3 / 74
2. 秋のキャンプ②
しおりを挟む
時は遡ること二時間前ーー。
俺たちは九月初めの秋のクラスイベントで、パリの野外活動センターにキャンプに来ていた。隣町の共学の高校の二年生もたまたま同じ日にいて、緑の芝生の上は男子に飢えた女子たちの出会いの場になっていた。
二校のニクラスーー総勢六十人ほどが合わさって歌やゲームなどのレクリエーションをしたあとは、自由時間になる。他の学校の生徒と交流してもいいことになっているから、クラスメイトたちの大半はこぞって他校の男子たちに声をかけにいく。
ティファニーはついこの間までいつも一緒にいたローズとアンナとは離れ、彼女たちのようにいつもよりオクターブ高い声で男子たちと交わろうとはせず、隅っこでメグと一緒に持ってきた漫画を手に話をしている。夏休み前に三人の中で何かトラブルがあったのか、ティファニーは最近仲間外れにされている。聞こえよがしに悪口を言われたりして、居心地の悪い思いをしているようだ。
レクリエーションの後班ごとに夕ご飯を作る。班長は俺だ。立候補した理由は、好きなメンバーを自由に選べるっていう特権があるから。班決めのHRで一番最初にエイヴェリーを選んで、次に親友のアレックス、三番目にメグ、四番目にティファニーを選んだ。クラスで孤立していて不憫に思ったからだ。
何でメグを選んだかって、特別仲が良かったわけじゃないけれど、彼女がいるだけで雰囲気が和むからだ。
班決めの日、休んでいたクレアを入れるかどうか悩んだ。皆クレアは舞台の仕事で忙しくてキャンプに来られないと思っていたから、どの班でも敢えて外していたのだ。
エイヴェリーとクレアは、この頃は付き合ってるんじゃないかと噂されるくらい親密だ。超人気舞台役者のクレアは多忙な日々を送っているが、この頃はエイヴェリーに会いたいがために最後の時限だけ登校したり、放課後ひょっこり教室にやってきたりする。
前に二人が裏庭で手を繋いで歩いているのを見た。顔を見合わせ笑い合って、今にもキスをするんじゃないかとそわそわしたほどだった。
そんな時俺は、焦ると同時に激しく嫉妬した。クレアが羨ましかった。俺はクレアよりたくさんの時間をエイヴェリーと過ごすチャンスがあるのにライバルより積極的になれない。告白も先を越されたし、二人で遊んでいても緊張してろくに話もできない。この頃は特にそうだ。双子の妹のシエルには沢山協力してもらっているのに、臆病な自分が情けなくなる。
エイヴェリーが休みの日、クレアは見るからに寂しそうだ。逆にクレアが急に休むと、エイヴェリーが彼女を探し回っていることもある。
二人は否定をするけれど、俺から見たらくっつくのは時間の問題に見える。
クレアを班に入れたのは、エイヴェリーに念の為に入れてやれと言われたからだ。もしもクレアがキャンプに参加した時、どの班にも入れなかったら可哀想だからと。
「クレアも私たちと一緒の班になりたいって言ってたの。入れてあげましょう」
彼女のその言葉がなかったら、俺はクレアをメンバーに入れていなかったかもしれない。つくづく自分って嫌な奴だと思う。
夕食の準備をしていたら、隣の班のアンナがやってきた。肩に青いクーラーボックスをかけている。担任に飲み物を配れと頼まれたらしい。
ティファニーはアンナと関わりたくなさそうにその場からいなくなった。
「飲み物何があるんだ?」と訊くとアンナはボックスの蓋を開けてみせた。コーラやミネラルウォーター、スポーツドリンク、オレンジやグレープなどのジュースがある。
コーラ四本とグレープジュースを取り出した。「サンキュー」とお礼を伝えると彼女は愛想良く笑って他の班に配りに行った。
俺たちは九月初めの秋のクラスイベントで、パリの野外活動センターにキャンプに来ていた。隣町の共学の高校の二年生もたまたま同じ日にいて、緑の芝生の上は男子に飢えた女子たちの出会いの場になっていた。
二校のニクラスーー総勢六十人ほどが合わさって歌やゲームなどのレクリエーションをしたあとは、自由時間になる。他の学校の生徒と交流してもいいことになっているから、クラスメイトたちの大半はこぞって他校の男子たちに声をかけにいく。
