日本昔話村

たらこ飴

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肝試し②

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 夜、幸が迎えにきた男と二人で出かけたあと、僕と権田はこっそり後ろをついて行った。途中権田の鼻の穴に小さな虫が入り込んでしまいくしゃみをして気づかれかけたが、地蔵の影に隠れて何とかことなきを得た。だが近くに狐の母子がいるのに気を取られ幸の姿を見失ってしまった。

 暗い夜道を月明かりだけを頼りに歩いていくと、茂みの奥からガサガサと音がして熊かと慌てたが正体は耕太郎だった。提灯を手に持ち現れた彼の方も僕たちの姿に驚いていた。

「何してんだ? お前」

 権田に訊かれた耕太郎は、母親の分の芋を食べてしまい怒られて、茂みの中で反省しているうちに寝てしまったのだと答えた。反省の仕方がシュールで少し可笑しかったが笑うのを堪えた。権田は「何やってんだよ、お前!」とゲラゲラ笑っていたが。

 僕たちから幸が男たちに誘われ墓に肝試しに行ったことを聞かされた耕太郎は、心配のあまりパニックになったようだった。

「大変だ、早く助けに行かねえと!」

 慌てて駆け出した耕太郎の後ろから僕と権田が続いた。

 例の祠へ続く道を右に曲がり、しばらく走ると墓地に着いた。男たちと幸の姿はなく、そのことが余計にただならぬ事態を予感させた。

 三人で墓の敷地内を探し回ったが、やはり幸はいなかった。

 別の場所を探すかと言い合っていたとき、奥の竹林から鋭い悲鳴が聞こえ僕たちは咄嗟に駆け出した。幸の声だった。
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