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第2章〜クラウンへの道〜
消えた手紙とマフィン③
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身体中の血が頭に逆流した。手紙を持つ手が震え、今にも目の前の男の首を絞めてしまいそうだった。オーロラの手紙が一番読まなくてはならない、彼女を必要としている私の目に触れる前にこの愚かで冷淡な人間の手によって無惨に捨てられてしまったのだ。挙句彼女が私を想ってわざわざ作って送ってくれたお菓子が、私ではなくこの忌々しい男の胃袋に収められたかと思うととても正気ではいられなかった。掴み掛かろうとしたとき、後ろから肩をガシッと掴まれた。
ケニーだった。
「何だお前? 甥っ子を助け立ちしようってのか?」
ピアジェは狡猾な目でケニーを睨んだ。この男は弱ってなどいない。全て演技だったのだ。同情を引き、嫌なことを全て周りの人間に押し付けて批判や罵倒の数々から逃げるための。
ケニーはいつになく険しい表情でピアジェを見据えていた。
「今の話、全部聞いたよ。手紙を捨てたことも、僕のことを脆弱だと言ったことも、これまであんたに毎日のように怒鳴りつけられて無茶な仕事を振られ、馬鹿だの間抜けだの、役立たずの腰抜けだの言われたことも、僕は一生忘れない」
ケニーは手に持っていた紙をピアジェに渡した。ピアジェはそれを広げて読むなりわなわなと震え出した。
「退職届……だとぉ?」
ピアジェは紙をビリビリに破って床に叩きつけた。
「この大変なときに辞めるだと?! 冗談も休み休み言え、このウスノロが!! 俺の他に誰が好き好んでお前のような役立たずを雇ってやるというんだ?! 今まで使ってやっただけでもありがたいと思え!! この恩知らずの役立たずめが!!」
なおも捲し立てるピアジェに向かってケニーは脚と声を震わせながら言い返した。
「あんたは僕だけじゃなく、僕の甥っ子のことも散々傷つけた。他の団員たちのこともだ。どうして人を人として扱わない? 僕は確かにウスノロで間抜けで役立たずかもしれない。社会で生きていけないような底辺に見えるかもしれない。だけど……だけど僕だって生きてるんだ!! あんたなんかよりもずっとマシだ!! 逃げてるのはあんたの方だ!! 僕だって他の皆だって、動物たちだってあんたよりもずっと真面目に精一杯頑張ってる!! あんたは一番の弱虫だ!! 自分勝手に理不尽に人や動物を傷つけて、最後には理解者も何もかもを失って一人で死んでくしかない飲んだくれだ!!」
よく言った、ケニー!! と心で称賛を送るや否や、ピアジェがケニーの胸ぐらを掴んで殴りつけた。ケニーの身体は狭い部屋の壁に叩きつけられた。
「ケニー!!」
駆け寄った私を、「大丈夫だ」とケニーが手で制した。ケニーの唇の端には血が滲んでいる。
「ケニーに何するんだ、この野郎!!」
飛びかかった私の身体も、ピアジェによって簡単にベッドに張り倒された。私は男の顔を渾身の憎しみをもって睨みつけた。こんな人間は生きている価値がないのだ。以前はこの男を笑わせてやると息巻いていたが、もはやその価値すらない卑劣で下等な悍ましい生き物だ。
「お前は血も涙もない、冷酷な人間だ!! ケニーの言う通りだ、誰もお前になんかついて行くもんか!! 僕はお前に痛みを知ってほしいなんて思わない、人の心を持てなんてお前に言っても無駄だ。でもこれ以上人の心を失わせるな!! そして今すぐオーロラの手紙とマフィンを返せ!!」
「黙れクソガキ!! お前らは上下関係も知らない、生意気でどうしようもない奴らだ!! もう一度私が教育し直して……」
「もう沢山だ!!」
ケニーが叫んだ。
「お前なんかについていくもんか!! 僕はここを辞める!! お前は一生この部屋にいろ!!」
ケニーは私の手を引き、まだ何か捲し立てているピアジェの部屋のドアを叩きつけるように閉めた。
ケニーだった。
「何だお前? 甥っ子を助け立ちしようってのか?」
ピアジェは狡猾な目でケニーを睨んだ。この男は弱ってなどいない。全て演技だったのだ。同情を引き、嫌なことを全て周りの人間に押し付けて批判や罵倒の数々から逃げるための。
ケニーはいつになく険しい表情でピアジェを見据えていた。
「今の話、全部聞いたよ。手紙を捨てたことも、僕のことを脆弱だと言ったことも、これまであんたに毎日のように怒鳴りつけられて無茶な仕事を振られ、馬鹿だの間抜けだの、役立たずの腰抜けだの言われたことも、僕は一生忘れない」
ケニーは手に持っていた紙をピアジェに渡した。ピアジェはそれを広げて読むなりわなわなと震え出した。
「退職届……だとぉ?」
ピアジェは紙をビリビリに破って床に叩きつけた。
「この大変なときに辞めるだと?! 冗談も休み休み言え、このウスノロが!! 俺の他に誰が好き好んでお前のような役立たずを雇ってやるというんだ?! 今まで使ってやっただけでもありがたいと思え!! この恩知らずの役立たずめが!!」
なおも捲し立てるピアジェに向かってケニーは脚と声を震わせながら言い返した。
「あんたは僕だけじゃなく、僕の甥っ子のことも散々傷つけた。他の団員たちのこともだ。どうして人を人として扱わない? 僕は確かにウスノロで間抜けで役立たずかもしれない。社会で生きていけないような底辺に見えるかもしれない。だけど……だけど僕だって生きてるんだ!! あんたなんかよりもずっとマシだ!! 逃げてるのはあんたの方だ!! 僕だって他の皆だって、動物たちだってあんたよりもずっと真面目に精一杯頑張ってる!! あんたは一番の弱虫だ!! 自分勝手に理不尽に人や動物を傷つけて、最後には理解者も何もかもを失って一人で死んでくしかない飲んだくれだ!!」
よく言った、ケニー!! と心で称賛を送るや否や、ピアジェがケニーの胸ぐらを掴んで殴りつけた。ケニーの身体は狭い部屋の壁に叩きつけられた。
「ケニー!!」
駆け寄った私を、「大丈夫だ」とケニーが手で制した。ケニーの唇の端には血が滲んでいる。
「ケニーに何するんだ、この野郎!!」
飛びかかった私の身体も、ピアジェによって簡単にベッドに張り倒された。私は男の顔を渾身の憎しみをもって睨みつけた。こんな人間は生きている価値がないのだ。以前はこの男を笑わせてやると息巻いていたが、もはやその価値すらない卑劣で下等な悍ましい生き物だ。
「お前は血も涙もない、冷酷な人間だ!! ケニーの言う通りだ、誰もお前になんかついて行くもんか!! 僕はお前に痛みを知ってほしいなんて思わない、人の心を持てなんてお前に言っても無駄だ。でもこれ以上人の心を失わせるな!! そして今すぐオーロラの手紙とマフィンを返せ!!」
「黙れクソガキ!! お前らは上下関係も知らない、生意気でどうしようもない奴らだ!! もう一度私が教育し直して……」
「もう沢山だ!!」
ケニーが叫んだ。
「お前なんかについていくもんか!! 僕はここを辞める!! お前は一生この部屋にいろ!!」
ケニーは私の手を引き、まだ何か捲し立てているピアジェの部屋のドアを叩きつけるように閉めた。
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