烏と楓の木

突然の告白③

11月14日(日)

　オーシャンがアレックスと映画を観に行った。エイヴェリーに振られてから少しの間は傷心していたけれど、最近はアレックスといい感じなのかも。

　オーシャンにはアレックスみたいなタイプが合う気がする。二人は幼馴染でお互いの性格もよく知ってるし、趣味も考え方もよく似てるから。

　せっかくの日曜だっていうのに、休み前にあんなことがあったせいで気持ちがイマイチ晴れない。

　昨日も午後からエメラルドの家でバンドの練習があったけれど、ソラは来なかった。顔を合わせないで済んだからほっとしたけど、バンドのメンバーは心配してるみたいだった。もちろん私もソラのことが心配だ。でも今は彼女と話す気になれない。

　エメラルドはまだ喉の調子が戻っていないみたいだった。

「雨の中飼い猫のチャッキーを探そうとして、風邪引いたの。結局チャッキーは外じゃなくてクローゼットの中にいたんだけど。風邪って最低だわ
、全然気持ちよく歌えない。歌えるのは聖飢魔IIくらい」

　エメラルドが突然聖飢魔IIの名前を出したのがおかしくて、私は笑い転げてしまった。エメラルドは外国のヘヴィメタルやパンクのバンドにやたらと詳しい。オーシャンのクラスメイトのローズの兄がやってるThe clover fieldザ・クローバー・フィールドというパンクバンドが好きで、よくライブを観に行っている。

　他のバンドメンバーは聖飢魔IIが何なのかすら知らなくて、YouTubeで検索したライブ動画を観始めた。

　エメラルドが「デーモン閣下超クールでしょ！　この人たち、地獄から来た悪魔なのよ！　歌唱力も凄いんだから！」って言って、ピアノの子が「うん！　凄く格好いいベヴィメタね！　特にギターがエグい。地獄から来たなんて痺れる！」と感激していた。他のメンバーはしっくりきていないみたいだった。エメラルドがボーカルのデーモン閣下は相撲に詳しいという豆知識を披露したけれど、反応は薄かった。

　バンドの練習が終わったあと、サロンに髪を切りに行ってきた。二の腕まで伸びていた髪を肩まで切って、すごくスッキリした。髪を切っただけで気持ちが晴れるんだから不思議だ。オーシャンは似合ってるって褒めてくれたけど、エイヴェリーは何て言ってくれるかな。