43 / 51
2025年5月15日③
しおりを挟む
その美術館は去年建てられたばかりの、黒いドーム型で一部がガラス張りになってるモダンな建物だった。ドームの周りは水路になっていて噴水が湧き出していた。この噴水が夜にライトアップされてオレンジ色に光るのが綺麗らしいとエスメは話したあとで、「どうせなら夜に来たかったよね」とつぶやいた。
広い芝生の庭を横切りアーチ型のエントランスをくぐると、ロビーで受付を済ませ案内標識に従いエレベーターへ乗ると2階の展示室へ向かう。今日はたまたまアダム・ホーランドというノルウェーの動物写真家の写真展をやっていた。
「私、アダムに会ったことあるのよ」
木の葉を食む白黒のキリンの写真を見ながらエスメは小さな声で言った。
「本当? どこで?」
「前に映画の撮影でカナダのトロントに行く機会があったんだけど、行きの飛行機で隣の席になったのがアダムだった。すごく気さくな人だったわ」
「へぇ、いいわね。私も話してみたいわ」
こんな素晴らしい写真が撮れるアダムと女優のエスメでは、さぞかし興味深い会話ができたことだろう。
「彼は自分のことをクィアだって言ってた。話を聞いていくうちに私もそうなんじゃないかって気づいたの」
「クィアって何?」
「異性愛者や、生まれたときと心の性が一致してる人たち以外の全ての性的マイノリティのこと」
だとしたら私の母やマディソンや、クリスティやポプラもクィアということになるのだろうか。私自身もそうかもしれない。物心ついたときから、恋愛対象は性別を問わないと漠然と思ってきた。むしろハンサムな男性よりも美しい女性に惹かれることの方が多かった。現に私は今エスメにどうしようもなく惹かれている。
「私も多分そうだわ」
両親やクリスティやポプラなどどういうわけか私の周りに同じような人が多かったために、クィアと認めること自体に全く抵抗はなかった。
キリンの写真の隣にはネオキツネザルの群れの写真が飾られている。動物に人間の言葉を当てはめていいのかは疑問だが、このネオキツネザルの群れのうちの何割かはきっとクィアだろう。
広い芝生の庭を横切りアーチ型のエントランスをくぐると、ロビーで受付を済ませ案内標識に従いエレベーターへ乗ると2階の展示室へ向かう。今日はたまたまアダム・ホーランドというノルウェーの動物写真家の写真展をやっていた。
「私、アダムに会ったことあるのよ」
木の葉を食む白黒のキリンの写真を見ながらエスメは小さな声で言った。
「本当? どこで?」
「前に映画の撮影でカナダのトロントに行く機会があったんだけど、行きの飛行機で隣の席になったのがアダムだった。すごく気さくな人だったわ」
「へぇ、いいわね。私も話してみたいわ」
こんな素晴らしい写真が撮れるアダムと女優のエスメでは、さぞかし興味深い会話ができたことだろう。
「彼は自分のことをクィアだって言ってた。話を聞いていくうちに私もそうなんじゃないかって気づいたの」
「クィアって何?」
「異性愛者や、生まれたときと心の性が一致してる人たち以外の全ての性的マイノリティのこと」
だとしたら私の母やマディソンや、クリスティやポプラもクィアということになるのだろうか。私自身もそうかもしれない。物心ついたときから、恋愛対象は性別を問わないと漠然と思ってきた。むしろハンサムな男性よりも美しい女性に惹かれることの方が多かった。現に私は今エスメにどうしようもなく惹かれている。
「私も多分そうだわ」
両親やクリスティやポプラなどどういうわけか私の周りに同じような人が多かったために、クィアと認めること自体に全く抵抗はなかった。
キリンの写真の隣にはネオキツネザルの群れの写真が飾られている。動物に人間の言葉を当てはめていいのかは疑問だが、このネオキツネザルの群れのうちの何割かはきっとクィアだろう。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
親戚のおじさんに犯された!嫌がる私の姿を見ながら胸を揉み・・・
マッキーの世界
大衆娯楽
親戚のおじさんの家に住み、大学に通うことになった。
「おじさん、卒業するまで、どうぞよろしくお願いします」
「ああ、たっぷりとかわいがってあげるよ・・・」
「・・・?は、はい」
いやらしく私の目を見ながらニヤつく・・・
その夜。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる