草花の祈り

20. 演劇コンペティション

　翌日の演劇コンペは、講堂が満席になるほどの盛況ぶりだった。朝から続く緊張感と、高揚感に胸が高鳴った。

　校長の長たらしい挨拶と、生徒会長の挨拶が終わったあと、最初は1年A組の発表で、次に私たちのクラスの発表になる。

　A組の劇は『ズートピア』という、森を舞台にした動物たちが主役のコメディだった。役者が皆クマやシカ、ウサギ、サルなど動物の着ぐるみを着て、顔にカラフルなヒゲなどのペインティングを施し、お互いの見た目や習性などをネタにしたシュールなジョークを飛ばし合う。終始会場は湧きっぱなしだった。お陰でネクストバッターである私たちの緊張もほぐれた。

　A組の発表が終わり、次は私たちの番だ。舞台袖で、緊張している私たちを奮い立たせたのはオーシャンとクレアだった。

「やるべきことはやった。あとは楽しむだけだ」

　オーシャンが笑顔で言うと、

「そうそう、本番は一度きり。努力は裏切らない。緊張なんて忘れて、せっかくだから思いっきり楽しみましょう！」

　とクレアが続く。私たちは互いに頑張ろうと声をかけあった。以前まであったグループの垣根などなかった。最初はバラバラだった私たちは、ミュージカルの練習を通して今日までに一つになっていた。

「じゃあ、行ってくるわ」

　黒のスリットの入ったロングドレスを纏った晴れやかな顔のソニアが、ステージへと向かった。頑張れ、と背中にクラスメイトたちの声がかかる。

　私たちの出し物のタイトルを告げるアナウンスのあと長いブザーの音が会場に鳴り響く。

ーーもうすぐ幕が上がる。