ロマンドール

たらこ飴

文字の大きさ
上 下
14 / 75

12. クレイジーな1日の始まり

しおりを挟む
 ミシェルから呼び出しがかかったのは、ブルーベルが撮影場所を訪れた翌日ーー久しぶりの休日の昼過ぎのことだった。寝起きの掠れ声で電話に出た私にミシェルは今から来れるかと尋ねた。

「え、無理。今日は忙しいの、これからまた寝る予定だから」

『それ忙しいって言わないでしょ』

 電話の向こうの友人はため息混じりに突っ込んだ。まるで何かの漫画で読んだことのあるようなやりとりだ。

「とにかく寝るから、おやすみ」

 ミシェルのことだからまた面倒なことを頼もうとしているに違いない。「これから寝る」というのはパワーワードなのだ、少なくとも私にとっては。

『寝るな! とりあえず話を聞いて』

 通話終了ボタンを押そうとした私を大声で制したミシェルは、今日私に電話した理由を告げた。

『ハウスキーパーのニーナに誕生日プレゼントをあげたいのよ。ニーナが夕方に家に来るまでに選びに行きたいから、その間ベンとポニーを見ててもらいたいの』

 ベンとポニーというのはミシェルの家にいる5歳の元気過ぎる双子の兄妹で、ミシェルの母ガーネットの歳の離れた妹セシリアの産んだ子供たちのことだ。複雑な事情によりセシリアは姉と同じく未婚のまま双子を産むことを決めたが、出産してすぐにセシリアが病気で亡くなり、姉であるガーネットが引き取ることになったのだという。

 以前からミシェルは完璧に家事や掃除、育児の手伝いまでしてくれるニーナのことをよく気にかけていた。ぶっきらぼうだけれど、ミシェルは案外優しいところがある。

「分かった、これから行くわ」

 友人の頼みとあっちゃ仕方ない。私は大欠伸をかましたあと、寝起きの身体を無理やり起こしてベッドから出た。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

短編集:失情と采配、再情熱。(2024年度文芸部部誌より)

氷上ましゅ。
現代文学
2024年度文芸部部誌に寄稿した作品たち。 そのまま引っ張ってきてるので改変とかないです。作業が去年に比べ非常に雑で申し訳ない

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

私の神様は〇〇〇〇さん~不思議な太ったおじさんと難病宣告を受けた女の子の1週間の物語~

あらお☆ひろ
現代文学
白血病の診断を受けた20歳の大学生「本田望《ほんだ・のぞみ》」と偶然出会ったちょっと変わった太ったおじさん「備里健《そなえざと・けん」》の1週間の物語です。 「劇脚本」用に大人の絵本(※「H」なものではありません)的に準備したものです。 マニアな読者(笑)を抱えてる「赤井翼」氏の原案をもとに加筆しました。 「病気」を取り扱っていますが、重くならないようにしています。 希と健が「B級グルメ」を楽しみながら、「病気平癒」の神様(※諸説あり)をめぐる話です。 わかりやすいように、極力写真を入れるようにしていますが、撮り忘れやピンボケでアップできないところもあるのはご愛敬としてください。 基本的には、「ハッピーエンド」なので「ゆるーく」お読みください。 全31チャプターなのでひと月くらいお付き合いいただきたいと思います。 よろしくお願いしまーす!(⋈◍>◡<◍)。✧♡

【推しが114人もいる俺 最強!!アイドルオーディションプロジェクト】

RYOアズ
青春
ある日アイドル大好きな女の子「花」がアイドル雑誌でオーディションの記事を見つける。 憧れのアイドルになるためアイドルのオーディションを受けることに。 そして一方アイドルというものにまったく無縁だった男がある事をきっかけにオーディション審査中のアイドル達を必死に応援することになる物語。 果たして花はアイドルになることができるのか!?

鬼母(おにばば)日記

歌あそべ
現代文学
ひろしの母は、ひろしのために母親らしいことは何もしなかった。 そんな駄目な母親は、やがてひろしとひろしの妻となった私を悩ます鬼母(おにばば)に(?) 鬼母(おにばば)と暮らした日々を綴った日記。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ハルのてのひら、ナツのそら。

華子
恋愛
中学三年生のナツは、一年生の頃からずっと想いを寄せているハルにこの気持ちを伝えるのだと、決意を固めた。 人生で初めての恋、そして、初めての告白。 「ハルくん。わたしはハルくんが好きです。ハルくんはわたしをどう思っていますか」 しかし、ハルはその答えを教えてはくれなかった。 何度勇気を出して伝えてもはぐらかされ、なのに思わせぶりな態度をとってくるハルと続いてしまう、曖昧なふたりの関係。 ハルからどうしても「好き」だと言われたいナツ。 ナツにはどうしても「好き」だと言いたくないハル。 どちらも一歩もゆずれない、切ない訳がそこにはあった。 表紙はフリーのもの。

処理中です...