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第2章〜クラウンへの道〜
クラウンへの道②
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ルールはごく簡単。2人隣り合わせで立ち、1人が相手の目を見る。もう1人が相手の視線を感じた瞬間に両の手の平を臍のあたりで打つ。そして相手を同じように見て、視線を送られた方は同じように手を叩く。慣れてきたら速度を上げる。
途中2人だと物足りないということになり、練習をしていたクリーとシンディ、ミラーにも参加してもらった。5人で輪になっていたとき、斜め前から刺すような視線を感じて見たらミラーが私を鋭い目つきで睨んでいた。昨日のことを根に持っているのだ。
「このゲームもう始まってるのかな? さっきからすごい熱い視線を感じるんだけど……」
「愛されてるね」とクリーが冷やかしシンディが笑う。私が「僕ってばモテるから」とふざけて頭をかいて見せたら、ミラーが顔を歪ませて「違うわ! 誰がこんな奴!」と全身全霊で否定した。
「雑談はそこまで!」とルーファスが2回手を叩くと、静寂が訪れゲームが始まった。
ルールは先ほどと同じ。視線を感じたら手を叩く。だが、視線が正面と斜め前からも飛んでくるため注意力を要する。その場から動いてもいけないし、視線を送った相手に言葉や別の動作などでそれを伝えてもいけない。
最初は私の左前にいるルーファスから始まる。彼が最初に視線を送った相手は私の正面のクリー。クリーは手を叩いて彼女の左手前のミラーを見る。ミラーは手を一拍遅れて手を叩き、吹き出した私を睨んだがそこでルーファスからストップがかかった。
「ミラー、見てるってガッツリ分かったら練習にならんからもっとさりげなく見ろ。ちょうど隣にいる好きな子をチラチラ見るみたいにだ」
「変な喩えすんなよ、気持ち悪ぃな!」
ミラーは非常に嫌そうだが、やり直しをくらって今度はルーファスに視線を送った。
だんだんとテンポが速くなってくると、誰から視線が送られたかというのを判別するのが難しくなる。ピアジェが入ってくるのに気を取られてルーファスから送られた視線を見逃してしまって、「集中!」と注意された。
アイコンタクトの練習が終わったら、ピアジェが見ている前で新しい練習がスタートした。
「次にやる練習は、クラウキングの中のムーブメント、つまりクラウンの動きの練習だ。中でも大事なのはクラウンウォークだ」
まず、部屋の中を手脚を大きく動かして自由に歩き回ってみようとルーファスが言った。
私はこの間クラウンエクササイズでやったみたいに、腕を大きく振って足を大きく開いて歩いた。
「まだ堅いな、それじゃ行進だ」ルーファスが腕組みをした。意識するあまり、動きが固くなっていた。
「登場するとき、パフォーマンスのときに観客から観て自然なのは、直線的な動きじゃなくて曲線的な柔らかい動きだ。固い動きはロボットみたいで、生きているという印象を与えにくい」
ルーファスは「ちょっとイメージしてみよう」と言った。
「雪が積もっているとき、お前はどうやって歩く?」
しばし考えた。シドニーは温かい場所だけれど、数年前の寒波で雪が積もったことがあった。雪道を転ばないように歩くコツを掴むのに時間がかかった。
「足をとられないように転ばないように高くあげて、地面を踏み締めて歩くかな。そうすると足跡がつくよね、あれ面白いんだよね」
「それだ」とルーファスは私を指さした。
「力を抜いて、地面を踏み締めて歩く。足跡を残す感覚でだ。だけどクラウンとして歩く場合、見る場所は地面じゃない。目標とするところだけを見て、何かをするという意志を持って歩くんだ」
ルーファスに言われたことを頭に留め、さっきよりも曲線的に大きめに手脚を動かして歩いた。靴の底の感覚に意識を配りながらウォーキングを続けていたら、だんだんコツが掴めてきた。
「いい感じだ」
途中2人だと物足りないということになり、練習をしていたクリーとシンディ、ミラーにも参加してもらった。5人で輪になっていたとき、斜め前から刺すような視線を感じて見たらミラーが私を鋭い目つきで睨んでいた。昨日のことを根に持っているのだ。
「このゲームもう始まってるのかな? さっきからすごい熱い視線を感じるんだけど……」
「愛されてるね」とクリーが冷やかしシンディが笑う。私が「僕ってばモテるから」とふざけて頭をかいて見せたら、ミラーが顔を歪ませて「違うわ! 誰がこんな奴!」と全身全霊で否定した。
「雑談はそこまで!」とルーファスが2回手を叩くと、静寂が訪れゲームが始まった。
ルールは先ほどと同じ。視線を感じたら手を叩く。だが、視線が正面と斜め前からも飛んでくるため注意力を要する。その場から動いてもいけないし、視線を送った相手に言葉や別の動作などでそれを伝えてもいけない。
最初は私の左前にいるルーファスから始まる。彼が最初に視線を送った相手は私の正面のクリー。クリーは手を叩いて彼女の左手前のミラーを見る。ミラーは手を一拍遅れて手を叩き、吹き出した私を睨んだがそこでルーファスからストップがかかった。
「ミラー、見てるってガッツリ分かったら練習にならんからもっとさりげなく見ろ。ちょうど隣にいる好きな子をチラチラ見るみたいにだ」
「変な喩えすんなよ、気持ち悪ぃな!」
ミラーは非常に嫌そうだが、やり直しをくらって今度はルーファスに視線を送った。
だんだんとテンポが速くなってくると、誰から視線が送られたかというのを判別するのが難しくなる。ピアジェが入ってくるのに気を取られてルーファスから送られた視線を見逃してしまって、「集中!」と注意された。
アイコンタクトの練習が終わったら、ピアジェが見ている前で新しい練習がスタートした。
「次にやる練習は、クラウキングの中のムーブメント、つまりクラウンの動きの練習だ。中でも大事なのはクラウンウォークだ」
まず、部屋の中を手脚を大きく動かして自由に歩き回ってみようとルーファスが言った。
私はこの間クラウンエクササイズでやったみたいに、腕を大きく振って足を大きく開いて歩いた。
「まだ堅いな、それじゃ行進だ」ルーファスが腕組みをした。意識するあまり、動きが固くなっていた。
「登場するとき、パフォーマンスのときに観客から観て自然なのは、直線的な動きじゃなくて曲線的な柔らかい動きだ。固い動きはロボットみたいで、生きているという印象を与えにくい」
ルーファスは「ちょっとイメージしてみよう」と言った。
「雪が積もっているとき、お前はどうやって歩く?」
しばし考えた。シドニーは温かい場所だけれど、数年前の寒波で雪が積もったことがあった。雪道を転ばないように歩くコツを掴むのに時間がかかった。
「足をとられないように転ばないように高くあげて、地面を踏み締めて歩くかな。そうすると足跡がつくよね、あれ面白いんだよね」
「それだ」とルーファスは私を指さした。
「力を抜いて、地面を踏み締めて歩く。足跡を残す感覚でだ。だけどクラウンとして歩く場合、見る場所は地面じゃない。目標とするところだけを見て、何かをするという意志を持って歩くんだ」
ルーファスに言われたことを頭に留め、さっきよりも曲線的に大きめに手脚を動かして歩いた。靴の底の感覚に意識を配りながらウォーキングを続けていたら、だんだんコツが掴めてきた。
「いい感じだ」
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