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第3章〜新たな出発〜
ラストショー④
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温かい空気の中最終公演のパレードが終わり、人のはけたテントで仲間たちと喜びを分かち合った。仲間たちは口々に彼女の名前の候補を挙げていた。トムとジャンは『トミー』『フェブラリー』『ビョーク』『ビヨンセ』とかひたすら自分の好きな芸能人の名前を口々に言っていた。ジャンは「『シャーク』とかもいいんじゃね?! 鮫のように強い子に育つように!!」と真顔で言い、「流石にそれは酷いわ」とシンディが吹き出した。
名前に関しては仲間たちではアテにならないからオーロラにインスピレーションを貰おうと思ってテントを出たら、オーロラはすぐ外で待っていてくれた。
「お疲れ様、アヴリル。あなたのショー観たわ。感激して泣いちゃった。あのマイム凄かったわ。あんな経験をしてきたんだと思うと胸が痛くて……」
「だけど、全てが芸の糧になったわ」
オーロラはふと私の腕に抱かれた赤子に目を落とし、「綺麗な子……」とつぶやいた。確かに彼女は綺麗だ。イスラエルではまじまじと見る余裕なんてなかったけど、色白でもちもちの肌でまつ毛が長い。きっと美人さんになるに違いない。
「これは、あなたが助けた子?」
オーロラが訊ねた。マイムの赤子の物語をちゃんと理解してくれていたらしい。
「そうよ。イスラエルで空爆に遭ったとき、女の人に手渡されたの」
「そうなのね……」
オーロラは何度も頷いて涙を拭い、赤子を腕に抱いて優しく微笑んだ。
「ねぇ、アヴィー……」
オーロラが急にかしこまったように言った。
「どうしたの?」
「あなたの告白への返事……」
どくんと心臓が跳ねた。まさかここでぶっ込んでくるとは思わなかった。流石オーロラだ。
「うん……。もう少し時間を置いてもいいのよ?」
正直聞くのが怖かった。どうせ振られるなら心躍る今じゃなくて、1年後の方がまだいい。1年後は流石に長いか。
オーロラは首を振った。もう全ての答えが出ているかのような澄み切った目をしていた。
「もう決まったわ、私はあなたと生きてく」
驚いてオーロラの顔を見た。赤ん坊を今抱いていなくてよかった。もしかしたら驚きすぎて落としてしまっていたかもしれない。
「……本当?」
「本当よ。正しくは……あなたとこの子と一緒に生きてく、ね」
もう子どもの名前を決めることも何もかもを忘れ、私は咽び泣いた。一緒に赤子も泣き出した。こんな最高の答えをくれる辺りがオーロラだ。彼女のことを余計に愛おしく感じた。
オーロラは泣いている子どもと私を一緒に抱きしめてくれた。オーロラと生きていける。オーロラとこの子と3人の家族になる。いい母親になる自信なんてないけれど、私たちはきっといい家族になれる。
感極まっていたのが我に返り、視線を感じて振り返るとトムとジャンとジュリエッタ、シンディがテントから顔を出して覗いていた。
「打ち上げと一緒に結婚祝いをしましょうか?」
ジュリエッタの提案に他の3人が頷いた。が、私は首を振った。ルチアの気持ちもあるし、まだ気が早すぎる。
「それはまだ早いわね」とオーロラも笑っている。
「ふむ、色んなことが決まったら改めて報告って感じね?」と、ジュリエッタが私たちの心を汲んでくれた。
私とオーロラは顔を見合わせ微笑んだ。幸せそうなオーロラの笑顔を見られたことが、1番の幸せだった。
名前に関しては仲間たちではアテにならないからオーロラにインスピレーションを貰おうと思ってテントを出たら、オーロラはすぐ外で待っていてくれた。
「お疲れ様、アヴリル。あなたのショー観たわ。感激して泣いちゃった。あのマイム凄かったわ。あんな経験をしてきたんだと思うと胸が痛くて……」
「だけど、全てが芸の糧になったわ」
オーロラはふと私の腕に抱かれた赤子に目を落とし、「綺麗な子……」とつぶやいた。確かに彼女は綺麗だ。イスラエルではまじまじと見る余裕なんてなかったけど、色白でもちもちの肌でまつ毛が長い。きっと美人さんになるに違いない。
「これは、あなたが助けた子?」
オーロラが訊ねた。マイムの赤子の物語をちゃんと理解してくれていたらしい。
「そうよ。イスラエルで空爆に遭ったとき、女の人に手渡されたの」
「そうなのね……」
オーロラは何度も頷いて涙を拭い、赤子を腕に抱いて優しく微笑んだ。
「ねぇ、アヴィー……」
オーロラが急にかしこまったように言った。
「どうしたの?」
「あなたの告白への返事……」
どくんと心臓が跳ねた。まさかここでぶっ込んでくるとは思わなかった。流石オーロラだ。
「うん……。もう少し時間を置いてもいいのよ?」
正直聞くのが怖かった。どうせ振られるなら心躍る今じゃなくて、1年後の方がまだいい。1年後は流石に長いか。
オーロラは首を振った。もう全ての答えが出ているかのような澄み切った目をしていた。
「もう決まったわ、私はあなたと生きてく」
驚いてオーロラの顔を見た。赤ん坊を今抱いていなくてよかった。もしかしたら驚きすぎて落としてしまっていたかもしれない。
「……本当?」
「本当よ。正しくは……あなたとこの子と一緒に生きてく、ね」
もう子どもの名前を決めることも何もかもを忘れ、私は咽び泣いた。一緒に赤子も泣き出した。こんな最高の答えをくれる辺りがオーロラだ。彼女のことを余計に愛おしく感じた。
オーロラは泣いている子どもと私を一緒に抱きしめてくれた。オーロラと生きていける。オーロラとこの子と3人の家族になる。いい母親になる自信なんてないけれど、私たちはきっといい家族になれる。
感極まっていたのが我に返り、視線を感じて振り返るとトムとジャンとジュリエッタ、シンディがテントから顔を出して覗いていた。
「打ち上げと一緒に結婚祝いをしましょうか?」
ジュリエッタの提案に他の3人が頷いた。が、私は首を振った。ルチアの気持ちもあるし、まだ気が早すぎる。
「それはまだ早いわね」とオーロラも笑っている。
「ふむ、色んなことが決まったら改めて報告って感じね?」と、ジュリエッタが私たちの心を汲んでくれた。
私とオーロラは顔を見合わせ微笑んだ。幸せそうなオーロラの笑顔を見られたことが、1番の幸せだった。
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