Owl The Time

8. 後悔

　僕は何てことをしてしまったんだろう。弟に死んでほしくないのに、よかれと思ってしたことで彼を死に近づけてしまうことになるなんて。だが弟を思っていたというのは思い込みで、全ては弟の病の進行を遅らせ、ずっと一緒に過ごしたいという僕のエゴだった。僕は自分が世界一最低な兄になったような気分になった。

　僕はエヴァンを助けたい一心で何とかガートルードとコンタクトを取ろうとした。相手から僕に連絡してくるのを待ってなんかいられない。こうしている間にもエヴァンの時間は少しずつ奪われているのだ。

　僕はインターネットのオカルト掲示板に「オーツ」という名前で書き込むことにした。彼が読んでいる可能性なんてないかもしれないけれど、読んでくれることに賭けようと思った。

『僕の時間は4月1日で止まっています。僕の弟は難病と闘っていて、良い治療法も見つからずにいます。僕が沢山の時間を使っているせいで弟の時間が奪われて、このままでは死んでしまうかもしれません。病気の弟を救うために時間をもう一度動かしたいです。どうか僕と弟を助けてください。セントラルパークで会ったおじいさん、このメッセージを読んだら大至急連絡をください』

　最後にメールアドレスを添付した。

　待っても待ってもメールは届かなかった。皮肉にも4月1日は繰り返され、僕は無駄に時間を浪費する羽目になった。その間にもエヴァンは死に近づいていると思うと気が狂いそうだった。ガートルードにあんなことを頼まなきゃよかった。弟と楽しく病院で話す何十回目か分からない時間の間も僕は自分を責め続けた。弟の笑顔を見るたび辛かった。