ティファニーはついこの間までいつも一緒にいたローズとアンナとは離れ、彼女たちのようにいつもよりオクターブ高い声で男子たちと交わろうとはせず、隅っこでメグと一緒に持ってきた漫画を手に話をしている。夏休み前に三人の中で何かトラブルがあったのか、ティファニーは最近仲間外れにされている。聞こえよがしに悪口を言われたりして、居心地の悪い思いをしているようだ。
レクリエーションの後班ごとに夕ご飯を作る。班長は俺だ。立候補した理由は、好きなメンバーを自由に選べるっていう特権があるから。班決めのHRで一番最初にエイヴェリーを選んで、次に親友のアレックス、三番目にメグ、四番目にティファニーを選んだ。クラスで孤立していて不憫に思ったからだ。
何でメグを選んだかって、特別仲が良かったわけじゃないけれど、彼女がいるだけで雰囲気が和むからだ。
班決めの日、休んでいたクレアを入れるかどうか悩んだ。皆クレアは舞台の仕事で忙しくてキャンプに来られないと思っていたから、どの班でも敢えて外していたのだ。
エイヴェリーとクレアは、この頃は付き合ってるんじゃないかと噂されるくらい親密だ。超人気舞台役者のクレアは多忙な日々を送っているが、この頃はエイヴェリーに会いたいがために最後の時限だけ登校したり、放課後ひょっこり教室にやってきたりする。
前に二人が裏庭で手を繋いで歩いているのを見た。顔を見合わせ笑い合って、今にもキスをするんじゃないかとそわそわしたほどだった。
そんな時俺は、焦ると同時に激しく嫉妬した。クレアが羨ましかった。俺はクレアよりたくさんの時間をエイヴェリーと過ごすチャンスがあるのにライバルより積極的になれない。告白も先を越されたし、二人で遊んでいても緊張してろくに話もできない。この頃は特にそうだ。双子の妹のシエルには沢山協力してもらっているのに、臆病な自分が情けなくなる。
エイヴェリーが休みの日、クレアは見るからに寂しそうだ。逆にクレアが急に休むと、エイヴェリーが彼女を探し回っていることもある。
二人は否定をするけれど、俺から見たらくっつくのは時間の問題に見える。
クレアを班に入れたのは、エイヴェリーに念の為に入れてやれと言われたからだ。もしもクレアがキャンプに参加した時、どの班にも入れなかったら可哀想だからと。
「クレアも私たちと一緒の班になりたいって言ってたの。入れてあげましょう」
彼女のその言葉がなかったら、俺はクレアをメンバーに入れていなかったかもしれない。つくづく自分って嫌な奴だと思う。
夕食の準備をしていたら、隣の班のアンナがやってきた。肩に青いクーラーボックスをかけている。担任に飲み物を配れと頼まれたらしい。
ティファニーはアンナと関わりたくなさそうにその場からいなくなった。
「飲み物何があるんだ?」と訊くとアンナはボックスの蓋を開けてみせた。コーラやミネラルウォーター、スポーツドリンク、オレンジやグレープなどのジュースがある。
コーラ四本とグレープジュースを取り出した。「サンキュー」とお礼を伝えると彼女は愛想良く笑って他の班に配りに行った。
3
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
おっぱい揉む?と聞かれたので揉んでみたらよくわからない関係になりました
星宮 嶺
青春
週間、24hジャンル別ランキング最高1位!
高校2年生の太郎の青春が、突然加速する!
片想いの美咲、仲の良い女友達の花子、そして謎めいた生徒会長・東雲。
3人の魅力的な女の子たちに囲まれ、太郎の心は翻弄される!
「おっぱい揉む?」という衝撃的な誘いから始まる、
ドキドキの学園生活。
果たして太郎は、運命の相手を見つけ出せるのか?
笑いあり?涙あり?胸キュン必至?の青春ラブコメ、開幕!
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる