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料理大会③
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時間がギリギリに迫ってきた。肉じゃがは火が通ってるか微妙なところだが、味はかなり美味い。手巻き寿司は形も味も抜群だ。醤油につけると余計に素材の旨みが強調されていい。
味噌汁は味噌を入れれば終わり。その段階になって、メグが恐ろしい台詞をつぶやいた。
「ヤバい……味噌忘れてきた」
「はぁ~?!」
この段階でそれに気づくなんて、遅すぎる。
何か味噌の代わりになるものはないか。
考えていると、隣の班のソニアがコンソメとケチャップを持ってきた。
「これ使えば?」
結局味噌汁じゃなくて、豆腐の入ったミネストローネになった。
終わりまであと五分。
アンナがわざと通りがかりに、ティファニーが紙皿に作っておいたドレッシングに肩をぶつけて地面に落としたのを見た。
「あら、ごめん」と本人はヘラヘラしている。
「おい、何すんだ!!」
怒りのあまり叫ぶ。
「人が一生懸命作ったものを台無しにするなんて、最低よ!」
アレックスも続く。クレアとエイヴェリーは離れた場所で作業していなかったから、見えていなかったようだ。
「ごめんって謝ったでしょ? 何なのよ……みんなして責めて」
アンナが嘘泣きを始め、皆の注目が集まる。「おいおい、何揉めてんだ?」と担任がやってくるが、「何でもないです」と毅然とティファニーが答えた。
「いいよオーシャン、アレックス。もう一回作るから」
そう言って仕切り直して、終了間際にドレッシングを作り終えたティファニーは、それを素早くサラダにかけた。
終了のホイッスルが鳴る。
先生たちの味見が始まる。最後が俺たちの班だ。緊張が高まる。
「ティファニー、よくやった」
肩を叩くと、ティファニーは泣き出しそうな顔で俯いた。
担任のステファン先生、副担任のキャロライン先生、校長がやってきて巻き寿司を口に含むなり、「うん! うまい!」と一斉に声を上げる。
ミネストローネは薄味で評価が低く5点だったけれど、巻き寿司もサラダも鶏じゃがも、10点満点を貰えた。
「ごめん、みんな……」
メグが落ち込んでいるのをクレアが慰める。
「誰だって忘れることくらいあるわ」
「そうそう、無事に完成してよかったじゃねーか。5点も貰えたし!」
「そうだよ。他は満点だったから、下手したら優勝狙えるかもね?」
アレックスは自信ありげだ。
俺は無い頭を必死に働かせて計算していた。
インド料理を作ったアンナたちの班が全部で28点、ソニアたちの班が34点、他の2班は30点で、俺の班は35点だった。
ということはーー。
「優勝は、オーシャンの班!!」
担任の声に、俺たちは抱き合って喜んだ。
味噌汁は味噌を入れれば終わり。その段階になって、メグが恐ろしい台詞をつぶやいた。
「ヤバい……味噌忘れてきた」
「はぁ~?!」
この段階でそれに気づくなんて、遅すぎる。
何か味噌の代わりになるものはないか。
考えていると、隣の班のソニアがコンソメとケチャップを持ってきた。
「これ使えば?」
結局味噌汁じゃなくて、豆腐の入ったミネストローネになった。
終わりまであと五分。
アンナがわざと通りがかりに、ティファニーが紙皿に作っておいたドレッシングに肩をぶつけて地面に落としたのを見た。
「あら、ごめん」と本人はヘラヘラしている。
「おい、何すんだ!!」
怒りのあまり叫ぶ。
「人が一生懸命作ったものを台無しにするなんて、最低よ!」
アレックスも続く。クレアとエイヴェリーは離れた場所で作業していなかったから、見えていなかったようだ。
「ごめんって謝ったでしょ? 何なのよ……みんなして責めて」
アンナが嘘泣きを始め、皆の注目が集まる。「おいおい、何揉めてんだ?」と担任がやってくるが、「何でもないです」と毅然とティファニーが答えた。
「いいよオーシャン、アレックス。もう一回作るから」
そう言って仕切り直して、終了間際にドレッシングを作り終えたティファニーは、それを素早くサラダにかけた。
終了のホイッスルが鳴る。
先生たちの味見が始まる。最後が俺たちの班だ。緊張が高まる。
「ティファニー、よくやった」
肩を叩くと、ティファニーは泣き出しそうな顔で俯いた。
担任のステファン先生、副担任のキャロライン先生、校長がやってきて巻き寿司を口に含むなり、「うん! うまい!」と一斉に声を上げる。
ミネストローネは薄味で評価が低く5点だったけれど、巻き寿司もサラダも鶏じゃがも、10点満点を貰えた。
「ごめん、みんな……」
メグが落ち込んでいるのをクレアが慰める。
「誰だって忘れることくらいあるわ」
「そうそう、無事に完成してよかったじゃねーか。5点も貰えたし!」
「そうだよ。他は満点だったから、下手したら優勝狙えるかもね?」
アレックスは自信ありげだ。
俺は無い頭を必死に働かせて計算していた。
インド料理を作ったアンナたちの班が全部で28点、ソニアたちの班が34点、他の2班は30点で、俺の班は35点だった。
ということはーー。
「優勝は、オーシャンの班!!」
担任の声に、俺たちは抱き合って喜んだ。
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