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34. 小さなものたち
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サルサが仔猫を6匹産んだ。色は白、キジ、茶虎、グレー、黒、タキシード。三毛猫のサルサは人一倍、いや猫一倍母性本能が強い。懸命に一匹一匹を舌で舐め、一匹いなくなろうものなら大きな鳴き声を上げて必死に探し回る。私が仔猫を愛でようと手に取るだけで、奪われると思うのかシャーッと威嚇する。
本当は皆家に置いてやりたいが現実的に考えて不可能なので、乳離れした頃に猫好きの知り合いに譲渡することにした。最初に連絡をしたのはミシェルだ。彼女はすぐにベンとポニーを引き連れて家にやってきた。
「「可愛い!!」」
双子の兄妹は、ソファの上でじゃれ合う仔猫たちを見るなり感嘆の声を同時に上げた。彼らは仔猫を1匹ずつその小さな両手で抱き締めた。
「可愛いだろ? そうだろ?」と私は得意になって胸を張った。自分が産んだわけでもないのに、こうして愛猫の子たちのことを褒められるとなぜか無性に嬉しい。
「この子は白いからホイップね、そしてこの白黒の子はマスク」
ポニーが勝手に仔猫たちに名前をつけ始めた。
「こいつはまっくろくろすけだ!」
黒い仔猫を指さしたベンを、「しっ、びっくりするから大きな声を出しちゃ駄目」とミシェルが嗜める。
「私は茶虎の猫が可愛いと思うわ。ねぇ、そう思わない?」
笑顔のミシェルが弟たちに見えない圧をかけ始めた。
「まっくろくろすけがいい!!」
「ホイップの方が可愛いわ!!」
双子が喧嘩をしている間にミシェルは茶虎猫を抱き上げると、人差し指で優しく喉を掻いた。
「いやもう、この子推しで決まりだわ」
結局騒ぎ立てる双子をミシェルが年長者の権限でねじ伏せて、茶虎の仔猫は彼女たちの家族の一員になったのだった。
彼らが帰ってしばらくしてクレアがやってきた。広い家に一人暮らしの彼女は、以前から猫を飼いたいと言っていた。クレアは殆ど悩むことなく白い仔猫を抱き上げた。
「この子に決めた」
まるでポケモンを闘わせる時のように彼女は言った。
「即断即決ね」
「一目惚れってこのことね。見た瞬間運命を感じた」
クレアはそっと仔猫の腹に鼻を押し付けた。
その後キジ虎はジョーダンに、タキシードはウミに引き取られた。
♦︎
2匹だけ残ったグレーと黒の仔猫をルーシーが見に来たのは、12月の初めのことだった。ルーシーは小さな身体であちこち動き回る2ヶ月半になった仔猫たちを目を細めて眺めていた。
「小さなものを守りたくなるのは何でかしらね」
「あまりに無防備で無知で、放って置けないからじゃない?」
「子どもが生まれたらこんな感じなのかしら」
そんな台詞をこんな風に温かい笑顔を浮かべて言うルーシーは、良い母親になるに違いない。
「かもね」
かくいう私は子どもどころか、誰かと恋をして結婚して家庭を築くイメージすら全く持てていない。それでも今思うのは、ルーシーが誰か愛する人と出会って幸せになって欲しいということ。
「この黒い仔猫をもらっちゃったら、お母さん猫は寂しがらないかしら?」
ルーシーは不安げだ。
「最初は寂しがるでしょうね。だけど一匹は残すつもりだから……」
「そう……。じゃあ、この子をもらっていくわ」
リビングのソファで昼寝を始めたばかりの黒い仔猫を指して、ルーシーは微笑んだ。
本当は皆家に置いてやりたいが現実的に考えて不可能なので、乳離れした頃に猫好きの知り合いに譲渡することにした。最初に連絡をしたのはミシェルだ。彼女はすぐにベンとポニーを引き連れて家にやってきた。
「「可愛い!!」」
双子の兄妹は、ソファの上でじゃれ合う仔猫たちを見るなり感嘆の声を同時に上げた。彼らは仔猫を1匹ずつその小さな両手で抱き締めた。
「可愛いだろ? そうだろ?」と私は得意になって胸を張った。自分が産んだわけでもないのに、こうして愛猫の子たちのことを褒められるとなぜか無性に嬉しい。
「この子は白いからホイップね、そしてこの白黒の子はマスク」
ポニーが勝手に仔猫たちに名前をつけ始めた。
「こいつはまっくろくろすけだ!」
黒い仔猫を指さしたベンを、「しっ、びっくりするから大きな声を出しちゃ駄目」とミシェルが嗜める。
「私は茶虎の猫が可愛いと思うわ。ねぇ、そう思わない?」
笑顔のミシェルが弟たちに見えない圧をかけ始めた。
「まっくろくろすけがいい!!」
「ホイップの方が可愛いわ!!」
双子が喧嘩をしている間にミシェルは茶虎猫を抱き上げると、人差し指で優しく喉を掻いた。
「いやもう、この子推しで決まりだわ」
結局騒ぎ立てる双子をミシェルが年長者の権限でねじ伏せて、茶虎の仔猫は彼女たちの家族の一員になったのだった。
彼らが帰ってしばらくしてクレアがやってきた。広い家に一人暮らしの彼女は、以前から猫を飼いたいと言っていた。クレアは殆ど悩むことなく白い仔猫を抱き上げた。
「この子に決めた」
まるでポケモンを闘わせる時のように彼女は言った。
「即断即決ね」
「一目惚れってこのことね。見た瞬間運命を感じた」
クレアはそっと仔猫の腹に鼻を押し付けた。
その後キジ虎はジョーダンに、タキシードはウミに引き取られた。
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2匹だけ残ったグレーと黒の仔猫をルーシーが見に来たのは、12月の初めのことだった。ルーシーは小さな身体であちこち動き回る2ヶ月半になった仔猫たちを目を細めて眺めていた。
「小さなものを守りたくなるのは何でかしらね」
「あまりに無防備で無知で、放って置けないからじゃない?」
「子どもが生まれたらこんな感じなのかしら」
そんな台詞をこんな風に温かい笑顔を浮かべて言うルーシーは、良い母親になるに違いない。
「かもね」
かくいう私は子どもどころか、誰かと恋をして結婚して家庭を築くイメージすら全く持てていない。それでも今思うのは、ルーシーが誰か愛する人と出会って幸せになって欲しいということ。
「この黒い仔猫をもらっちゃったら、お母さん猫は寂しがらないかしら?」
ルーシーは不安げだ。
「最初は寂しがるでしょうね。だけど一匹は残すつもりだから……」
「そう……。じゃあ、この子をもらっていくわ」
リビングのソファで昼寝を始めたばかりの黒い仔猫を指して、ルーシーは微笑んだ。
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