振り下ろした。さっと後退して攻撃をかわしたガートルードは腰から例のナイフを抜き取って応戦したが、彼の振ったナイフは敵の頬を掠めただけだった。
黒い男が呪文を唱えると、秒針から黒い霧のような物が飛び出してきた。ガートルードはそれをナイフで跳ね返し、走って反動をつけると男の顎に飛び蹴りを喰らわせた。男は背中から壁にぶつかり、その瞬間秒針が床に落ちた。
それと同時にヒメナがカプセルを飛び出し男に突進し剣を振りかぶった。ヒメナを止めようと一緒の外に飛び出してしまった僕は頭を低くし、黒い男の死角を通り反対側の部屋の隅まで逃げた。気づいた男は秒針を素早く手に取りヒメナに向けて呪文を吐いた。黒い霧がヒメナを直撃するすんでのところでガートルードが庇い、代わりに攻撃が彼を直撃し身体が吹き飛ばされ、持っていたナイフが投げ出され僕の足元まで滑ってきた。
「お父さん!」
ヒメナが倒れている父親に駆け寄った。そこに黒い男がもう一度攻撃を仕掛けようとしたとき、僕は背後から全速力で男の背中目指して突っ込みその背中にナイフを埋め込んだ。
ギャアアア~~~‼︎‼︎‼︎
獣のような叫び声をあげ男が地面に倒れたとき、息も絶え絶えのガートルードは素早くポケットからあの小さな丸い金色の時計を取り出して天に翳し、何か呪文のようなものを唱えた。その瞬間男の身体から虹色の水飛沫と霧の混じったような迸りがナイアガラのように噴き出して、金色の時計の中に吸い込まれていった。
ガートルードはほっとしたように微笑んだ。
「助かったよ、お陰であの男が人々から奪った時間を取り戻せた……」
「ガートルード!」
ガートルードは息も絶え絶えで、腹から血が出ていた。僕は着ていたシャツを脱いで彼の腹に巻きつけた。
「死んだら嫌だっ……お父さん」
泣いている娘の頬をガートルードの大きな骨ばった手がなでた。
「死にはしないさ、君だって知ってるだろう?」
彼は僕の方を見て言った。
「お願いがある、あの公園まで連れて行ってくれないか? やらなければならないことがまだ一つ残っているんだ」
彼は言った。
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