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27. クリスマスイブ
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クリスマスイブの日、家の外は雪が積もっていた。私はロマンと一緒に子どものように雪だるまづくりと雪合戦をしたあと、父と母とロマンと一緒に、一足早いケーキを食べた。ロマンはふざけてサンタ帽を被って、ジングルベルの替え歌を歌って私を笑わせた。そのあとで両親と私の前で、久しぶりにチェロを演奏した。
思えばロマンとこうしてイブを一緒に過ごすのは久しぶりだった。彼女はイブの日には必ず女子からデートの誘いがかかっていたから。
「エイヴェリー、少し早いけどあなたにプレゼントがある」
ロマンはケーキを食べ終えた私の前までやってきて、じゃーん!と言って、後ろに隠していた大きな赤い紙に包まれ緑色のリボンがかけられた箱を手渡した。
受け取って開けると、中には前に私が欲しいと言ったキャメルのバッグが入っていた。
「ありがとう、ロマン」
「どういたしまして」
ロマンは優しく微笑んで、
「妹から姉へのプレゼントはないの?」
と尋ねた。ロマンへのプレゼントは、今日買いに行く予定だった。まだ買っていないと言うのも気が引けたので、
「明日のお楽しみ」
と答えておいた。
その時テーブルの上のスマートフォンが鳴った。液晶にはシエルの名前が表示されている。電話を取ると、『メリークリスマスイブ』という声が飛び込んできた。
「メリークリスマスイブ」
『ねぇエイヴェリー、突然なんだけどこれから出てこれない?』
「どうしたの? いきなり」
『オーシャンへのクリスマスプレゼントを選びにビヨンの町まで行きたいんだけど、一人で行くのもなって』
「いいけど……。どうしてまたビヨンまで?」
ビヨンまでは車で片道1.5時間かかる。しかもこの積雪だ。バスで行っても、倍くらいの時間がかかるに違いない。
『あそこ、案外良い店があるのよ』
「いいわよ、私もちょうど買いたいものがあったし」
電話を切り、父にダメ元で頼んだらビヨンまで乗せて行ってもらえることになった。ロマンは何故か落ち着かなげにしている。
「誰から電話?」
「シエルってゆう友達よ」
「デートの誘いとか?」
「違うわよ、買い物に付き合ってほしいんですって」
そう、と少しホッとしたような顔をした後で、ロマンは躊躇いがちに尋ねた。
「私も行って良い?」
「どうして?」
「あなたが心配だから」
父がついて行くのに心配というのもおかしな話だと思いながらも、父が乗せて行ってくれることと、姉がついて行きたがっていることをメールでシエルに伝えたら、あっさりとOKを貰えた。
シエル宅に着くまで、助手席のロマンは仕切りに質問をし続けてきた。シエルとはどこで会ったのか、どのくらいの付き合いなのか、彼女の家に何日くらい泊まったのか。私が答えたその後で、ロマンは次はこんな質問をしてきた。
「今日シエルがあなたを買い物に誘ったのには、本当に深い意味はないんだよね?」
「まさか、あるわけないでしょ? 彼女は友達だもの」
「それならいいけど……」
ロマンはまだ何か聞きたそうにしていたが、車がシエルの家の近くに着き、雪のように白いコートとサンタの服のような赤いマフラーを巻いたシエルが乗り込んできたので、この話は終了した。
父は世にも珍しい私の友達が来たことでテンションが上がり、シエルにあれやこれやと質問をしていた。家族は何人か、お姉さんとは仲がいいのか、何の楽器をやってるのかなど。
「お父さん、いい加減シエルを質問攻めにするのはやめて」
放っておけば迷惑リポーターと化しそうな父を諌めた私を、シエルは笑顔で宥めた。
「いいのよ、楽しいし」
気を遣ったロマンが父にフットボールの話題を振ると、父はたちまちそっちに食いついた。
「あなたと出かけるってオーシャンに言ったら、すごいヤキモチ妬かれたわ」
「何でまた?」
「彼女、あなたに気があるのよ。気づかない?」
「全然気づかないけど」
「鈍いのね」
数秒後、シエルは尋ねた。
「オーシャンのこと、どう思ってる?」
「どうって……。親切にしてくれるし、口は悪いけど中身はすごく良い人だと思うわ」
「そう。じゃあ伝えとくわ。あなたが言う通り、彼女根はすごく優しいの。私と違ってね。きっとあなたを幸せにしてくれると思うんだけど……。まだそんな気にはなれないわよね」
「そうね、流石にね」
