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4. 不思議な村
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「おい、ここどこだよ?」
あてどもなく走り続ける車の中、権田は怪訝そうに窓の外を見ている。元いた場所に戻るつもりが、どんどん見知らぬ田舎道に入って行ってしまったいた。
間も無く一面田んぼで乾拭き屋根の民家がぽつぽつ並ぶ農道に出た。不思議なことにトラクターは一台もなく人の気配もない。道も舗装されておらず雑草が生い茂っている。日本昔話に出てくる村さながらの光景に権田は「今時こんな場所本当にあるんだな?」と写真を撮ろうと携帯を取り出すも、「あれ? 電源落ちちまったよ、おかしいな」と舌打ちをした。
これまで道に迷うことは何度もあったがこんな道は一度も通ったことがない。
ザーザーという砂嵐がカーステレオから聴こえる。一度車を停めてスマートフォンのナビアプリを開こうとしたが画面は真っ黒で、電源を押しても反応しない。
とりあえず当てずっぽうに走ってみようともう一度エンジンをかけようとしたが、車は動かない。何度キーを捻っても駄目だ。降りてバンパーを開け部品をあちこちいじってみたが変化無し。オカルト映画ではこのあと大体碌でもない事が起こる。
「腹減ったんだけど」
車から出てきた権田がぼやいた。
「知ったことか」
実を言うと僕も空腹を感じ始めていた。権田は「ここで飢え死にか~、短い人生だったなあ」と大袈裟に頭を抱えてみせてから、「なんてな」とニヤリと笑いポケットから糖質オフのグラノーラバーを取り出した。権田のくせにこんなお洒落でヘルシーな物食べるとは。心で一人ごちて差し出された半分を受け取り齧る。既に辺りは濃紺の闇に包まれていた。
何度エンジンをかけようとしても車が動き出す気配がないため、仕方なく車中泊をすることにした。
「漫画とかねーの?」
緊急事態に鼻くそをほじりながら訊いてくる権田の呑気さが癪に障る。何でよりにもよってこの男と夜を明かさなければならないのだろう。ないと短く答えて目を閉じてしばらくした時、コンコンと運転席の窓を叩く音がした。見ると若い着物姿の女性の顔が不思議そうに覗いている。
「ここで何をしているんですか?」
ドアを開けると彼女は訊ねた。
事情を話すと女性は怪訝な様子で首を傾げた。
「よく分からないけど……夜も遅いし家に来ませんか?」
あてどもなく走り続ける車の中、権田は怪訝そうに窓の外を見ている。元いた場所に戻るつもりが、どんどん見知らぬ田舎道に入って行ってしまったいた。
間も無く一面田んぼで乾拭き屋根の民家がぽつぽつ並ぶ農道に出た。不思議なことにトラクターは一台もなく人の気配もない。道も舗装されておらず雑草が生い茂っている。日本昔話に出てくる村さながらの光景に権田は「今時こんな場所本当にあるんだな?」と写真を撮ろうと携帯を取り出すも、「あれ? 電源落ちちまったよ、おかしいな」と舌打ちをした。
これまで道に迷うことは何度もあったがこんな道は一度も通ったことがない。
ザーザーという砂嵐がカーステレオから聴こえる。一度車を停めてスマートフォンのナビアプリを開こうとしたが画面は真っ黒で、電源を押しても反応しない。
とりあえず当てずっぽうに走ってみようともう一度エンジンをかけようとしたが、車は動かない。何度キーを捻っても駄目だ。降りてバンパーを開け部品をあちこちいじってみたが変化無し。オカルト映画ではこのあと大体碌でもない事が起こる。
「腹減ったんだけど」
車から出てきた権田がぼやいた。
「知ったことか」
実を言うと僕も空腹を感じ始めていた。権田は「ここで飢え死にか~、短い人生だったなあ」と大袈裟に頭を抱えてみせてから、「なんてな」とニヤリと笑いポケットから糖質オフのグラノーラバーを取り出した。権田のくせにこんなお洒落でヘルシーな物食べるとは。心で一人ごちて差し出された半分を受け取り齧る。既に辺りは濃紺の闇に包まれていた。
何度エンジンをかけようとしても車が動き出す気配がないため、仕方なく車中泊をすることにした。
「漫画とかねーの?」
緊急事態に鼻くそをほじりながら訊いてくる権田の呑気さが癪に障る。何でよりにもよってこの男と夜を明かさなければならないのだろう。ないと短く答えて目を閉じてしばらくした時、コンコンと運転席の窓を叩く音がした。見ると若い着物姿の女性の顔が不思議そうに覗いている。
「ここで何をしているんですか?」
ドアを開けると彼女は訊ねた。
事情を話すと女性は怪訝な様子で首を傾げた。
「よく分からないけど……夜も遅いし家に来ませんか?」
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