ライオンガール

たらこ飴

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第3章〜新たな出発〜

アフリカ⑦

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 ナイジェリアの小学校の体育館でショーをしたときのこと。

 タネルは6年生の教室にゲリラ的に入りパントマイム講座をすると言い出して、19人いる子どもたちを2人ずつのグループに分けてジェスチャーゲームをした。私は余ったマヤという女の子とペアになった。雰囲気的にマヤはクラスに馴染めていないみたいで、他のペアの女の子たちが笑いながらマヤを見てコソコソと耳打ちし合っていた。どのクラスにもこういう空気はあるのだなと思った。

 まず、タネルは『百合の花』『蜘蛛の巣』『分度器』など小さな紙にお題を書いて各グループに配り、それぞれ分かれて書いてある何かを表現するための打ち合わせと練習を10分ほどする。

 私たちのお題は『百合の花』だった。まず種のところから表現しようと提案したら、マヤが「百合の花は種じゃなくて球根だから、最初は球根の形を作らなきゃ」と言った。これには驚いた。

 動きの打ち合わせをし、時間が来たら班ごとに全員の前で発表する。そして、彼らの表すものが何かを当てるのだ。ちなみに1番たくさん当てたペアに紙風船がプレゼントされる。

 ゲームは終始和やかに進んだ。子どもたちと接していると彼らの放つ溌剌としたエネルギーと一緒に、自分まで子どもに戻るような懐かしい感覚をもらえる。

 私たちの班は10番目の発表だった。まず、マヤと私が近距離で頭を沈め身体を屈める。球根を表現するためだ。次にマヤが球根から出た芽を表現するため、頭の上にくっつけた両手のひらを広げる。
  
 今度は百合が花開くように2人の両腕を十の字を描くように交差させながら皆に見えるように大きく広げ、上体を後ろに反らす。

 すぐに1人の男子が手を挙げて「百合!」と答えた。
 
 担任の先生は「分かりやすいわね」と頷いていた。

 私はペアの女の子に紙風船をあげたかったから、子どもたちに遠慮しないで手を挙げていたらタネルに「少し手加減しろ」と嗜められた。でもマヤがなかなかできる子で、10問中の2問を当てて、私が1問を当て準優勝となった。私は優勝したペアの2人に紙風船をあげたあと、百合は球根から芽が出るという新しい気づきを与えてくれたマヤにも紙風船をあげた。
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