クレアとオーシャン。このニ日間で、私に想いを寄せているらしい二人の人間の存在が明らかになった。だが、その二人のどちらも私は今のところ、友人以上に見ることができていない。いつか、彼女たちに特別な感情を抱くようなビジョンも描くことはできない。彼女たちは私にとって、良き仲間であり戦友のようなものなのだ。だからこそ、もう何歩か進んだ関係になることが想像がつかないのだった。
思えばロマンとこうしてイブを一緒に過ごすのは久しぶりだった。彼女はイブの日には必ず女子からデートの誘いがかかっていたから。
「エイヴェリー、少し早いけどあなたにプレゼントがある」
ロマンはケーキを食べ終えた私の前までやってきて、じゃーん!と言って、後ろに隠していた大きな赤い紙に包まれ緑色のリボンがかけられた箱を手渡した。
受け取って開けると、中には前に私が欲しいと言ったキャメルのバッグが入っていた。
「ありがとう、ロマン」
「どういたしまして」
ロマンは優しく微笑んで、
「妹から姉へのプレゼントはないの?」
と尋ねた。ロマンへのプレゼントは、今日買いに行く予定だった。まだ買っていないと言うのも気が引けたので、
「明日のお楽しみ」
と答えておいた。
その時テーブルの上のスマートフォンが鳴った。液晶にはシエルの名前が表示されている。電話を取ると、『メリークリスマスイブ』という声が飛び込んできた。
「メリークリスマスイブ」
『ねぇエイヴェリー、突然なんだけどこれから出てこれない?』
「どうしたの? いきなり」
『オーシャンへのクリスマスプレゼントを選びにビヨンの町まで行きたいんだけど、一人で行くのもなって』
「いいけど……。どうしてまたビヨンまで?」
ビヨンまでは車で片道1.5時間かかる。しかもこの積雪だ。バスで行っても、倍くらいの時間がかかるに違いない。
『あそこ、案外良い店があるのよ』
「いいわよ、私もちょうど買いたいものがあったし」
電話を切り、父にダメ元で頼んだらビヨンまで乗せて行ってもらえることになった。ロマンは何故か落ち着かなげにしている。
「誰から電話?」
「シエルってゆう友達よ」
「デートの誘いとか?」
「違うわよ、買い物に付き合ってほしいんですって」
そう、と少しホッとしたような顔をした後で、ロマンは躊躇いがちに尋ねた。
「私も行って良い?」
「どうして?」
「あなたが心配だから」
父がついて行くのに心配というのもおかしな話だと思いながらも、父が乗せて行ってくれることと、姉がついて行きたがっていることをメールでシエルに伝えたら、あっさりとOKを貰えた。
シエル宅に着くまで、助手席のロマンは仕切りに質問をし続けてきた。シエルとはどこで会ったのか、どのくらいの付き合いなのか、彼女の家に何日くらい泊まったのか。私が答えたその後で、ロマンは次はこんな質問をしてきた。
「今日シエルがあなたを買い物に誘ったのには、本当に深い意味はないんだよね?」
「まさか、あるわけないでしょ? 彼女は友達だもの」
「それならいいけど……」
ロマンはまだ何か聞きたそうにしていたが、車がシエルの家の近くに着き、雪のように白いコートとサンタの服のような赤いマフラーを巻いたシエルが乗り込んできたので、この話は終了した。
父は世にも珍しい私の友達が来たことでテンションが上がり、シエルにあれやこれやと質問をしていた。家族は何人か、お姉さんとは仲がいいのか、何の楽器をやってるのかなど。
「お父さん、いい加減シエルを質問攻めにするのはやめて」
放っておけば迷惑リポーターと化しそうな父を諌めた私を、シエルは笑顔で宥めた。
「いいのよ、楽しいし」
気を遣ったロマンが父にフットボールの話題を振ると、父はたちまちそっちに食いついた。
「あなたと出かけるってオーシャンに言ったら、すごいヤキモチ妬かれたわ」
「何でまた?」
「彼女、あなたに気があるのよ。気づかない?」
「全然気づかないけど」
「鈍いのね」
数秒後、シエルは尋ねた。
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「どうって……。親切にしてくれるし、口は悪いけど中身はすごく良い人だと思うわ」
「そう。じゃあ伝えとくわ。あなたが言う通り、彼女根はすごく優しいの。私と違ってね。きっとあなたを幸せにしてくれると思うんだけど……。まだそんな気にはなれないわよね」
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