日本昔話村

13. 肝試し

祭りから一週間が過ぎた頃、村の若者二人が村にやってきて今夜墓で肝試しをするから来ないかと幸を誘った。あの祭りのときに幸を見ていた一団の中の二人だった。ちょうど僕と権田も近くにいて、一緒に行くかと幸が僕たちに尋ねたが若者たちに「余所者は来るな」と邪険にされた。怒った権田が「お前らなんて本物の幽霊に呪われちまえ！」と悪態をつき、軽く口論になり幸が仲裁した。

　若者たちが帰ったあと、僕と権田は幸のいないところで作戦会議をした。人を疑うことを知らない幸は、楽しそうだからと肝試しに行く気満々だが、あの若者たちは幸におかしなことをしようとしているとしか思えなかった。

「どうする？　来るなと言われたがこっそりついていくしかないよな？」

　僕の言葉に権田は「もち！」と頷いた。

「用心棒の俺らに来てほしくないってことは、やましいことを考えてるに違いねえ。全く嫌な奴らだぜ」

「それに、肝試しと言っていたけど幸を誘い出すための嘘かもしれないぞ」

「だとしたらいよいよ放っちゃおけねえ、幸ちゃんに手を出す奴ぁ、この権田が成敗してくれるわ！」

　こんなとき権田の勇敢さが悔しいが頼もしくもあった。幸を守りたい気持ちは山々だが、気が小さいために一人ではいくのが心細いし、脳筋……いや、腕っぷしの強い権田と違いひ弱な自分だけであの若者たちを相手にすることは不可能に思えたからだ。