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第1章〜サーカス列車の旅〜
追憶のパレード③
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中学ではクラスの男子たちの半分は皆こぞってクリスティと付き合いたがって、我先にとデートに誘ったりプレゼントで必死に気を引こうとしていた。オーロラは「私はクリスのオマケみたいなもの」と自嘲していたけれど、誕生日になると女子たちから大量のカードと贈り物を貰うのは決まってオーロラの方だった。もし私が男の子でクラスの女子の誰と付き合いたいかと訊かれたら、迷わずオーロラと答えただろう。
私は不意に周りにいた団員たちに、オーロラのプレゼント伝説について話したくなった。
オーロラの誕生日は12月24日のクリスマスイブの日だ。本来は友達や家族から誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントを兼ねた物を一つずつ貰うのだが、私も皆も誕生日の分とクリスマスの分の計2個を用意するものだから、毎年イブの夜には贈り物が彼女の部屋の天井に届くくらいまで積み上げられていた。
私は決まってクリスマスの日の夜遅くに彼女にプレゼントを届けに行った。一つは彼女の好きな色の毛糸で編んだマフラーや手袋や、羊毛フェルトで作った鳥なんかの手作りのもので、もう一つは彼女の家の本棚にない絵本を1冊。
「どうしてわざわざ最後に持って行くんだよ? 相手はお前が自分の誕生日を忘れてると思うんじゃねーの?」
アルフレッドの頭から自分の頭にひょいと飛び移ってきたコリンズの相手をしていたミラーが、いきなり口を挟んできた。すると馬の背に股がるジュリエッタが、木兎みたいにくるりと顔だけ後ろを向いて素早く突っ込んだ。
「馬鹿ね、最後に持って行った方が一番印象に残るのよ。それに、『彼ってば私の誕生日忘れてるんじゃないかしら?』なんて不安に感じているときに、その日が終わるギリギリに会いに来て渡してもらえたら、サプライズみたいですごく嬉しいもんよ」
正直そんな計算はしていなかったし、計算ができるくらい賢い頭は私にはない。単純に私のプレゼントの一つが手作りで、完成するのが聖夜の終わるギリギリの時間になってしまうから、皆より渡すのが遅くなるのだ。いつもクリスマスが終わる時間、夜遅くに慌ててオーロラの家まで自転車を漕いで玄関のチャイムを鳴らす。出てきたオーロラに「また遅れちゃったけど誕生日おめでとう。あと、メリークリスマス!」と言ってプレゼントを渡すと、彼女はいつも目を潤ませて私の身体を力いっぱい抱きしめるのだった。
「あなたは彼女のこと、本当に大好きなのね?」
ジュリエッタが手でハートを作って見せた。そのとき馬がヒヒンといなないて2対の前脚をあげたために、ジュリエッタは危うく後ろ向きに落っこちそうになって慌てて手綱に捕まった。それを見たアルフレッドが「おいおい、怪我するぞ。気をつけろ」と嗜めた。
「もちろん大好きだよ、友達としてね」
オーロラが引っ越す前、最後に2人でボウリングに行った。もう何度目か分からないボウリングだけれど、彼女と遊んだ数えきれない日々の中で一番記憶に残る1日だった。
ボウリング場に向かう車を運転しながら、彼女と遊ぶのはこれで最後かもしれないと思うと泣きたいくらに寂しかった。でも私が悲しんだら優しいオーロラは引っ越すのを後ろめたく感じてしまうと思ったから、泣くのを我慢していつも通りに接した。
帰りにボウリング場の入ったビルの屋上で、空に向かって日頃の鬱憤を大声で吐き出したあと、私たちは互いへの気持ちを叫びあった。
「オーロラ、愛してる!」
「私も愛してる!」
私はオーロラが大好きだ。例え離れていたって、何年、何十年会えなくたって、私たちの友情は永遠に不変で、最強なんだから。
私は不意に周りにいた団員たちに、オーロラのプレゼント伝説について話したくなった。
オーロラの誕生日は12月24日のクリスマスイブの日だ。本来は友達や家族から誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントを兼ねた物を一つずつ貰うのだが、私も皆も誕生日の分とクリスマスの分の計2個を用意するものだから、毎年イブの夜には贈り物が彼女の部屋の天井に届くくらいまで積み上げられていた。
私は決まってクリスマスの日の夜遅くに彼女にプレゼントを届けに行った。一つは彼女の好きな色の毛糸で編んだマフラーや手袋や、羊毛フェルトで作った鳥なんかの手作りのもので、もう一つは彼女の家の本棚にない絵本を1冊。
「どうしてわざわざ最後に持って行くんだよ? 相手はお前が自分の誕生日を忘れてると思うんじゃねーの?」
アルフレッドの頭から自分の頭にひょいと飛び移ってきたコリンズの相手をしていたミラーが、いきなり口を挟んできた。すると馬の背に股がるジュリエッタが、木兎みたいにくるりと顔だけ後ろを向いて素早く突っ込んだ。
「馬鹿ね、最後に持って行った方が一番印象に残るのよ。それに、『彼ってば私の誕生日忘れてるんじゃないかしら?』なんて不安に感じているときに、その日が終わるギリギリに会いに来て渡してもらえたら、サプライズみたいですごく嬉しいもんよ」
正直そんな計算はしていなかったし、計算ができるくらい賢い頭は私にはない。単純に私のプレゼントの一つが手作りで、完成するのが聖夜の終わるギリギリの時間になってしまうから、皆より渡すのが遅くなるのだ。いつもクリスマスが終わる時間、夜遅くに慌ててオーロラの家まで自転車を漕いで玄関のチャイムを鳴らす。出てきたオーロラに「また遅れちゃったけど誕生日おめでとう。あと、メリークリスマス!」と言ってプレゼントを渡すと、彼女はいつも目を潤ませて私の身体を力いっぱい抱きしめるのだった。
「あなたは彼女のこと、本当に大好きなのね?」
ジュリエッタが手でハートを作って見せた。そのとき馬がヒヒンといなないて2対の前脚をあげたために、ジュリエッタは危うく後ろ向きに落っこちそうになって慌てて手綱に捕まった。それを見たアルフレッドが「おいおい、怪我するぞ。気をつけろ」と嗜めた。
「もちろん大好きだよ、友達としてね」
オーロラが引っ越す前、最後に2人でボウリングに行った。もう何度目か分からないボウリングだけれど、彼女と遊んだ数えきれない日々の中で一番記憶に残る1日だった。
ボウリング場に向かう車を運転しながら、彼女と遊ぶのはこれで最後かもしれないと思うと泣きたいくらに寂しかった。でも私が悲しんだら優しいオーロラは引っ越すのを後ろめたく感じてしまうと思ったから、泣くのを我慢していつも通りに接した。
帰りにボウリング場の入ったビルの屋上で、空に向かって日頃の鬱憤を大声で吐き出したあと、私たちは互いへの気持ちを叫びあった。
「オーロラ、愛してる!」
「私も愛してる!」
私はオーロラが大好きだ。例え離れていたって、何年、何十年会えなくたって、私たちの友情は永遠に不変で、最強なんだから。
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