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第1章〜サーカス列車の旅〜
Girl in the mirror③
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夜中の3時に二の腕まで伸びた髪を鋏でバッサリ切った。真夜中の静けさと、普段ならありえない行動。まるで何かの儀式みたいだと思った。散髪用に作られていない大きな古い鋏の切れ味は最悪で、危うく耳たぶを切りかけた。自分で髪を切ったのなんて何年ぶりだろう。最終的に女性ではなくて、少年に見える程度にはなった。私ってこんなに童顔だったのかと、顔を覆う髪が少なくなった鏡の中の自分を見つめる。
昔からこの灰色の目がどうしても好きになれなかった。いくら周りの人から容姿を褒められたって、自分の見た目に満足したことなんて一度たりともない。ブロンドで海のような蒼い目をしたクリスティと、アメジストのような紫色の目をしたオーロラのことがずっと羨ましかった。私なんか背は低くて胸もないから体型はダイナマイトボディとはいかない。顔も雰囲気も子どもっぽいから、髪を切ると実年齢より3歳以上は下に見える。
結局のところ人というのは、無いものねだりをする生き物なのだ。容姿にコンプレックスがある人は美しい人に憧れる。自分に才能がないと感じる人は、才能に溢れた人に嫉妬する。もし自分に100%満足している人がいるなら会ってみたい。悪いところもいいところも、誰かを羨ましいと感じる自分もーー全てを受け入れて生きられたら、どんなに幸せだろう。
鏡の中の自分に問いかけた。
ーー私は一体何者で、これからどうなりたい?
答えは分からない。でもこれだから分かる。臆病な自分を変えるとしたら、きっと今しかない。私は鏡の中の自分と向き合った。漠然と変わりたいと思っていたけれど、具体的になりたい姿は?
自分に自信を持ちたい。変化も困難も受け流し、自分を制圧しようとするような人間にすらも、怖がらないで立ち向かえるようになりたい。強くなりたい。オーロラのために。何より自分のために。
まだ不安な顔をしている鏡の中の私を安心させようと、一度笑いかけた。
昔からこの灰色の目がどうしても好きになれなかった。いくら周りの人から容姿を褒められたって、自分の見た目に満足したことなんて一度たりともない。ブロンドで海のような蒼い目をしたクリスティと、アメジストのような紫色の目をしたオーロラのことがずっと羨ましかった。私なんか背は低くて胸もないから体型はダイナマイトボディとはいかない。顔も雰囲気も子どもっぽいから、髪を切ると実年齢より3歳以上は下に見える。
結局のところ人というのは、無いものねだりをする生き物なのだ。容姿にコンプレックスがある人は美しい人に憧れる。自分に才能がないと感じる人は、才能に溢れた人に嫉妬する。もし自分に100%満足している人がいるなら会ってみたい。悪いところもいいところも、誰かを羨ましいと感じる自分もーー全てを受け入れて生きられたら、どんなに幸せだろう。
鏡の中の自分に問いかけた。
ーー私は一体何者で、これからどうなりたい?
答えは分からない。でもこれだから分かる。臆病な自分を変えるとしたら、きっと今しかない。私は鏡の中の自分と向き合った。漠然と変わりたいと思っていたけれど、具体的になりたい姿は?
自分に自信を持ちたい。変化も困難も受け流し、自分を制圧しようとするような人間にすらも、怖がらないで立ち向かえるようになりたい。強くなりたい。オーロラのために。何より自分のために。
まだ不安な顔をしている鏡の中の私を安心させようと、一度笑いかけた。
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