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第1章〜サーカス列車の旅〜
夜の宴会②
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パーティーは深夜まで続いた。ケニーは完全に酔っ払い、大きな腹にマジックでスポンジボブの絵を描いて腹踊りをしている。そのうちジュリエッタがスマートフォンで流すクラブ音楽に合わせて踊り始め、それに合わせてルーファスがフラダンスのような踊りを披露し、なぜかトムが調教に使うホイッスルを吹いて音頭をとり、シンディら他の団員たちは手を叩いて笑っているという、狂宴の如き宴が続いた。
サルのコリンズは、踊り狂う人間たちを怖がってアルフレッドの肩の上に逃げてきた。ミラーは「アホらし」と吐き捨て、アルフレッドと一緒にコリンズの遊び相手をしている。コリンズは酔っ払った人間たちに近づくと危険だとでも思っているのか、いつものように駆け回ったり団員たちに片っ端から愛想を振り撒く様子はない。
皆の前で大恥をかいたピアジェはウォッカを瓶ごと飲んだ挙げ句、泥酔して地面に横たわり大いびきをかいている。団長の目が届かない事態が、団員たちの狂宴に拍車をかけていた。
「あのスポンジボブ、よく描けてるわよね」
ウィスキーの匂いをほのかにさせたシンディがやってきて、ケニーの方を指差した。頬は紅潮し目も蕩けたようになっている。これで話しかけられたら、大抵の男性はどぎまぎするに違いない。
「ケニーは昔から絵が上手いんだ」
「才能があるのね」
「うん。マイナス思考で自分に自信がないけど、すごく優しいんだ」
ここでどうにかケニーの株を上げて、シンディの印象を良くしておきたい。ケニーはシンディを高嶺の花と思っているみたいだけれど、シンディはケニーのことをどう思っているんだろう。
「見るからに優しそうだもの」
笑顔を浮かべるシンディからは、少なくともケニーへのマイナスの感情は読み取れない。
「シンディは、どんな人がタイプなの?」
ここでもし『ハンサムな人』『社交的な人』などという言葉が飛び出したりしたら、ケニーは絶望するだろう。自尊心が悉く低い彼のことだから、即座に諦めの境地に達するはずだ。だがどんな答えが彼女の口から出ようと、伯父の恋を応援するにあたって情報収集は超重要事項に変わりない。
シンディは考え込むように俯いたあと、悲しげな目で遠くを見た。
「私の前から、消えてしまわない人」
なんてね、とシンディは戯けてみせた。シンディの事情は分からないけれど過去の恋愛で何か大きな痛手を負ったことがあって、今も悲しみが癒えないんじゃないか。輝く笑顔の裏にあるシンディの過去は、想像以上に暗いのかもしれない。
サルのコリンズは、踊り狂う人間たちを怖がってアルフレッドの肩の上に逃げてきた。ミラーは「アホらし」と吐き捨て、アルフレッドと一緒にコリンズの遊び相手をしている。コリンズは酔っ払った人間たちに近づくと危険だとでも思っているのか、いつものように駆け回ったり団員たちに片っ端から愛想を振り撒く様子はない。
皆の前で大恥をかいたピアジェはウォッカを瓶ごと飲んだ挙げ句、泥酔して地面に横たわり大いびきをかいている。団長の目が届かない事態が、団員たちの狂宴に拍車をかけていた。
「あのスポンジボブ、よく描けてるわよね」
ウィスキーの匂いをほのかにさせたシンディがやってきて、ケニーの方を指差した。頬は紅潮し目も蕩けたようになっている。これで話しかけられたら、大抵の男性はどぎまぎするに違いない。
「ケニーは昔から絵が上手いんだ」
「才能があるのね」
「うん。マイナス思考で自分に自信がないけど、すごく優しいんだ」
ここでどうにかケニーの株を上げて、シンディの印象を良くしておきたい。ケニーはシンディを高嶺の花と思っているみたいだけれど、シンディはケニーのことをどう思っているんだろう。
「見るからに優しそうだもの」
笑顔を浮かべるシンディからは、少なくともケニーへのマイナスの感情は読み取れない。
「シンディは、どんな人がタイプなの?」
ここでもし『ハンサムな人』『社交的な人』などという言葉が飛び出したりしたら、ケニーは絶望するだろう。自尊心が悉く低い彼のことだから、即座に諦めの境地に達するはずだ。だがどんな答えが彼女の口から出ようと、伯父の恋を応援するにあたって情報収集は超重要事項に変わりない。
シンディは考え込むように俯いたあと、悲しげな目で遠くを見た。
「私の前から、消えてしまわない人」
なんてね、とシンディは戯けてみせた。シンディの事情は分からないけれど過去の恋愛で何か大きな痛手を負ったことがあって、今も悲しみが癒えないんじゃないか。輝く笑顔の裏にあるシンディの過去は、想像以上に暗いのかもしれない。
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